403.深化篇:登場人物の役割分担
今回は「人物」についてです。
小説に登場する人物には、明確な差異がなければなりません。
全員同じような人物しかいないのであれば、その役は一人にまで省くことができます。
差異があるから人物が存在する必然性があるのです。
登場人物の役割分担
小説には必ず人物が登場します。
最低限、主人公と「対になる存在」が必要です。
しかし二人だけだと、どうしても物語が短くなってしまいます。
だから第三者を出して活躍させる必要があるのです。
第三者にはどのような役割を持たせるべきでしょうか。
少し考えてみましょう。
物語や組織としての役割分担
主人公陣営に属している第三者は、陣営内で役職を持っていることがあります。
集団行動ですから威厳のあるまとめ役・リーダー役は不可欠です。
冒険や敵の知識に長けている参謀・顧問役もいたらありがたい。
攻撃には切り札となるエースが必要となります。
集団行動であることを考えると、メンバー同士の関係をスムースにする潤滑油となる人物も欲しいですね。
プラス面ばかり書いてきましたが、マイナス面としておちゃらけている人や足手まといになる人もいます。
またストーリーを進めるために、大魔王にさらわれる王女様というのもファンタジー小説では鉄板の存在でしょう。
海外の寓話では主人公を手助けしたり邪魔したりする魔女も数多く登場します。
物語においてどんな役割を果たすのかをまず決めましょう。
外見上の特徴分担
主人公陣営が全員スリムな長身でスポーツ刈りをし黒いスーツを着てサングラスをかけているということはまずありません。
これではさながらフジテレビ系列バラエティー番組『逃走中』に登場する「ハンター」たちのようです。なんの個性もありません。
外見だけでひと目で、小説なら一語で人物を特定できるような特徴を設定することで、読み手にもイメージが伝わりやすくなります。
見た目でインパクトがあるのは、まず身長ですね。平均と比べて高いか低いかはそれだけで人目を惹きます。
中国古典『三国志』に登場する蜀の関羽雲長は大柄の偉丈夫、魏王の曹操孟徳は諸英雄と比べて背が低かったそうです。曹操は身長に相当なコンプレックスがあったとされています。
次に重要なのは体形ですね。筋肉質なのか脂肪質なのか中肉なのかスレンダーなのかガリガリに痩せているのか。これも見た目で大きなインパクトを与えます。
他には特徴的な髪型や、眼鏡・腕輪・イヤリングなどの装飾品ですね。
また服装も重要です。派手だったり地味だったり質素だったりボロだったりします。
私はファッションに疎いため、ボロでも平気で外出していますが、小説の登場人物を設定するときに、そこまで振り切ってしまうと逆にリアリティーがなくなるかもしれません。
能力や技能を補完する分担
主人公陣営に属している第三者は、主人公にはない能力や技能を補完するために存在します。
もし主人公陣営に剣で戦う戦士しかいなかったらどうなるでしょうか。
魔法のない世界観ならそれも「あり」かもしれません。
しかし一般的なファンタジー小説では、冒険に欠かせない能力を主人公ひとりでまかなうには限度があります。
そこで第三者は、体を張って前線で戦える人、弓や弩や銃器などで後方から遠距離攻撃ができる人、治癒魔法が唱えられたり応急処置や医術に通じていたりする人、攻撃魔法を唱えられる人、怪力で立ちふさがる岩を破壊できる人、敵に気づかれず死角から不意打ちできる人、罠を解除できる人などが求められるのです。
水野良氏『ロードス島戦記 灰色の魔女』なら主人公の戦士、ドワーフの戦士、ハイエルフの精霊使い、治癒魔法を唱えられる神官、攻撃魔法を唱えられる魔術師、そして罠を解除できる盗賊の六名がパーティーを組みました。
現代の物語であればコンピュータ仕掛けの装置を解除・突破するするハッカーや、「VRMMORPG」で攻略を担当するプレイヤーというのも、能力や技能を補完する意味では必要な存在ですよね。
性格の特徴分担
主人公陣営が全員楽天家でケ・セラ・セラ「なるようになれ」という人物しかいなければ物語はどうなるのでしょうか。
おそらくアニメ・赤塚不二夫氏原案の『おそ松さん』に登場する松野家の六つ子のようなギャグものにしかならないはずです。
