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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
発想篇〜アイデアが思いつかなかったら
444/1500

444.発想篇:隠すこと見せること

 今日は「隠す」「見せる」の両面を見ていきましょう。

 「一次元の芸術」である小説は、文として書かれていなければ存在しないことになっています。

 それを意識して「隠す」か「見せる」かを選別してください。

隠すこと見せること


 小説では意図的に物事を書かなければ、読み手にはそれを見ることはできません。

「一次元の芸術」だからです。

 隠すことも見せることも、書き手にとってそして作品にとって意味がなければなりません。




意図的に見せる

 まず「意図的に見せる」ことについてです。

 小説では、文字で書いたもの以外は、すべて存在していないのかもしれない。

 文章の中で言及されていないかぎり、それは存在しないのです。

 四コママンガのかきふらい氏『けいおん!』は女性しか登場しません。

 その作品世界には男性が存在しないのです。

 存在するのなら一人でも男性を登場させると思いませんか。

 そんな中で「意図的に見せる」物事を作るのです。

 そこには書き手の思惑がなければなりません。

「意図的に見せる」ことが必要なものに「伏線」があります。

 文字の山の中に「伏線」を入れることによって、その「伏線」が回収されたときに「そういうことか!」と読み手は膝を打つのです。


 小説にムダな文を書くゆとりはありません。

 すべての文が作品を語るうえで不可欠でなければ、「蛇足」に過ぎないのです。

 髪が金色だったり雪のように白い肌だったりオッドアイだったりという外見に関することは、キャラを掘り下げることになるので、積極的に書きましょう。

 しかし好きな食べ物や血液型や誕生日は、それらが物語の他のところで登場しないかぎり書く必要なんてないのです。

「他のところで登場する」ことを「伏線を回収する」と言います。

 つまり「前もって、他のところで登場する」情報を書いておくことが「伏線」なのです。

 その「伏線」が物語にどのような影響を与えるのか今一度考慮してみましょう。

「小説賞・新人賞」の下読みさんたちは必ず「伏線」の有無と「蛇足」の量を見ています。

「蛇足」がなく、すべてが「伏線」であれば文章力次第ですが一次審査は通るはずです。

 一次選考すら突破できない人は、もっと「伏線」を有効に用いて「蛇足」を無くす努力をしましょう。

 そう意識するだけで文章の書き方さえも異なってきます。




意図的に隠す

 では「意図的に隠す」ことについてです。

 これは読み手の想像力を喚起します。

 なぜなら書いておくべき情報が書かれていません。

 当然読み手は「この情報がないから平均的な・一般的な物事だと判断していいのかな」と思います。

「学校の医務室にいるべき女性医務員が職員室を訪れた。」

 さて、この文章だけを読むと多くの方が「女性医務員」は「白衣」を着ていると思うのではないでしょうか。

 それは書かれていない情報なのですが、「平均的な・一般的な物事」に照らし合わせると、「医務室にいる医務員」は「白衣」を着ているものだからです。

 あなたが所属する学校やかつての学び舎で「医務員」の方は「白衣」を着ていませんでしたか。

 これが「意図的に隠す」ことなのです。

 共通認識のある物事なら「意図的に隠す」ことで読み手が想像力を働かせて「たぶんこういうことだよね」というものがわかります。

「騎士」という単語からは、愛馬に跨がり全身鎧を着て、突撃用の(ランス)長剣(ロングソード)騎士用盾(カイトシールド)を持っているものが想像するのではないでしょうか。

 ちなみに長剣(ロングソード)は地面に立っている敵兵士を馬上から攻撃するために、一般的な刃渡り六十センチの剣よりも一回り長い七十センチで作られています。

 バランスが刃の側に偏るため釣り合いが悪いのです。

 ですが馬上から下にいる敵兵士を叩き切るという目的であれば、振りまわしやすい刃渡り七十センチがベストなのです。


 共通認識を喚起するのが「意図的に隠す」メリットです。

 ですがメリットとデメリットは裏返しでもあります。

 「騎士」は基本的に上記の姿をしていますが、これは中世末期の状態です。

 一般的な「剣と魔法のファンタジー」での「騎士」像もこれに近いと思います。

 それ以外の時代だと革鎧を着ていたり鈍器メイスを持っていたりと状態に差が出るのです。

「意図的に見せる」ことで、あなたの作品世界にいる「騎士」の姿を明らかにしておく必要があります。

「意図的に見せる」ことがなければ、読み手は共通認識から上記の姿を思い浮べるのです。




行間を読ませる

「意図的に隠す」ことの高等テクニックが「行間を読ませる」ことです。

「行間を読む」とは「文章として直接書かれていないのに、読んでいるとそんな気持ちや感じになる」状態を指します。

「直接書かれていない」のにわかるということは「意図的に隠す」からです。

 さらに「行間」の構成要素を「意図的に見せる」ことで、一言も触れずにその出来事について読み手に知らしめることができます。

 これが「行間」の正体です。

「行間」の構成要素をひとところに集めてしまうと、文章として成立してしまいます。

 構成要素はバラバラにして周囲に散らばらせることで、一読しても文章として成立しません。

 文章として成立しなくても、構成要素をすべて読めば「行間」が浮かび上がってくるのです。

 「行間」を意図的に作り出すには、かなりの高等テクニックが必要になります。

 構成要素をうまく散らばらせることができるかどうか。

 多すぎてもいけない。少なすぎてもいけない。近すぎてもいけない。離れすぎてもいけない。

 このように制約が多いのです。

 ここが書き手の筆力の見せどころになります。





最後に

 今回は「隠すこと見せること」について述べてみました。

「意図的に見せる」「意図的に隠す」「行間を読ませる」という三つのテクニックを駆使して小説を書くのです。

 小説は「省く」芸術です。

 あえて書かなければならない情報もありますし、けっして書いてはならない情報もあります。あえて書くのは憚られるが書き手の主義主張を読み手に伝えるために分解して散らばらせるようにするのです。

 これだけのテクニックを使いこなせるようになれれば、あなたの筆力は一段上になりますよ。




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