376.分類篇:ハイファンタジーのあらすじ作り(1/2)
今回と次回は「ハイファンタジー」小説に特化しての「あらすじ」作りについてです。
「あらすじ」は「企画書」から生まれます。
そこで童話『桃太郎』を題材にして「あらすじ」の作り方を見ていきましょう。
ハイファンタジーのあらすじ作り(1/2)
小説投稿サイト『小説家になろう』で「ハイファンタジー」小説は最も勢いがあります。
そんな激戦区を勝ち抜けるような作品を書いてみたい。
私はそう思いますが、どうも私が好きな作風は一般ウケしないと思います。
兵法を駆使した「異世界合戦」というとてもニッチな世界観だからです。
もちろん「ハイファンタジー」小説向きの構想もあります。
ただ四段式ロケットの一段目は「異世界合戦」なんですよね。
と出だしのボヤキはさておき。
今回はウケの良い「ハイファンタジー」小説の「あらすじ」をどう創ればいいのかを考察したいと思います。
これまでのコラムで書かれていたことを踏まえて、どう実践すればいいのかを確認してみてください。
なおここでいう「あらすじ」は『小説家になろう』の「あらすじ」、『カクヨム』の「紹介文」、『ピクシブ文芸』の「キャプション」のことではありません。
その小説にどんなエピソードをどの順で出そうかという「物語の道筋」のことです。
当初このコラムは『ピクシブ文芸』で連載していたため、『小説家になろう』で「あらすじ」と呼ぶもののことを知りませんでした。
そのため「あらすじ」という単語は混乱を生む元になってしまったのです。
この節では「エピソードを書き出していく」ほうの「あらすじ」で書きます。
どんな○○
小説を突き詰めれば「どんな○○」が「どんな○○」において「どんな○○を」、というように「どんな○○」を決めないことには作品は書けません。
最初に決めるものは書き手それぞれに異なりますし、同じ書き手でも作品ごとに異なるものです。
物語を創るうえでまず決めたいのは「世界観・舞台」「主人公」「佳境(最も盛り上がる場面)」「結末(どんな終わり方をするか)」のいずれかです。
その中でもとくに「主人公」をある程度決めていないと物語の展開が見えてきません。
「どんな主人公が(起)、どうなったか(結)」
これを真っ先に決めるのです。
これは次節で早速用います。
「起承転結」の「起○○結」が定まれば、残りの「○承転○」を埋めればよいのです。
「どんな主人公が(起)、どうなりたくて(承)、何をして(転)、どうなったか(結)」
これが小説における構成(起承転結)の最も短い単位となるのです。
私はこれを「企画書」と呼んでいます。
先ほど述べた決めたいことの中で「世界観・舞台」が抜けていますよね。
小説は「世界観・舞台」を異世界に設定すれば「ハイファンタジー」に、宇宙に設定すれば「スペースオペラ」になるのです。
現実世界に設定すれば「ローファンタジー」に、近未来に設定すれば「近未来SF」になります。
「主人公」「佳境」「結末」が同じでも、「世界観・舞台」が違うだけでまったく異なるジャンルに変化するのです。
要するに「ファンタジー小説」が書ければ「SF小説」も「時代小説」も書けるようになります。
魔法に寄せれば「ファンタジー小説」、科学技術に寄せれば「SF小説」、過去に寄せれば「時代小説」となるわけです。
『小説家になろう』では「ハイファンタジー」小説が最も読まれますし、投稿数も最も多い。次いで「ローファンタジー」です。
つまり「これから小説を書こう」とする人の大半は、「ファンタジー」小説が書きたいのだと考察できます。
そこでまず「ハイファンタジー」小説を書いてみましょう。
いきなり「書いてみましょう」と言われて困惑するかもしれません。
ですが「ハイファンタジー」は押さえるべきポイントが他のジャンルより少ないため、かなり無茶が利きます。
臆せず挑戦すれば、難しいことはほとんど出てこないのです。
物語の開始時と終了時の主人公を設定
まず物語開始時の「主人公」の設定と、物語終了時の「主人公」の設定を考えてみましょう。
「農民から騎士へ」「村人から勇者へ」「剣闘士から王様へ」という成長物語が最も読まれるハッピー・エンドな作品になります。
ですが「王子から駆け落ちへ」「貴公子から物乞いへ」「勇者から相討ちへ」というバッド・エンドなカタルシス作品というのも「あり」です。
一般的には「どんな主人公が(起)、何をする(転)」話なのかを先に決めます。
