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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
発想篇〜アイデアが思いつかなかったら
448/1500

448.発想篇:極端にしてみる

 今日は「極端」についてです。

 発想してみたけどどうもいまいちインパクトが足りない。

 そんなときは「極端」にしてみましょう。

極端にしてみる


 作品に登場する物事を「極端」にしてみましょう。

 沈着冷静な人物であれば、究極として冷徹な人物にしてみるのです。

 人がよければ、究極として儒教の祖・孔子のような人物にしてみます。

 キャラ像が両極端に振り切っていれば、登場人物に幅広さが出て大きな物語にできるのです。




進撃の巨人

 人類に対する敵つまり「対になる存在」に「巨人」を設定したのがマンガの諫山創氏『進撃の巨人』です。

 人類とのサイズ差を「極端」にすることで、ひじょうに特異な世界観を作り出すことに成功しました。

「巨人」に対抗する人類の側には「立体駆動装置」の存在があり、アクションとしても映えるものになったのです。

 マンガからアニメ、そして実写化までされた作品で、見せ場はやはり「立体駆動装置」を用いた人類と巨人とのアクションシーンに当てられています。

 人類の側はひじょうに狭い世界で生きざるをえないというのも、絶望感を高めるのに一役買っているのです。

「対になる存在」をあえて「極端」にした諫山創氏の発想は見事にハマりました。




銀河英雄伝説

 田中芳樹氏の出世作『銀河英雄伝説』の銀河帝国側の主人公はラインハルト・フォン・ローエングラムです。

 彼の幼馴染みで親友、そして麾下の中将ジークフリード・キルヒアイスはひじょうに優しい有徳の士として設定されています。

 しかし自由惑星同盟が銀河帝国の建設したイゼルローン要塞を奪取したことにより、ゼークト提督とシュトックハウゼン提督の責任を問う流れが銀河帝国政権内で漂い始めます。

 そして生き帰った幕僚であるパウル・フォン・オーベルシュタイン大佐を見せしめにしようとするのです。それを察知したオーベルシュタインはラインハルトへ取り入り、彼の幕僚となることと引き換えに身の安全を図りました。

 オーベルシュタインは流れている血さえも凍っているのではないかとささやかれるほどの冷徹漢です。

 貴族連合である「リップシュタット連合」とラインハルト陣営との対決において、ブラウンシュヴァイク公爵が自身の領土であるヴェスターラントに対して熱核兵器を撃ち込むという情報が入ってきました。オーベルシュタインが連合の内偵に派遣していた人物から情報を入手したのです。

 ラインハルトにそのことを知らせるとき、オーベルシュタインは「戦争の長期化による人員の死者数と、ヴェスターラントの虐殺による死者数を比較すれば熱核兵器を阻止すべきではない」との持論を展開しました。

 ここにオーベルシュタインの冷徹さが如実に表れています。

 ラインハルトは「数のうえでは」という点を理解しながらも「人道的に」見過ごすことはできないと思い、阻止限界時刻まで熟慮することにしたのです。

 オーベルシュタインは阻止限界時刻を偽ってラインハルトに伝え、自身の思惑どおりヴェスターラントへ熱核兵器を撃ち込ませます。

 このことを伝え聞いたキルヒアイスは、ラインハルトに詰め寄ります。「自分たちは今までの貴族とは違う。人民のことを思いやらなければ立場が危うくなる」と説くのです。

「ヴェスターラントの虐殺」によってキルヒアイスとオーベルシュタインの人柄の幅が表れていて、作品にも幅が生まれています。

 この一件ののちキルヒアイスは悲劇に見舞われますが、オーベルシュタインも身を挺してラインハルトをかばっているのです。

 そして以後、ラインハルト陣営の影の部分はオーベルシュタインが一手に担い、光の部分を「双璧」と謳われるウォルフガング・ミッターマイヤーとオスカー・フォン・ロイエンタールに代表される提督たちが担うこととなります。

