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436.深化篇:好きな小説は売っていない

 今回は読み手が心の底から「好きな小説は売っていない」ことについてです。

 売っていないから小説投稿サイトが流行ります。

 小説投稿サイトで目立てば「紙の書籍」化の話が来るかもしれません。

好きな小説は売っていない


「こういう物語が好き」「こういう物語が読みたい」という思いは誰しもが持っています。

 しかしそういう小説ほど書店には売っていないものです。

 需要(ニーズ)がニッチすぎるからでしょう。

 商業ベースで流通する小説は、大衆(マス)ウケするポイントを持った物語であることが多いのです。




売っていないなら小説投稿サイトで

 ニッチな需要(ニーズ)を満たすためには、商業ベースでない小説を探さなければなりません。

「売れるか売れないか」よりも「読みたくなるか読みたくもすらならないか」という作品が集まる場所。それが小説投稿サイトです。

 しかし小説投稿サイトでも「読みたい小説が見つからない」人もいます。

 小説投稿サイトにはそれぞれ傾向があります。


『小説家になろう』はライトノベル全般に強いですが、とくにハイファンタジー(異世界ファンタジー)が一大勢力を成しています。

 明確な「テンプレート」によってある程度のニッチな需要(ニーズ)に応えられますし、あえてそこからズラした作品が数多く読めるため、ひじょうに挑戦的な小説投稿サイトだといえるでしょう。

 ただし「紙の書籍」化を目指すうえではKADOKAWA系列が入らなくなったため「華々しいデビュー」とは無縁になりつつあります。

 今は中小レーベルから出版されるか、住野よる氏『君の膵臓をたべたい』のような一般文芸に「紙の書籍化」のチャンスがあるといえるでしょう。


『カクヨム』は経営参画しているKADOKAWAの影響からライトノベル全般が強く、傘下の「電撃文庫」「富士見ファンタジア文庫」「角川スニーカー文庫」といった系列レーベルに数多くの作品を「紙の書籍」化して輩出しています。