もし大魔王の手からさらわれた王女様を助けようと戦いを挑んでも、全員考えなしに突撃して全滅するのがオチではないでしょうか。
そこで集団にはさまざまな性格を持つ人物が不可欠になります。
直情径行な熱血漢はたいてい主人公です。
感情が豊かですから、読み手が感情移入しやすいのですね。
可愛くて守りたくなったり綺麗で気位が高かったりすればヒロイン候補になります。
冷徹で非情な人物は参謀や補佐役となることが多い。
おっとりとして温厚な人物は母親的な立場でしょうか。
また人物の年齢も性格に影響を与える一因なので、考慮して設定してください。
主人公との関係性分担
主人公陣営では主人公との関係性が物語の展開に影響を与えます。
よくある設定は「幼馴染み」「隣家・隣室に住んでいる」「知り合い」「友だち」「親友」「教師」「生徒」「上司」「部下」「同僚」「仲間」といった環境面のものです。
他にも「初対面」だったり「恋愛感情」を持っていたりといった感情面のものもあります。
主人公陣営でも「対になる存在」陣営でも主人公にとって「好敵手」となる人物がいるものです。
「好敵手」は主人公が越えるべきひとつの障害になります。
また「対になる存在」そのものと主人公との関係性が物語の根幹を担っているのです。
これから恋仲になるのか、命のやり取りをすることになるのか、競技で頂点を競い合うのかなどさまざまな関係性があります。
「対になる存在」の立ち位置こそ、小説の面白さを支える真髄なのです。
主人公陣営に入った理由は
第三者が主人公陣営に入るには、まず知り合うきっかけが必要です。
なんの前触れもなく仲間になる人なんてまずいません。
いたら詐欺師かペテン師の類いも考えられます。
仲間になるだけの交流の度合いも勘案しなければなりません。
主人公陣営とどれだけの時間接触していたのか、それがどんな内容だったのか。
たとえば学園もので主人公陣営に「迷い猫探し」を依頼したとします。
すると依頼人は主人公陣営と一緒になって猫を探すことになります(内容)し、長い時間関係を持ちます(時間)から、「迷い猫探し」をクリアしたら依頼人が主人公陣営に加わる理由ができますよね。
となれば仲間になる理由や動機が必要です。
主人公陣営があんなに熱心に「迷い猫探し」をしてくれたから、私も恩返ししたいというのも理由や動機になりえます。
このパターンは渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』でヒロインの一人となった由比ヶ浜結衣に用いられているパターンですよね。
仲間になった人物にはなにか問題や悩みを抱えていると思います。
それを解決するために仲間になるというのもひとつの動機です。
しかし仲間になりたい第三者がすんなりと仲間になれるのかは別問題です。
たとえば冒険者パーティーに盗賊は二人要らないと思いますので、よほどのことがない限り仲間になりたい盗賊をパーティーに加える理由がありません。
(これを逆手に取ったのが『小説家になろう』で人気の「追放」ものです)。
パーティーに足りない個性や特技があるから、主人公陣営の仲間入りができます。
国家間で言えば、古代中国の戦国時代は七つの大国が存在していました。これを戦国七雄と言います。秦・晋・趙・韓・斉・燕・楚の七国です。
この中で秦が頭抜けた国力を誇り、残り六国を敵に回して戦っていました。
説客である蘇秦の進言する「合従」の策に従い、他の六国は対秦同盟を組むことで秦と互角に渡り合っていたのです。
しかし蘇秦の死後、秦は説客である張儀の進言した「連衡」の策を採用して、六国を一国ずつ仲間に引き入れては他の一国を滅ぼすという策に出ます。
秦は六国を滅ぼすために、他国を一時的とはいえ仲間にしました。
理由があったわけですね。
最後に
今回は「登場人物の役割分担」について簡単に述べてみました。
関係性のパターンはまだまだありますが、一度に詰め込んでも使いこなせません。
私も書いていて、まだありそうだけどこれ以上出すとネタがなくなるなと感じていたので深く考えることをやめました。
とりあえず「これだけは知っておいて損はない」と思えるものだけをチョイスしてあります。
まぁ朝1時半から執筆したので、あまり思い浮かばないというのもあるんですけどね。