 それほどオーベルシュタインの冷徹さは際立っているのです。


 対して自由惑星同盟側の主人公であるヤン・ウェンリーの幕僚には冷徹さを持つ人物が見当たりません。

 ヤン自身は歴史家になりたくて軍人になってしまったほど当たり障りのない温厚な人物です。そのヤンの後継者たるユリアン・ミンツは真面目で実直な人物です。

 ヤン艦隊においてムライは正論の小言が多いだけでヤンを信用しています。フョードル・パトリチェフとエドウィン・フィッシャー、分艦隊司令官ダスティ・アッテンボロー、帝国から亡命してきたウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ、それにワルター・フォン・シェーンコップ率いる薔薇の騎士連隊はヤンを全面支持。

 軍部ではアレクサンドル・ビュコック提督の覚えよろしいが、アスターテ会戦で第二艦隊司令だったパエッタ提督にはなかなか認められなかった。

 政権においてはヨブ・トリューニヒト国防委員長のことを唾棄しており底知れぬ恐怖も抱いていた。ジョアン・レベロはビュコックと交流がありヤンともうまくやっていたが、自由惑星同盟が銀河帝国の自治領となってからは、ヤンの存在が帝国に付け入るスキを与えると感じており、ついに排除の動きを始めることとなった。レベロはヤンと協力すれば最高の組み合わせだろうと言われていたが、レベロ自身がそれを捨ててしまう。

 このように自由惑星同盟には冷徹な人物はまず見当たらないが、極端に潔癖な人物と腐敗している人物に分けることができるかもしれません。

 地球教とつながりのある腐敗の象徴がトリューニヒトです。救国軍事会議でドワイト・グリーンヒル以外の人物や、ヤンを暗殺するための手駒にされたアンドリュー・フォークなど、「極端」に言えばヤンを護ろうとする人物と殺そうとする人物にも分けられると思います。




DRAGON BALL

「極端」を幾度も極めていって収拾がつかなくなったのがマンガの鳥山明氏『DRAGON BALL』です。

 ブルマとともに「ドラゴンボール」探しの旅をしていた腕っぷしの強い孫悟空が、亀仙人に見込まれて修行することになります。

 その成果として天下一武道会に出場するのですが敗れるのです。

 ここまではまぁよかったほうなのですが、ピッコロ大魔王が出てきたあたりから雲行きが怪しくなってきます。

 ピッコロ大魔王を倒すためにカリン塔に住むカリン様の元で修行し、カリン塔の上部に如意棒を付けて伸ばした先が「神様」の住む天界となっているのです。

 悟空はそこで修行してピッコロ大魔王を倒すための修行をします。

 そしてピッコロ大魔王を倒し、年を経てマジュニアと闘ってひと段落着いたら、宇宙からフリーザ一味がやってきます。

 そこから超サイヤ人が始まるのです。

 敵の親玉であるフリーザは今までの悟空では倒せないほどの強さを見せつけます。

 しかし悟空が超サイヤ人になると形勢が逆転し、フリーザを倒すことができたのです。

 そして地球に帰ってくると人造人間編が始まり、最終的に超サイヤ人2になってセルに勝ちます。

 すると魔人ブウが現れて悟空は追いつめられ、最終的に超サイヤ人3になってブウに勝つのです。

「極端」に強い設定をどんどん付け加えていった結果、どこが「極端」なのかを読み手がわからなくなってしまいました。

 これは物語として完全に破綻しています。

 だからこそ『DRAGON BALL』は連載終了になったのでしょう。

 正直、人造人間編と魔人ブウ編は「蛇足」だったと思います。





最後に

 今回は「極端にしてみる」ことについて述べてみました。

 一般的なものが多い中に「極端」なものを混ぜることで、物語は大きな意外性を有するようになります。

 ファンタジーものには十五センチメートル程度の妖精が出てくるものが数多くあるのです。

「極端」に小さくすることで愛らしい姿が際立ちます。

 それと同時に「ファンタジー世界にいるんだな」という共通理解が生まれるのです。

「極端」にするだけでよいとは言いません。

 ただし「極端」なら非日常を演出するまたとない機会となります。

 あなたの作品にインパクトが足りないなと感じたら、なにかを「極端」にしてみてください。




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