415.深化篇:電子書籍で手本を探す
今回は「手本」を「電子書籍」で見つけることについてです。
小説投稿サイトに投稿する人の半数が「ライトノベル」を書きたいとするなら、「手本」を見つけるのがいちばん難しいでしょう。
どこの書店に行っても「ライトノベル」にはビニールのシュリンクがされているからです。
電子書籍で手本を探す
現在電子書籍が熱いです。
紙の書籍よりも軽くて書庫のすべての本を持ち歩くこともできます。
現在電子書籍のトップを走るのがAmazon『Kindle』です。
次いで楽天『kobo』、Apple『ブック』といったところでしょうか。
私はMacとiPadで『ブック』を利用していますから、そちらを前提にお話しいたします。
ですが他の電子書籍でも使い方はほぼ同様でしょうから参考にしてくださいませ。
無料の冒頭試し読み
Apple『ブック』の「サンプルを入手」といった電子書籍での「冒頭試し読み」はとくに小説を書く人にとって、とても有用です。
お金をかけずに人気作品の「書き出し」が好きなだけ読めます。
「書き出し」でどれだけ読み手の心をぐっと掴めるか。
それが小説投稿サイトへの投稿や「小説賞・新人賞」への応募には必須の筆力となります。
書店で立ち読みするのも一手なのですが、ライトノベルはたいていビニールでシュリンクされていて試し読みできません。
理由は以前にも書きましたが、ライトノベルは書籍に破れや折れがあるとたとえ買いたいタイトルであってもそのお店では買わないからです。
ラノベオタクの収集癖によるものだと思います。
そういった方々は読む用と保存用の二冊を買っているのです。
その点、純文学や大衆小説などの一般文芸はシュリンクされていない書店が大半でしょう。
純文学や大衆小説などの一般文芸は「テーマ」が明確であっても複雑な構成をしているので、たとえ一時間立ち読みされようとも結末までたどり着けないと思われているからです。
いくらでも、それこそ最初から最後まで立ち読みできるのですが、読みすぎてしまってかえって吟味する過程が疎かになってしまいます。
それに比べてライトノベルは「テーマ」よりも、一章ごとの「楽しさ」を提供していますから、一章だけ読んで満足してしまう可能性もあります。
その点からも、ライトノベルはシュリンクしなければ売れないのでしょう。
ライトノベルは必然的に、純文学や大衆小説などの一般文芸も今よりも門戸を広げるために、電子書籍では「冒頭試し読み」を提供しています。
タダでも得られる情報は満載
Apple『ブック』の「サンプルを入手」のように、冒頭部分を無料でダウンロードできるのが、電子書籍の良いところです。
しかも書店ではシュリンクされているライトノベルの冒頭だって試し読みできます。
まずは『このライトノベルがすごい!』を紙の書籍で買いましょう。
そしてランキングに載っている作品の「サンプルを入手」をして、できるだけ多くの作品の冒頭部分を電子書籍端末にダウンロードしてください。
すると「最近この小説が人気あるようだけど、どうしてかな」と研究する際、過たずに真贋を見極められるようになります。
まずは人気作の「冒頭試し読み」をして、どういうリズムでどういう文体で書かれているのかを分析するのです。
またどういう流れで地の文と会話文を活用しているのか。
「説明」と「描写」がどのくらい書かれているのか。
それを知るのです。
とくに最近のライトノベルは、一度大ヒットした作品のテンプレートを繰り返し用いている作品が多い傾向にあります。
たとえば「異世界転生」「異世界転移」「主人公最強」「チート」「悪役令嬢」などですね。
そのため冒頭を試し読みすることで「この作品はこういうテンプレートだからウケるのか」と判断することも可能になります。
またどれくらいページが淡いのか、どのような語彙を用いているのか。
これらも「冒頭試し読み」で判断できます。
iPhenoやiPadやMacをお持ちならApple『ブック』が使いやすいでしょう。
