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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
執筆篇〜わかりやすく書くための心得
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321.執筆篇:多面的に書くことで存在感を増す

 今回は「人物の多面性」についてです。

 長所と短所は裏返し。

 欠点とギャップは意図的に設定します。

多面的に書くことで存在感を増す


 小説の登場人物はえてして一面的な性格をしています。

「怒りっぽい人」や「優柔不断な人」は物語内では基本的に「怒りっぽいだけの人」「優柔不断だけの人」として書かれるのです。

 ですがそれだと人物に厚みを感じませんよね。

 それは一面だけでしか人物を評価していないからです。




長所と短所

 たとえば短所が「優柔不断」な性格だとします。

 裏返せば「思慮深い」性格で長所とも言えるのです。

 短所が「怒りっぽい」のなら長所は「感情豊かな」性格だとも言えますね。

 長所と短所はまったく同じ性質のものを良いようにとらえるか悪いようにとらえるかの違いだけです。

 つまり「表裏一体」「裏返し」になります。


 仮に陸上競技で百メートルを十秒で走るけど、マラソン完走には四時間半かかるとします。

 瞬発力は問題ありませんが持久力がありません。

 これは筋肉の性質によるところが大きいのです。

 瞬発力が高い筋肉は持久力がありません。

 逆に持久力が高い筋肉は瞬発力に乏しいのです。

 だから筋肉にも長所と短所が現れます。


 もちろん多くの人がそうであるように、「長所と短所」はひとりにひとつだけではないのです。

 必ず複数の「長所と短所」が存在します。

「優柔不断」だけど「筋肉隆々」な人や、「怒りっぽい」けど「繊細」な人などその組み合わせはさまざまです。

 だからこそ登場人物の「長所と短所」はひとりとして同じ人などいません。

 もし同じ「長所と短所」の組み合わせになる人物がいたとすれば、蛇足に過ぎます。

 小説は「省く」芸術です。

 同じ「長所と短所」の組み合わせになるのであれば、その人たちをひとりの人間に集約して人数を「省く」ようにしましょう。




欠点

「長所と短所」は同じものの裏表です。

 対して「欠点」は「長所と短所」とは異なります。

 単純に「ここが悪い」というようになにかが欠けているのです。

 たとえば「記憶力が悪い」「ひらめくのが鈍い」「他人の心や周りの空気が読めない(これは長所・短所になりえますかね)」といった類いが「欠点」に当たります。

「欠点」を持たない人はまずいません。

 ほとんどの人が「欠点」を持っているのです。

 小説の登場人物にも当然「欠点」を持たせましょう。

 とくに主人公には明確な「欠点」があると、読み手は親しみを覚えて感情移入を誘えます。

 中には「完全無欠のヒーロー」もいますが、どんな戦いにも勝ってしまうためバトルの緊迫感が薄くなるのです。


 鎌池和馬氏『とある魔術の禁書目録』の主人公・上条当麻は能力度としてはレベル0ですが、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を有しています。

 そのため、どんなに強大な敵が現れても、敵の能力をすべて無効化してぶん殴るという物語になっているのです。

 それでも面白く読めるのは『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が発動するタイミングが佳境だから。

 ドラマ『水戸黄門』も三葉葵の印籠を取り出すのは決まって物語終盤の立ち回りの後、つまり佳境(クライマックス)の直後になります。

 上条当麻は水戸光圀公だったわけですね。


 堀越耕平氏『僕のヒーローアカデミア』のNo.1ヒーローであるオールマイトは、バトルシーンだけを見れば「完全無欠のヒーロー」そのものです。

 ですがそれはあくまでも戦っている間の話で、日常シーンでは古傷によって実力が衰えていくさまが描かれています。

「完全無欠のヒーロー」でありながらも「古傷」という「欠点」を抱えている。

 だから読み手はオールマイトに親しみを覚えるのです。


 田中芳樹氏『銀河英雄伝説』の主人公ラインハルト・フォン・ローエングラムは「軍事と政治の天才」という「長所」がありますが、「病弱」という「欠点」を有しています。

 ちなみに「軍事と政治の天才」という「長所」は裏返せば平凡な生活を送ることができない「短所」にもつながるのです。

 ラインハルトに色恋沙汰が発生しなかったのも「短所」の影響と言えます。




ギャップ

 悪人だと思っていた人物が慈善事業をしていたり、存在感の薄い人物があるとき突如として重要人物になったり、能無しと思われていた人物が意外な能力でピンチを克服したりする。

 たったそれだけのことでその人物は魅力的になり、物語に厚みが生まれてきます。


『銀河英雄伝説』に登場するハイドリッヒ・ラングは銀河帝国で「双璧」のひとりと称されたオスカー・フォン・ロイエンタール元帥に嫌疑をかけてラインハルトとの仲を裂こうとしました。

 ですが、報奨金を得ると全額慈善事業に寄付をしたり良き家庭の父であったりする人物でもあったのです。

 小狡(こずる)いだけの男にも人情があるのかという点でラングがただの「野心家」ではなくなります。


 水野良氏『ロードス島戦記』で主人公パーンの冒険パーティーに盗賊のウッドチャックがいます。

 彼は「盗賊」ということもあって聖騎士を目指すパーンやファリス教神官のエト、エルフのディードリットなどのようにヴァリス王国の王女を救った仲間なのにひとり蚊帳の外に置かれてしまいます。

 そんな日陰キャラだったウッドチャックですが、物語の最後に「灰色の魔女」カーラからサークレットを奪い取るという重要な役割を任せられるのです。

 スキを突いてカーラから見事にサークレットを奪い取ったウッドチャックですが、カーラの知識に興味を覚えてサークレットを破壊することなく自らの額に装着しました。

 ウッドチャックはカーラの意志に乗っ取られることになり、以後「ウッドチャック・カーラ」として歴史の闇に潜ることになったのです。


 渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の主人公・比企谷八幡は周囲からなんの取り柄もない人物と思われていました。

 しかし奉仕部に強制入部させられると、意外な能力を発揮して難題を次々と解決していくのです。


 上記四名はいずれも「ギャップ」があり、それによってより魅力的なキャラクターに映ります。





最後に

 今回は「多面的に書くことで存在感を増す」ことについて述べてみました。

 人には「長所と短所」があります。

 そして「欠点」があり「ギャップ」があるのです。

 これらを組み合わせることで物語の中で特有の「キャラクター」が生まれてきます。

 まったく同じ要素を持っている人物は必要ありません。

 ひとりにまとめてしまいましょう。




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