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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
執筆篇〜わかりやすく書くための心得
326/1500

326.執筆篇:メリハリをつける

 今回は「起承転結」に「メリハリをつける」ことについてです。

 四つの要素がすべて同じ割合にするとどうしても展開が物足りなくなってしまいます。

 物語に緊張感や躍動感を与えるには割合を変化させることが重要です。

メリハリをつける


 あなたが書きたいのはどんな場面でしょうか。

 主人公と「対になる存在」との戦闘シーン、恋愛の告白シーン、謎解きシーンなど。

 主に「佳境(クライマックス)」を重点的に読んでもらいたいものですよね。




物語のメリハリ

 物語のメリハリとは、読み手に読んでほしいところを分厚く書き、それ以外のところを薄く書くということです。

 すべてのシーンで等しい描写をしていると、どのシーンが重要なのか読み手にはさっぱりわからなくなります。

「起承転結」でいえば、前フリ「起」が異常に長かったり、結末「結」が延々と続いていたりすることがあってはなりません。


 最も盛り上げたいのは「佳境(クライマックス)」つまり「起承転結」の「転」です。

佳境(クライマックス)」というくらいですから、ここで読み手の心を強く掴まなければなりません。

佳境(クライマックス)」の描写が薄いと、「で、この小説のどこが面白いの」という感想しか出てこなくなります。

 それではそこまで文章を紡いできた意味がなくなるのです。


 そして次に盛り上げたいのは「起承転結」の「承」になります。

「承」は設定を説明する「起」と「佳境(クライマックス)」を描写する「転」を結ぶ重要なパートです。

「起」があってそこからどうやって「転」まで読み手の期待を高め続けて飽きさせずに導いていくのか。「承」が負う役割はとても大きなものなのです。

「承」の描写が薄いと、読み手は「なんで『転』でこんな展開が起こるんだよ」と「書き手のご都合主義」を読まされたような感覚に陥って憤慨します。

 せっかく「佳境(クライマックス)」までたどり着いたのにその場で読むのをやめてしまう人も出てくるほどです。

 どうすれば「佳境(クライマックス)」の状況までお膳立てできるのか。

「承」にはそれが求められています。




冒頭は予兆を感じさせる

 とくに短編小説の場合、冒頭を「佳境(クライマックス)」とは無関係なことから始めてしまうと確実に枚数が足りなくなります。

佳境(クライマックス)」の展開を予感させるような書き出しをする必要があるのです。

『シンデレラ』も書き出しから主人公シンデレラの不遇さと「対になる存在」である王子様のことに触れていますよね。

 この物語を「恋愛小説」として読んだ場合、明確に「佳境(クライマックス)」の予兆です。

「不遇さ」と「王子様」を出したことで「不遇なシンデレラは王子様とどうなるんだろう」と読み手はイメージし始めるのです。

 そして男性でも女性でも、読み手は小説を読むとき基本的に「ハッピー・エンド」を期待しています。

 その意味で読み手は「佳境」だけでなく「結末」まで予想しているのです。




つながりを良くする

 そのためには、まず「起」から「転」までを自然な流れでつなげて、淀みなく流してやる必要があります。

佳境(クライマックス)」である「転」の出来事が唐突感を与えないようにするにはどうするか。書き出しである「起」からすでにその出来事についての情報を読み手に与えておくのです。