 いずれもライトノベル界では名の知れたレーベルなので、投稿者の質も高いのが特徴です。

 ただしニッチな需要(ニーズ)を満たそうとするのは難しいでしょう。

 書き手の意識が「紙の書籍」化ありきなので、無難な作風に落ち着いてしまっているからです。


 老舗の『エブリスタ』は女性向け恋愛小説が強い。

 こと女性向け恋愛小説に関しては、最大手『小説家になろう』も読み手の数なら引けをとりません。

 しかし熱心に評価してくれるのは『エブリスタ』の読み手が一枚上手です。

「紙の書籍」化も主に女性向けレーベル中心であり、小説投稿サイトの棲み分けとして「女性向け」を一手に担おうとしているように感じます。

 ですので、女性向けで読みたい小説を探すときは有力な候補となりえます。


 最後発の『ピクシブ文芸』も現在では女性向け恋愛小説が強くなりました。

 元々イラスト投稿型SNSである『pixiv』に小説機能を実装した『pixiv小説』は二次創作の格好の投稿先です。

 そしてランキングを読み手の男女別で表示できるため、女性向け恋愛小説の勢いが際立っているのがよくわかります。

『pixiv小説』に関してブックマーク数は男性向けとは桁がひとつ違うのです。

 そして成人向けの作品も『ピクシブ文芸』のランキングに載るため、「ボーイズラブ」「ガールズラブ」などがランキング上位を独占することとなりました。

 女性向けの少しアダルトな小説を探している方は『ピクシブ文芸』も候補に入れておきましょう。

 ただし現時点ではそれほど作品数がありませんので、あなたのニッチな需要(ニーズ)に沿えるような作品に出会えるかは正直微妙です。

『ピクシブ文芸』最大の弱点は出版社と企画した「小説賞・新人賞」が現在一本も無いことです。

 幻冬舎との企画だった「ピクシブ文芸大賞」は二年前に募集したきりで、第二回の告知が今もってありません。

 また名前に「文芸」と付くだけあって、『小説家になろう』での「文芸」ジャンルが受賞しやすい傾向がありました。

 つまりライトノベルは門前払いだったわけです。

 これは現在でも編集部イチオシの「ピックアップ」を見ていてもよくわかります。


 このように、小説投稿サイトによって作品の傾向が異なり、ニッチな需要(ニーズ)に応えてくれるサイトもそれによって変わってくるのです。

 それが小説投稿サイトの棲み分けであり、使い分けとなります。

 棲み分けができなかった小説投稿サイトは規模が縮小して撤退することが多いのです。




好きな小説はどこにもない

 究極的に言ってしまえば、「あなたの好きな小説はどこにもありません」。

 いずれかの要素を妥協すれば、それなりに好みに近い作品を見つけることはできます。

 しかしあなたが真に読みたいと思っている小説は、どこにもありません。

 ではどうするか。

「あなたが書けばいい」のです。

 今のあなたが読みたい小説は、他の読み手も読みたい作品である可能性が高い。

 なにしろ日本人だけで一億二千万人います。

 男性向け、女性向けに分けても六千万人ずついるのです。

 その中から対象年代をたとえば六等分して考えても一千万人います。

 男子中高生向けの小説には一千万人の読み手がおり、それぞれの読み手は「こんな小説が読みたい」と思っている物語があるのです。

 だから「あなたが読みたい小説」はあなたが書くべきだと断言できます。

「そうは言っても私の読みたい小説はかなりニッチだよ。こんなの書いたって読んでくれる人なんていないはず」と思っている方も多いでしょうね。

 しかし一千万人のニッチがいっさいかぶらない確率はジャンボ宝くじの一等前後賞にあたる確率と同程度です。

 つまり普通に考えれば「あなたが読みたい小説」を他の誰かが求めています。

 小説界隈で見落とされている物語が、ある日突然ブレイクして業界に革命を起こすことがよくあるのです。

 つまり「あなたのニッチ」は「潜在読者層」を開拓することがあります。

 その第一作になれれば、業界の中でもトップランナーでいられるのです。

 そうなればどこの出版社・レーベルであっても「紙の書籍」化の話はやってきます。

 どれだけ「ニッチな需要(ニーズ)」を前面に出せるかが成功する確率を高めるのです。


「紙の書籍」は小説をよく読む方たちの最大公約数を柱にして物語を作っています。

 今なら「異世界転生」「元勇者」「おっさん」「アラフォー」「スローライフ」「主人公最強」「チート」といった最大公約数を持った作品ばかりが「紙の書籍」化されているのです。

 最大公約数から外れた小説は「素数」のように浮いた存在になります。


 しかし「素数」は最小公倍数を導き出す可能性を秘めた数字です。

 つまり新たな潮流になりえます。

 あなたが「こんな小説はさすがに存在しないだろう」と思うような小説を読みたがっている人は多いのです。

 そして「素数」は現在も時々刻々コンピュータで計算されて導き出されています。

 ニッチな小説でも「素数」のように新たな時代の最大公約数となりえるのです。

「誰も書いていない」のなら「あなたが書けばいい」。

 あなたが読みたい物語を自分で書いてみませんか。

「新世代のパイオニア」になれるかもしれませんよ。





最後に

 今回は「好きな小説は売っていない」ことについて述べてみました。

 ニッチな需要(ニーズ)は「素数」です。

 これまでに最大公約数が存在しなかったのに、これからの最小公倍数になりえます。

「新世代のパイオニア」はつねに「素数」のような存在でした。

 日本に限っても厩戸皇子(聖徳太子)や織田信長や坂本龍馬、渋沢栄一に松下幸之助に井深大・盛田昭夫、本田宗一郎などが「素数」のような存在だったといえます。

 彼らによって日本は大きく変わったのです。

 あなたの小説が「素数」になる可能性がある以上、私はあなたに小説を書いてほしいと強く思っています。




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