ですが「ハイファンタジー」小説は、長い旅路を経て主人公の身分や状態そして取り巻く状況などが異なってくるのです。
とくに連載小説の場合「何をする」つまり「出来事」はひとエピソードに必ず一回は出てきます。
それだと「執筆のゴール」にしづらいのです。
そこで先節で示したように「どんな主人公が(起)、どうなったか(結)」を書くことを優先しています。
例外として開始時と終了時で「主人公」がまったく変化しなかったということが起こりえます。
その場合でも、物語を進めていく途中で紆余曲折を経て「主人公」が経験を積み、結果として元のところに収まったという筋書きがほとんどです。
たとえば「王子が(起)勇者となって冒険を重ね(承)、悪の皇帝を討ち滅ぼして(転)、再び王子としての生活に戻った(結)」ような物語になります。
表面上は同じでも、経験を重ねたことで必ず「なにかが変わっている」はずです。
たいていは「冒険を共にした女戦士と恋に落ちる」とか「冒険中何者かに付け狙われる」とかいった「結末」に影響を与える出来事も起こります。
そのため先に「どんな主人公が(起)、どうなったか(結)」を決めてから連載に取りかかったほうがいいのです。
なりたいものと何をするかを設定
では主人公は「何になりたい」と思い、どんな行動をとるのでしょうか。
『桃太郎』では「桃から生まれた桃太郎が(起)、名声と金銀財宝を得て帰る(結)」話です。
そのため「育てのお爺さんとお婆さんのために一旗揚げたい」と思い(承)、「鬼ヶ島の鬼を退治」する(転)ことになります。
一般的には「桃から生まれた桃太郎が(起)、鬼ヶ島の鬼を退治する(転)」話から考えるのです。
短編小説を書くならこの一般的なほうを用いるべきでしょう。
しかし長編や連載するのなら、ひとつのエピソードで「出来事に出くわして」「出来事を解決する」という形が不可欠になります。
「出来事に出くわして」が「承」になりますし、「出来事を解決する」が「転」になるのです。
だから物語を貫く「大エピソード」の他に、ひとつのエピソードが「○承転○」につながる形で必要になります。
ひとつのエピソードはコラムNo.328「執筆篇:連載の起承転結」で示した連載の四部構成「主謎解惹」「起問答変」で進めていくのです。
「主人公」に「謎」が持ち込まれ、それを「解」いて一件落着、最後に次のエピソードへの「惹」きを入れます。
『桃太郎』も「あらすじ」で考えれば「お婆さんが川で洗濯していると大きな桃が流れてくる」「桃を割ったら赤子が出てくる」「大きくなって鬼退治に向かう」「道中で犬・猿・雉を仲間にする」「鬼ヶ島の鬼を全員やっつける」「金銀財宝を持って帰っていく」という筋書きです。
このエピソードはそれぞれ「主謎解惹」「起問答変」の形で示されます。
ハイファンタジー小説として「どんな主人公が(起)、どうなったか(結)」で創るか「どんな主人公が(起)、何をする(転)」で創るか。
皆様が書きやすいほうを選んでいただいてかまいません。
要は「企画書」である「どんな主人公が(起)、どうなりたくて(承)、何をして(転)、どうなったか(結)」が作れればそれでよいのです。
この「企画書」の立て方まで強制されるのでは、皆様のやる気を削いでしまいます。
まずはやりやすい方法でかまいませんので「企画書」を作ってください。
ちなみに『桃太郎』の企画書は「桃から生まれた桃太郎が(起)、育てのお爺さんとお婆さんのために一旗揚げたいと思い(承)、鬼ヶ島の鬼を退治して(転)、名声と金銀財宝を得て帰る(結)」です。
最後に
今回は「ハイファンタジー」小説の「あらすじ」の書き方・前半です。
「どんな○○」を積み重ねて、「企画書」を練ってください。
この時点では「面白い」のか「面白くない」のかはわからないと思います。
エピソードがないので面白くなりそうか判断できないからです。
次回はこの「企画書」を「あらすじ」にする手順をお示し致します。
ちなみに「童話」の『桃太郎』をあえて「ハイファンタジー」の作例に用いています。
そもそも「童話」というカテゴリーは幼年、児童向けであればどんなジャンルを用いてもかまわないのです。
だから本来なら「ハイファンタジー」であるべき『桃太郎』も、「童話」に落とし込むことができます。
ちなみに同じ構造をしているのに「スペースオペラ」はほとんど投稿されていません。
なので「ハイファンタジー」が書けるのなら「スペースオペラ」にも挑戦することをオススメします。