 もちろん「承」で「転」の出来事が発生する必然性も与えてあげましょう。

 そうすると「起」から「転」までが自然な流れでつながるようになります。

 その流れを受け継いだまま「結」を書くことで、首尾一貫した小説に仕上がるのです。


 首尾一貫した小説であれば、読み手が「予想していた『佳境』と『結末』」にたどり着いたのかが判断できます。

 もちろんバッド・エンドにして予想を裏切ってもかまいません。

 ですが最初からバッド・エンドありきで書くと、読み手はカタルシスを感じないのです。

 ハッピー・エンドの流れに乗りながら、ある時点で突如としてバッドエンドへ流れが変わるかもしれないと思わせる。

 だから読み手はその「転換点」に差しかかると「これからどんな展開になるんだろう」と「期待」してしまいます。


 田中芳樹氏『アルスラーン戦記』の第15巻(完結が第16巻です)であのような衝撃的な出来事が起こる。

 すると読み手は「これからどんな展開になるんだろう」と先が読みたくて仕方がなくなるのです。

 最近だとこれが最も「転換点」をうまく活用した「ファンタジー小説」の例ではないでしょうか。




じっくり読ませたいところを分厚く

 じっくりと読んでほしいところ味わってほしいところは描写を分厚くしましょう。

 小説であれば「承」の描写をとにかく分厚くするのです。

 もし冒頭から描写を分厚くしてしまうと、読ませたい意図があった「展開」と「佳境(クライマックス)」に枚数が割けません。

 そうなると読み手としては「この小説はなにを読ませたかったのか」に疑問を持つようになります。


 冒頭でシンデレラの不遇さを分厚く描写してしまい、肝心の王子様とのダンスがとても薄っぺらくなってしまったら。

『シンデレラ』という物語は彼女の不遇さを描いた作品である、という読後感を読み手に与えてしまうのです。

 あくまでもシンデレラと王子様が結ばれるまでの過程を読ませるのが、この作品の目的でしょう。

 であれば不遇さはあくまでも冒頭での「設定」として書くにとどめ、さっさと王子様とのダンスまで漕ぎ着けるようにするべきですよね。

 実作でも不遇さを書いたすぐ後に日が改まり、継母や義姉たちが舞踏会に出かけていきます。

 つまりシンデレラが屋敷に一人ぼっちになるのです。

 なにかが起こるとしたらここですよね。

 当然のように「なにかを起こす」存在、つまり「魔女」が登場します。

 シンデレラを淑女に変え、カボチャの馬車でシンデレラを舞踏会場へ送り出すのです。

 ここまでを丁寧に書いて、肝心の王子様とのダンスまで持ち込みます。

 それがどんなに嬉しい出来事だったのか。

「展開」と「佳境(クライマックス)」に描写を集中させているのです。

 読ませたいのはまさに夢にまで見た「王子様とのダンス」つまり「佳境(クライマックス)」であることが明確になっています。

 そのぶん「結末(エンディング)」である「ガラスの靴合わせ」はさほど描写せず、靴の持ち主がシンデレラであることが明らかとなるのです。




三分の二の法則による分析

「起承」で「三分の二」を用いるわけですが、前述したとおり冒頭で描かれる不遇さはすぐに説明を終えています。

 そしてシンデレラがひとりで留守番をしているところに魔女が現れるのです。

 魔女は彼女を淑女に変え「午前0時を告げる鐘の音が鳴り終われば魔法は解ける」という「伏線」を張ります。

 このシンデレラと魔女とのやりとりは物語の要であるため、分厚く描いているのです。

 そして「佳境(クライマックス)」である「王子様とのダンス」は「午前0時を告げる鐘の音」が鳴り終わるまで続くことになります。

 そのぶんの割を食う形で「結末(エンディング)」がさっさと終わってしまうのです。

 まぁ王子様がガラスの靴の持ち主を捜し始めたところから「ハッピー・エンド」であることが明確でしたので、「結末(エンディング)」にそれほどの重要性はなかったと思います。

「起承転結」を分量で分けると「10%:50%:30%:10%」くらいです。

 もし「ガラスの靴合わせ」を丹念に分厚く書いてしまうと、割合がほぼ平均化してしまって満足感は薄れます。

「結」はできる限りすっきりとしたほうがいいでしょう。

「後日談」が長い書き手は、登場人物に愛着がある人であることが多いのです。

 登場人物の「その後」をどのくらい書くかで「この書き手は自己満足でこの小説を書いていたのか」と見透かされてしまいます。

「後日談」はたとえば「外伝」の形で書けばよいのです。

 本編の「結」ではあくまでも「主人公がどうなった」だけでかまいません。





最後に

 今回は「メリハリをつける」ことについて述べてみました。

 分厚く書くべきところと、薄く書くべきところ。

「あらすじ」の段階からそれを見極めておけば、余計な書き込みを減らすことができます。

 この小説でこのエピソードやシーンはどれだけの意味を有しているのか。

 それがしっかりと練られている「箱書き」であれば迷うことはないはずです。




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