329.執筆篇:ローファンタジーを書こう
今回はずばり「ローファンタジー」を書くことの意義についてです。
書きやすい「ハイファンタジー」ではなく、あえて「ローファンタジー」に挑戦します。
手に入れられる経験値は桁違いです。
ローファンタジーを書こう
小説投稿サイト『小説家になろう』では「ハイファンタジー」が最も人気です。
なぜこんなに「ハイファンタジー」だらけなのでしょうか。
ハイファンタジーは書きやすい
「ハイファンタジー」は現実世界とつながりがありません。
もちろん「異世界転生」「異世界転移」であれば、ある程度現実世界とのチャンネルはオープンになっています。
そうであっても、物語の基本は異世界で行なわれますので、現実世界の知識がなくても書けるのが「ファンタジー」ジャンルの中でも「ハイファンタジー」なのです。
異世界で物語が起こるから、現実世界のことを知っている必要はありません。
書き手が想像し創造した世界であれば、その世界は書き手が生み出したものであり、その世界の「神」ということになります。
だからよほど設定が破綻しない限り、読み手は「この世界はこんなことが起こるんですね」「この世界にはこんなものが存在するんですね」と肯定的に読んでくれるのです。
「設定が破綻しない限り」と書いた理由はもちろんあります。
いくら書き手にとって「なんでもあり」の世界を創ったとしても、本当に「なんでもあり」だと読み手はワクワク・ハラハラ・ドキドキしません。
だって「なんでもあり」なら、どんな苦境に陥れられても主人公は必ず生還してしまいます。
いえ、たとえ死んだとしても何度でも生き返るでしょう。
まさに無節操の極みです。
そのような作品、あまりないんじゃないかなと思いますよね。
私もそう思いたいのですが、案外多いものです。
「死んでも生き返る」設定なんてそこらじゅうに転がっています。
マンガだとわかりやすいと思いますのでマンガで説明してみましょう。
「死んでも生き返る」の筆頭は鳥山明氏『DRAGON BALL』ですね。
奇跡のアイテム「ドラゴンボール」があるおかげで、「死んでも生き返る」ことができます。
しかものちに「何度死んでも生き返る」と追加設定されているのです。
もう「なんでもあり」状態になっています。
次に宮下あきら氏『魁!! 男塾』でしょうか。
王大人によって「死亡確認」されたキャラが次の戦いでなにごともなく復活しています。
まぁギャグ要素の強いバトルマンガなので、こんなことがあっても皆面白く読んでいましたけどね。
車田正美氏『聖闘士星矢』も相当厄介なマンガですね。
黄金聖闘士と戦っている青銅聖闘士五人が感覚を遮断されながら戦っていたり、命を賭した戦いをしているのに生き残っているとか。
鳳凰星座の一輝に至っては完全に死んだのに生き返ってしまいます。
それも不死鳥「フェニックス」の成せる業なのでしょうか。
小説に話を戻しましょう。
そもそも「異世界転生」そのものが「死んでも生き返る」テンプレートなのですから。
だからこそ、小説を書くのであれば初めのうちは「ハイファンタジー」を禁止にすべきです。
もし「ハイファンタジー」を目指すのであれば、魔法のない世界か、「生き返らせる魔法」のない世界にしましょう。
それだけで緊迫した状況を生み出せ、物語が格段に面白くなります。
ローファンタジーは難しい
『小説家になろう』で「ファンタジー」ジャンルは異世界を舞台にした「ハイファンタジー」と現実世界の延長である「ローファンタジー」に分かれています。
完全にオリジナルな世界を作らなければならない「ハイファンタジー」のほうが難しいのではないかと勘違いする方が多いのです。
実際には現実世界の延長である「ローファンタジー」のほうが難しい。
もしあなたが中高生で、これから『小説家になろう』などの小説投稿サイトで書き手デビューしたいと考えたとします。
SFや推理の知識もないし、魅力的な恋愛や面白い日常を書くだけの人生経験もしていない。
