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439.深化篇:推敲のポイント(2/2)

 今回は前回に引き続き「推敲」についてです。

 先に全体の流れを作ってから、誤字脱字や適切な語句の選択に入るべきです。

推敲のポイント(2/2)


 今回も「推敲」についてです。

 前半は展開と五感に触れています。

 後半は誤字脱字や適切な語句の選択という、皆様が「推敲」だと思うものを書きました。




最終章は盛り上がっているか

 推敲において最も重要なのが「最終章は盛り上がっているか」です。

 ひとつ前の章が「佳境(クライマックス)」ですから、ここで盛り上がるのは当たり前です。

 しかし「最終章」でどれだけ盛り上げて終局(フィナーレ)を迎えるのかで物語性が大きく変わります。

「ハッピー・エンド」で大団円の締めが最も好まれるのですが、「バッド・エンド」で考えさせる終わり方にも味があります。

 どちらの場合でも、賑わいか考えさせるかという盛り上がりが示されているのです。

 だから登場人物が勢揃いして幕引きするよう、いかにも大団円だと読み手に知らせることも必要です。

 ですが「主人公が群れからはぐれて、ひとり新たな道を進む」という終わり方にも、矜持や美学といったものを感じるのではないでしょうか。

 複数でもひとりでも、最後の締めをどれだけカッコよく終わらせることができるのか。

 これまで連載小説でどれだけカッコよくスタイリッシュに続けてきても、最終回をどう締めくくるかで駄作にも名作にもなりえます。

 ですので「最終章」は必ず盛り上がって終わってほしいところです。




同じ文章が頻出していないか

 私のこのコラムでは「小説投稿サイトに投稿する」だとか「総合評価ポイントが」だとかいう文章が毎回のように登場しています。

 430回過ぎまで連続して読んでくると、そのうち「小説投稿サイト」「総合評価ポイント」といった単語を触れるだけで、目が滑ってしまいます。

 これは人間の脳の性質のせいで、同じ単語や文章が頻出していると、脳で「この単語ではこんなことを言っていたな」と思われて文字を目で追っているのに、記憶がフラッシュバックしてそちらの意味で捉えてしまうのです。

 だから同じ単語や文章はなるべく使わないことが肝要になります。

 私は本コラムが少しでも読みやすくなるよう、基本的に「です・ます体」では、文末を意図的に「連続しないよう」に心がけているのです。

 同じ文末が続くだけで、読み手が単調さを覚えて価値のない小説が出来上がってしまいます。

 文末をいかにして処理するのか。たったこれだけでも文章は格段に読みやすくなるのです。


 あと気をつけたいのが「重言」です。

 同じ意味の言葉を重ねてしまうことを指します。

「馬から落ちて落馬した」「骨が骨折して折れた」「富士山に登山する」といった類です。

「一番最初」「まず初めに」という言い方を最近よく耳にします。

 これは同じ漢字ではありませんが、「一番」「最初」、「まず」「初めに」の意味はまったく同じです。

 一文の中に「同じ漢字を用いる」ときと「同じ意味の言葉を重ねる」ときは、たいていの場合この「重言」となります。

 皆様も小説を書く際に「同じ単語を使わないぞ」「同じ文章は頻出させないぞ」「同じ文末は書かないぞ」「同じ意味の言葉を重ねないぞ」と肝に銘じてくださいませ。

 そんな些細なところに「小説賞・新人賞」の一次選考を通過できるかがかかっています。




感触と体温と匂いを加える

 小説は文字だけの「一次元の芸術」です。

 しかしそこから読み手に現実味を与えるために五感の情報を入れたいとします。

 するとたいていの書き手が「耳で聞こえる」ことと「目で見える」ことだけを書こうとするのです。

 元々「音声」はそのまま言葉で表せますから、誰でも書くことができます。

 ですがそれではセリフを抜き書きしたものにしかなりません。

 そこで書き手は「目で見えた」ことを書こうとします。

 実際、脳は視覚が刺激の80%を担うほど視力に特化した構造になっているのです。

 そしてある程度書きなれてくると、聴覚のほかに視覚が混じって情景が見えるようになります。

 ですがそこで満足しないでください。

 人体には「五感」といって「視覚」「聴覚」の他に「嗅覚」「味覚」「触覚」があります

 この中で毎回書かなくてもよいものが「嗅覚」と「味覚」です。

 なにか特別な匂いがしたり味がしたりしないかぎり、書く必要性がありません。

 そこで「触覚」を三番目に加えましょう。


「触覚」は「手触り」「肌触り」といった「感触」、感じた温度が「高い」「低い」といった「温感」、「痛い」「くすぐったい」といった「痛覚」に大きく分けられます。

 それぞれ役割が異なりますが、「熱い」「冷たい」ときは「痛覚」も同時に刺激されるのです。

 たったそれだけのことで、あなたの作品は格段にレベルアップします。

「小説賞・新人賞」応募者の実に九割が「小説の体をなしていない」と言われているのです。

 おそらく「触覚」にまで気がまわっていなかったからでしょう。

「触覚」はシーンの天候や状況が如実に現れます。

 つまり「触覚」を通じて世界観・舞台を語るのが、最もスマートな執筆方法です。


 そのあとが「嗅覚」でしょうか。

 「匂いフェチ」の方も多いと思います。

 女性から漂う石鹸の匂いやシャンプーの匂いなど印象に残る部分を書くのです。




誤字脱字と適切な語句使用のチェック

 最後の最後に登場するのが、皆様が最初に思い浮かんだ「推敲」の誤字脱字と適切な語句のチェックになります。

 もちろんここまでチェックする中で誤字脱字に気づいたら、その部分を色付きボールペンで都度訂正していきましょう。

 ですが、最後の段階になるまで、文章はいつ変更になるかわかりません。

 展開や描写の仕方が変わる可能性があるからです。

 なので誤字脱字と適切な語句のチェックは後回しにしました。





最後に

 今回は「推敲のポイント(2/2)」として二分冊の二を述べてみました、

 皆様が「推敲」だと思っていることは、些末なことなのです。

 まずキャラの立て方と文章の流れを意識して、そこに乱れがなければ五感を生かして書く。

 そしてようやく誤字脱字と適切な語句使用のチェックが始められます。

 前回紹介した詩人・賈島氏は、文の流れをきちんと作ってから「推す」にしようか「敲く」にしようか悩んでいたのです。

 先にやるべきことがある。

 それが今回改めて確認しておきたかったことです。




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