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422.深化篇:最初から期待しない(4/4)

 今日も後れてしまいました。引っ越し作業中ですが、引越し時は予約投稿となる見込みです。

 本日は引き続き「最初から期待しない」の四分冊目のラストになります。

「妄想」は「才能」を呼び起こします。

 あなたは小説を書くために、どれだけ「妄想」していますか。

最初から期待しない(4/4)


 処女作は後で読み返すとかなり恥ずかしいものです。

 今回は「毎日物語を妄想していることが好き」なことが小説をうまく書くコツというお話となります。




妄想していますか

 皆様には「もしこうなったら現実はもっと面白いのに」「もしここでこんなことが起きたらどうなるんだろう」「もし意中の異性から告白されたらどうしよう」といった「妄想」を抱いたことはありませんか。

 私は恋愛の「妄想」こそありませんでしたが、「こうなったら面白いのでは」「こんなことが起きたらどうなるんだろう」といった「妄想」はよくしています。


 私は高校生の頃に「自動車に乗っていて、もし運転手が運転困難な状況に陥ったら、どう対処すべきか」について、かなり綿密に「妄想」していました。

 そして実際にその場面はやってきたのです。

 妄想してから十年ほど経った頃、軽自動車の助手席に座っていた1月1日未明のこと。

 運転手が交差点手前で急死し、アクセルを踏み込みながら交差点を赤信号のまま突っ込んでいく、という事態に直面しました。

 そんなとっさのとき、瞬時に状況を判断して的確に対処できる人はまずいません。

 私はそのとき、高校生の頃に思い巡らせていた「妄想」から、「もし運転手が操作不能に陥ったら、まず自動車を安全に止めなければならない」とわかっていました。

 そこでまず「アクセルを踏んでいる右足をアクセルペダルから取り除いた」のです。

 これでとりあえず軽自動車の加速は止まりました。

 次は「道の脇に車を安全に停止させる」ことです。

 ブレーキペダルを操作する必要があるのですが、あいにく体を入れる隙間はありません。

 手を伸ばしてブレーキペダルを押し込みながらハンドルを操作し、国道の路側帯まで自動車を誘導して止めたらサイドブレーキを引いて完全停止させました。

 AT車でしたから、ブレーキペダルで完全に止めたとしても、ブレーキペダルから手を離してしまうと緩やかに前進してしまいます。

 だからサイドブレーキを引き上げるのです。

 自動車が完全に停止したら、そこから即座に人工呼吸などを施したのですが、本当に突然の心疾患で急死されたので、手の施しようがありませんでした。


 実はこのエピソードの鍵は「私は運転免許証を持っていない」「自動車に特別詳しいわけではない」という状態だったということです。

 つまり「妄想」どおりに動くためには、現実の「自動車の仕組み」を「知識」として持っている必要がありました。

 ある程度の「知識」(アクセルペダルとブレーキペダル、MT車ならクラッチペダルもありますね。AT車ではブレーキペダルを離すとゆっくり前進します)があったことで、「妄想」は「危機回避」の手段として確立したのです。




妄想の始まりは危機回避力の向上

 まあ私のような修羅場を実際に味わった人はまずいないと思いますが、「妄想」によって命拾いした人は実際にいるのです。

「妄想」により、あらゆるパターンの危機回避を想定していれば、それだけで生存確率を高められます。

「妄想」のよいところは、現実を超えた物語を作るのに向いていることです。

 異世界を舞台にした小説を書きたいとき、現実世界の法則に縛られた発想だけでは、異世界観を読み手に感じてもらえません。

 たとえば「自分に翼が生えて空を飛べたとして、もし片翼が折れたらどうやって安全に着地すればいいのか」を「妄想」してみてください。

 鳥は両翼が万全だから空を飛べます。

 片翼が使えなくなったらわずかに軌道を変えることはできても、ほぼそのまま落下するしかないのです。

 そのときもし森や湖が下にあったらチャンス到来。

 下が森なら木の枝に突っ込むことで、かなり痛いはずですがクッションとして役に立つでしょう。パラシュートで落下しようとしてセスナから飛び降りたのにパラシュートが開かなかった。でも生還できたパターンとして多いのが、木の枝をクッションにして落下速度を可能な限り低減できた、というものです。

 下が湖なら翼を畳んで足を下にして水中へ一直線に落下しましょう。高いところから飛び込むと水はコンクリート並みの硬さになります。ですが一直線に落下すればせいぜい足の骨が折れて局部が裂けるくらいで、生命維持に必要な臓器や脳などを損傷せずに済みます。

 こういった危機回避のための「妄想」では「最も損失を少なくして、最も安全を確保できる策を考え出す」ことに主眼を置くのです。

 そうすれば生きて還れる確率は高くなります。




毎日物語を妄想していることが好き

 現実世界に根ざした「日常」ものや「恋愛」ものであっても「妄想」を着想のスタートにすれば、それまで考えていた「現実世界の束縛」を脱することができます。

 小説を着想するとき、構想するとき、想像するときに「妄想」で思い描いたイメージをきちんと文章にして表現できる力を養うべきです。


 そんな「妄想」を暇な時間に数多く長い時間をかけて、練りあげてください。

 たった一日「妄想」した物語と、十年「妄想」し続けた物語ではどちらに深みがあると思いますか。

 よく「構想十年」などといって売り出す作品を見かけますよね。

 この「構想十年」に実は「妄想」していた時間も含まれているのです。

 メモ用紙や原稿用紙に書き出した時点からではなく「妄想」の時点からスタートします。

 何度も繰り返し「妄想」して、物語が破綻しないように精密に構築していく。

「妄想」を毎日続ければ、それだけ「構想」が固まっていくのです。

 だから暇が出来たり寝る前などに物語を何度となく「妄想」してください。

 いろんな場面を「妄想」することで、主人公のキャラが決まっていったり、「エピソード」が思いついたり、最も盛り上がる「佳境(クライマックス)」に向けて順調にステップを踏んでいったりできるようになります。

 だから「妄想」し続ければ「構想」につながってくるのです。

「構想力」に乏しいと自覚している方は、実際には「妄想」力が足りていません。

「こんなとき、このキャラならどんな行動をとるのか」を「妄想」できなければ、キャラが物語の都合で無理やり動かされているような印象を読み手に与えてしまいます。


「妄想」するクセを今日からでもつけてください。

「文豪」と呼ばれる人も「ベストセラー作家」も、読んだ人の心を動かすのは書き手の「妄想」から生まれた「構想力」「展開力」「描写力」があるからです。

 小説を書くために最も必要なのは、小手先のテクニックよりも「妄想」という事実を今一度確認しましょう。





最後に

 今回は「最初から期待しない(4/4)」として四分割の第四を述べてみました。

 小説とは、詰まるところ「書き手の妄想」を文章にして読み手へ伝える芸術です。

 ウソのない「ノンフィクション」も「書き手の妄想」を通して事実を読むことになります。

 つまり偏向された事実が情報となって文章に表れるのです。

 まして小説は、どこかに必ず「フィクション」が書かれています。

 私小説のように開けっぴろげな小説もありますが、それでもやはり「フィクション」はあるのです。

 あなたが書きたいファンタジーやSFや推理では、実際に人を殺したことのない書き手が文章で人を殺します。

「殺したことのない人が文章で人を殺す」には、「妄想」を積み重ねなければなりません。

 その結果、人の死を軽んじるようになって次々と人が死んでいく小説を書く人と、人の死を重んじてできるだけ人の死なない小説を書く人に分かれていきます。

「妄想」した物事はそれだけでじゅうぶんに「テーマ」となりうるのです。




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