書くなら「ファンタジー」だろうな、と思うわけです。
中高生であれば「ファンタジー」ジャンルを書くことは早々に決定します。
それではなぜ「ローファンタジー」を避けるのでしょうか。
「ファンタジー」とは言っても現実世界の知識が必須だからです。
中高生が取材までして「ローファンタジー」を書くとは考えづらい。
だから書くのなら「ハイファンタジー」だな、と誰に言われるでもなく、皆がそちらへなびきます。
そのため小説投稿サイトとくに『小説家になろう』の作品は「ハイファンタジー」だらけになるのです。
『小説家になろう』で「ハイファンタジー」を書く。
それだけですでにテンプレートなのです。
皆が書くから自分も書く。
動機としてはそれもありです。
ですが、どうせ書くなら身になる小説を書いてみませんか。
現在日本ならインターネットでなんでも検索できる時代です。
だからこそ「ローファンタジー」を書いてみましょう。
「ローファンタジー」は現実世界の知識がないと書けません。
「ファンタジー」と言ってもごまかしが利かないのです。
だからこそ「ローファンタジー」を書くことで得られる経験値は「ハイファンタジー」の比ではありません。
そろそろ「ローファンタジー」を書いてみたくなったのではないでしょうか。
競争率が低い
「ローファンタジー」は「ハイファンタジー」と比べて競争率が著しく低いのです。
投稿作品は桁がひとつ異なります。
しかも「ハイファンタジー」専門の読み手は、面白そうなら「ローファンタジー」でも進んで読んでくれるものです。
「ハイファンタジー」と「ローファンタジー」を遮る壁は思いのほか低い。
だから現実世界の知識が必要となる「ローファンタジー」は、苦労してでも書くべきなのです。
桁がひとつ異なるのであれば、単純にランキングの上位に載れる可能性も十倍高くなります。
だから「ローファンタジー」に挑戦すればランキングに載りやすくなりますし、注目も浴びるようになるのです。
書き手のネームバリューを高めてから「ハイファンタジー」を書いても遅くはありません。
というより、いきなり「ハイファンタジー」を書いても、あなたのフォロワーさんがいないのであれば、いかな傑作だろうと誰も読んではくれないのです。
将来的には「ハイファンタジー」を書いて名を売りたいとします。
ですが現時点であなたにフォロワーさんがいません。
どこかからフォロワーさんをかき集めてくる必要があります。
最もよいのが「ローファンタジー」です。
同じ「ファンタジー」ですので親和性が高く、いつでも乗り換え可能なのが利点といえるでしょう。
他には「恋愛」ジャンルです。
小説投稿サイトにおいて無料で小説を読むのは中高生が多いのにも理由はあります。
中高生の関心事といえば大きく分けて受験と恋愛です。
受験は戦いであり「ファンタジー」との相性がいい。
第二次性徴期を経験して恋愛にも関心がありますから、「ファンタジー」ジャンルであっても恋愛要素はぜひとも取り入れてもらいたいところです。
投稿ジャンルが「ハイファンタジー」「ローファンタジー」であるか、「異世界恋愛」「現実世界恋愛」であるかの違いはあります。
しかしその境界はきわめて薄く破れやすいのです。
であれば投稿数の少ない「恋愛」ジャンルで投稿するのも一手だと思います。
最後に
今回は「ローファンタジーを書こう」ということについて述べてみました。
とくに知識がなくても書けるのが「ハイファンタジー」の利点です。
しかしそれだけの理由で「ハイファンタジー」を書くのはオススメしません。
苦労はするでしょうが同じ「ファンタジー」を書くにしても「ローファンタジー」を書いてみましょう。
苦労したぶんは必ず身になります。
「ハイファンタジー」にも「現実味」を持たせることができますので、「ハイファンタジー」一本で行きたい方でも、一作は「ローファンタジー」を書いておくべきでしょう。