私もMac使いのiPadユーザーですからApple『ブック』を利用しています。
他にもAmazon『Kindle』や楽天『kobo』など「冒頭試し読み」ができる電子書籍がたくさんあるでしょう。
以前の乱立期から発展期に入った電子書籍端末も、今ではだいたい『iBooks』『Kindle』『kobo』の三つに絞り込まれています。
他にもマンガに強い『eBook Japan』でも小説の電子書籍が「立読」できるので、無料で「冒頭試し読み」としては利用しやすいのではないでしょうか。
またAmazonの定額サービスである『Kindle Unlimited』に加入すれば、登録されている書籍は全文が定額料金だけで何度でも、数多く読むことができます。
今のところ電子書籍の定額サービスはAmazon『Kindle Unlimited』だけなので、たくさんの書籍を毎日でも読みたい方は契約を検討してみるとよいかもしれません。
ブログならここにAmazon『Kindle Unlimited』へのリンクを張って広告収入を得るところなのでしょう。
ですが、私はブログをやっていませんし、ここは小説投稿サイトですのでリンクは張りません。
Amazon『Kindle Unlimited』に関してはご自身で検索して概要をお調べいただければと存じます。
最良の一冊を見つけ出す
「冒頭試し読み」をして「この小説、面白いな」と感じたら、そのまま電子書籍を購入するか、紙の書籍を書店で購入するかしましょう。
Amazon『Kindle Unlimited』なら全文読み放題ですから、そのまま読み進めていきます。
今後その作品を「手本」にしますので、できれば単巻完結ものか、上下巻程度の物語がよいでしょう。
それ以上長いと必ずだれてきます。
ライトノベルなどで例を挙げると、渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(『俺ガイル』)の第一巻、川原礫氏『ソードアート・オンライン』(『SAO』)の一〜二巻(アインクラッド編)、水野良氏『ロードス島戦記 灰色の魔女』、田中芳樹氏『銀河英雄伝説』の一〜二巻(ラインハルトが帝国の覇権を握るまで)あたりが適当でしょうか。
『俺ガイル』は元々第一巻で終わるはずの小説が人気を受けて長期連載化した作品なので、第一巻だけでもじゅうぶん参考になります。「日常」「青春」「恋愛」といった要素を書くのに役立つでしょう。
『SAO』はアインクラッド編だけでかまいません。現在『ソードアート・オンライン プログレッシブ』(『SAOP』)が連載されており、アインクラッド編を第一層から緻密に描いています。だから『SAOP』の概要を知るためにも『SAO』一〜二巻を先に読んでおくと比べられるので便利です。こちらは「VRMMO」ものですが、若干「主人公最強」「チート」が含まれています。
『ロードス島戦記 灰色の魔女』は日本におけるハイファンタジーの古典のひとつであり、以後のハイファンタジーすべてに影響を及ぼしたともいえる歴史的な作品です。当然「ハイファンタジー」「冒険もの」を書くときの参考になります。
『銀河英雄伝説』は「SF小説」に「戦記もの」を持ち込んだ作品です。それに伴って物語のスケールが桁違いに大きくなっています。ですのでラインハルトが銀河帝国の覇権を握るまでの一〜二巻だけを参考にしてください。ただし第一巻の序章は「銀河の歴史」について語っているだけであるため、そこは飛ばして第一章から読み返していただければと存じます。
最後に
今回は「電子書籍で手本を探す」ことについて述べました。
学校で勉強するとき、必ず「教科書」を用いますよね。
この「教科書」が「手本」なのです。
小説を書くときも、どう書けばいいのかは「手本」を参考にしましょう。
「手本」を見ずして小説を書くのは、ひとつの言語を自ら創り出すほどの才能がなければ不可能です。
ですから、まずは「手本」を探しましょう。
その「手本」を電子書籍の「冒頭試し読み」で見つけられれば、選び違いが減らせます。