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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
執筆篇〜わかりやすく書くための心得
334/1500

334.執筆篇:見た目の文体

 今回は「文体」についてです。

「文体」という単語自体は知らない方はいないでしょう。

 でもなにをもってして「文体」とするのかの定義がありません。

 私の解釈で「文体とはこういうものだ」というものを二回に分けて投稿致します。

見た目の文体


 小説ではよく「村上春樹氏の文体が嫌い」のように「文体」という言葉が用いられます。

 これは文章においては小説や作文の類いでよく言われるのです。

 新聞や雑誌の記事で「文体」が問われることはほとんどありません。

 では「文体」とはいったいなんなのでしょうか。

 パッと思い浮かぶ人は相当小説が書ける人です。




辞書による文体の定義

 インターネット検索サイト『Google』で「文体」という単語を検索すると次のように出てきます。

 1. 文章の様式。和文体、漢文体、あるいは書簡体など。

 2. 筆者の個性的特色が見られる、文章のスタイル。


 このうち1は現代日本人が読むのは和文体だけですので無視してもいいでしょう。

 2が小説などで言われる「文体」です。

「文章のスタイル」が「文体」ということになります。


 では「文章のスタイル」の「スタイル」が何を意味しているかを再び『Google』で検索してみましょう。

 1. 姿。かっこう。

 2. 様式。型。文体。

 1は「スタイル」には「見た目」が含まれることを意味します。

 2は「文体」と出てきたのですが、「文体」で検索しても「スタイル」という言葉が出てきましたよね。

 堂々巡りです。

 とりあえず「文体」の2は「筆者の個性的特徴が見られる文章の様式」くらいに思っておきましょう。




見た目の文体

「文章のスタイル」には「見た目」が含まれています。

 どんな「見た目」が「文章のスタイル」つまり「文体」を左右するのでしょうか。

 難解な中国古典を読むと「見た目の文体」というものがその書籍の「読みやすさ」「読みづらさ」を左右していることがよくわかります。

 そこで私が個人的に思っている「この書籍は読みやすい」という要素を四つ挙げてみます。

 1. 改行の頻度

 2. 句読点

 3. 漢字とかなの割合

 4 ページの濃さ

 これが「読みやすい」書籍かどうかを分けています。




改行の頻度

 まず「改行の頻度」です。

 一般的に「純文学」私の言う「文学小説」は改行の頻度が低い。

「ライトノベル」は逆に改行の頻度が高いです。

「文学小説」は「時間を止めて」情景や心理描写をふんだんに書きます。

「時間を止める」のでその間は改行ができません。

 改行してしまうと否応なく時間が流れてしまうからです。

「ライトノベル」は物語をサクサクと進めていくために、時間をどんどん進めていきます。

 もちろん改行しなくても時間は流れますが、「一文ごとの時間の流れ具合」と「改行したときの時間の流れ具合」は大きく異なります。

「一文ごとの時間の流れ具合」はほんの一瞬です。

――――――――

 十秒走った。立ち止まると汗がどっと出る。すぐさま呼吸を整え脈拍を測って次のインターバルに備える。

――――――――

 一行に集めてみました。一文が終わるごとの時間の進み具合は、ほとんどが「タイムラグなし」でつながっているのがわかるでしょう。

――――――――

 十秒走った。

 立ち止まると汗がどっと出る。

 すぐさま呼吸を整え脈拍を測って次のインターバルに備える。

――――――――

 今度はすべて改行してみました。

 どうでしょう。

 一行に集めたときよりも、時間の進み具合は長くなっていることがわかると思います。

 また改行が頻繁に行なわれれば、書籍の下の部分に空白が生まれて見た目が軽く感じられるようになります。

 ライトノベルとはこのように「見た目が軽く感じられる」から「Light novel」なのだと解釈できます。

 このように書籍の下の部分に空白が生まれると、「ページの濃さ」が淡くなるのです。




句読点

 小説の「文体」として「句読点」も重要です。

 たとえば読点「、」によっていくつもの文を重文にしてつなげていく。

 それだけでもひとつの「文体」です。

 基本的に重文で三つも四つも読点で延々と文をつなげてしまうのは、「読みにくさ」を漂わせてしまいます。

 一文二十文字程度で句点「。」を小刻みに入れていく。

 これもやはりひとつの「文体」です。

 一文に修飾語をたくさん入れて六十文字も八十文字も句点がない、というのも「読みにくさ」を与えてしまいます。


「読みやすい文章」という部分では読点も句点も適度に用いることが望ましいのです。

 ライトノベルは「読みやすさ」が最優先になります。

 とくに活字に慣れていない中高生が主要層なので、たとえ読めば「面白い」とわかっていても、「読みにくさ」を感じたら次巻以降を買ってもらえなくなるのです。


 あえて「読みにくさ」を狙えば、その書き手独特の「文体」になります。

「文学小説」や「大衆小説」の書き手の中には、あえて「読みにくさ」を狙う人が相当数いるのです。

「文学小説」では「難解でひねりの利いた文体こそが崇高だ」という考えに囚われてしまい、難解な「文体」を好む人が多くいます。

 試しに芥川龍之介賞(芥川賞)や直木三十五賞(直木賞)を獲った書き手の作品を読んでみてください。

 中高生なら投げ出したくなるような「難解でひねりの利いた文体」が横行しています。

 しかも書き手自身はそんな「文体」で悦に入っているのです。

 これでは芥川賞・直木賞を受賞した作品がどんどん売上を落としていく現実も、なんら不思議なことではありません。

「大衆小説」は独特の「文体」を持ったさまざまな書き手が存在します。

 村上春樹氏のように文末をほとんど「〜た。」で統一する書き手がいたり、野坂昭如氏のように「〜、〜、〜、……」と延々と読点を打っていく書き手がいたりします。




漢字とかなの割合とページの濃さ

 小説を読もうとしてページを開いてみた。

 そのとき「黒いな」「濃いな」と思われたら、その書籍とくに小説は売れません。

 そのため、できるだけ画数の多い漢字をひらがなに「ひらいて」いきましょう。

「漢字をひらく」とは「ひらがなに直す」という意味です。

 だからといってすべての漢字をひらがなにすると、それはそれで読みにくくなります。

 漢字は表意文字で、ひらがな・カタカナは表音文字です。

 漢字は視界にちらっと入っただけでその意味が読み手に伝わります。

 この「視界に入っただけで漢字の意味が伝わる」という機能が重要です。

 読み手は書店や小説投稿サイトでの試し読みの際に、まずはページをめくって見開きます。

 そのときにひらがなが圧倒的に多いとなにが言いたいのか伝わってきません。

 絵本や小学1年生の国語の教科書を大きくなってから読むと、文意を理解するのに案外手間取ります。

 逆に『六法全書』や「司法試験の問題集」などを読んでみてください。

 あまりの漢字の多さに「これはパッと見で字義が頭に入ってこない」ということになり、やはり文意を理解するのに手間取るのです。


 漢字が多すぎると、脳で字義をイメージするのが難しくなって「読みにくい」と感じます。

 逆にひらがなが多すぎると、漢字の字義がまったく頭に入ってきませんからやはり「読みにくい」と感じるのです。

 漢字とかなの割合を程よいところで釣り合いがとれるようにしましょう。

 漢字は多すぎても少なすぎてもダメです。

 あなたが「この小説は読みやすかったな」と感じる小説では漢字とかなの割合はどうなっているでしょうか。

 超長編であっても考えていたよりひらがなが多いことに気づくはずです。

 でも漢字の字義を活かせば、とくに速読をしている人には楽しく読んでいただけます。




読みやすい小説

 現在は「読みやすい小説」が求められています。

 少しでも「難しそうだな」と思われたら、その小説は売れないのです。

 だから現在「文学小説」「大衆小説」は販売部数を下げ続けます。

「読みやすい」と思われる「ライトノベル」は右肩上がりです。

 これからもこの傾向は続くでしょう。

 たとえ「文学小説」「大衆小説」でも「読みやすい」と思わせるだけで、読み手はお試しで読んでみたくなります。

 冲方丁氏や西尾維新氏のように「大衆小説」でも「読みやすさ」があれば売れるのです。

 小説投稿サイトは元々「ライトノベル」と相性が良いので「読みやすさ」をまず確保しましょう。

「改行の頻度」「句読点」「漢字とかなの割合」によって、できるだけ見開きの「濃さ」を薄めて適度に「淡い」見た目へ近づけてください。

 そのうえで適切に漢字を用いて、漢字の字義だけで文意が伝わるようにするのです。

 それが「読みやすい小説」につながります。





最後に

 今回は「見た目の文体」について述べてみました。

 人によって「読みやすい」小説は異なりますが、見た目で損をするのだけは避けたほうがよいでしょう。

 見た目さえ良ければ、試し読みを始めてくれます。

 そこからは「本文の文体」の出番です。

 次回は「本文の文体」についてお話致します。

 久しぶりの予告ですね。




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