316.執筆篇:お手本を見つける
今回は「お手本探し」です。
皆様が「小説が書きたい」と思ったのは、なにか小説を読んだからではないでしょうか。
中には「自分が読みたい小説がないから」という強者もいるはずです。
でも大半は「この作品のような小説が書きたい!」という理由だと思います。
私の場合を元にしてまとめました。
※結果的にコラムNo.42「手本を探そう」の概要になりましたね。
300日続けてくると、以前のものとかぶりやすくなるので、同じものになった場合は素直に謝罪いたします。
お手本を見つける
ただ文章を書くだけでは「小説」とは呼べません。
物語の情報を過不足なく提示し、感情を揺さぶる描写が書いてあること。
それが「小説」の最低条件です。
お手本を見つける
あなたが「小説を書こう」と思ったのはなぜでしょうか。
人によっては「文字を書くだけでお金になるから」という打算が働いているかもしれません。
ですがたいていの人は「この小説は面白い! こんな小説を自分でも書いてみたい! 書いた小説をできる限り多くの人に読んでもらいたい!」という思いではないでしょうか。
もちろん「その結果としてお金になればいいな」という打算も働きます。
ではあなたが「この小説は面白い!」と感じた小説はなんでしょうか。
皆様にも必ず一作はあるはずです。
思い出してみてください。
「文豪」の小説かもしれません。「純文学」私のいう「文学小説」かもしれません。ライトノベルかもしれませんし、小説投稿サイトの作品かもしれません。
誰のどの作品か思い出せましたか?
実は私自身「これ!」という作品がありませんでした。
「文章を書いてみたい」と思ったのも中国古典『孫子』によるものです。
さらに遡って「この物語が面白い!」と最初に感じたのは養護施設にいた頃は『アーサー王と円卓の騎士』、小学生の頃は児童文学書版の『シャーロック・ホームズの冒険』『怪盗ルパン』、中学生の頃は『ギリシャ・ローマ神話』だったと記憶しています。
このあたりの記憶があまり定かではないので断言はできないのですが、おそらくこの四作が根底にあるはずです。
『アーサー王と円卓の騎士』の知識が根底にあるため、私は戦記ものを書くのが好きなのだと思います。
「剣と魔法のファンタジー」への興味もおそらく同作からでしょう。
円卓の騎士たちは「剣」で戦いますし、マーリンや湖の妖精などは「魔法」を使います。
だから大人になっても「剣と魔法のファンタジー」には食指が動くのでしょう。
では皆様の「この小説は面白い!」と感じた作品はなんでしたか。
そこにあなたの強みが隠されています。
ライトノベルに限るとして笹本祐一氏『エリアル』、水野良氏『ロードス島戦記』、竹川聖氏『風の大陸』、神坂一氏『スレイヤーズ』、吉岡平氏『無責任艦長タイラー』、あかほりさとる氏『爆れつハンター』、火浦功氏『未来放浪ガルディーン』といった草創期の作品を挙げた方も多いのではないでしょうか。
草創期の作品は大衆小説としての形をとっているため、今の「ライトノベル」とは少し異なっているのが特徴です。
今の「ライトノベル」を代表するのは川原礫氏『ソードアート・オンライン』『アクセル・ワールド』、谷川流氏『涼宮ハルヒの憂鬱』、佐島勤氏『魔法科高校の劣等生』、大森藤ノ氏『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』、渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』、伏見つかさ氏『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』『エロマンガ先生』、白鳥士郎氏『りゅうおうのおしごと!』といったものを挙げた方もいると思います。
小説を書きたければ、まず「お手本」を探してください。
「お手本」を分析しなければ、その面白さの源泉は掘り当てられません。
あなたにとって「お手本」となるべき作品は一作しかないかもしれませんが、できる限り複数持つべきです。
複数あることによって、重なる部分が「あなたの強み」であることを理解しやすくなります。
ですので「お手本」は複数探してみてください。
必ずあなたの心に引っかかる作品は複数あるはずです。
完成形を模索する
「お手本」は複数用意できたでしょうか。
ペンや鉛筆や蛍光マーカーを入れていきますので、できれば「紙の書籍」を新たに買ってください。
手に入りにくい作品であれば、該当部分をPCに書き写していつでも検証できるようにしておきましょう。
ではいよいよ「お手本」を検証していきます。
まず頭から最後まで通しで読んでください。
複数巻に跨る小説の場合は第一巻だけで結構です。
読み終えたら、あなたの記憶に残った場面を探してみましょう。
「この作品はこの場面でぐっとくるよなぁ」と思うところです。
そこにペンや鉛筆やマーカーで線を引いていきます。
私は「剣と魔法のファンタジー」の「戦闘シーン」に心惹かれます。
「呪文の詠唱」のシーンは読み飛ばして効果だけを楽しんでいます。
だから「呪文」の文言は極力書きません。
自分で心に響かないのに、さも「これがこの呪文の文言だ」と書くのが嫌なのです。
主人公が盾で相手の攻撃を受けて、剣撃を繰り出す様子。
また政略的・戦略的・戦術的な駆け引きによる状況変化といったものを読むと「血がたぎり」ます。
なので田中芳樹氏『銀河英雄伝説』『アルスラーン戦記』は私にとってどストライクな作品です。
次いで水野良氏『ロードス島戦記』『魔法戦士リウイ』あたりの勇者ものが続きます。
そうなると、私の小説の「完成形」は田中芳樹氏と水野良氏のミックスだということが見えてくるのです。
「剣と魔法のファンタジー」で政略・戦略・戦術を土台に、個人の勇者的な働きを読ませるような小説、というのが狙いどころと言えます。
しかし、ピンポイントでそのような小説というのはまずありません。
勇者的な物語となれば、政略・戦略・戦術を打破するのが鉄則だからです。
政略・戦略・戦術を読ませようとすれば、個人の勇猛さは組織の律に反します。
この水と油をどのように折り合わせるかが、私の小説の課題だと言えるでしょう。
政略・戦略・戦術について前もって『兵法の要点(第一.〇版)』という形で発表しているのも、ひいては「私の小説」を読ませるための布石です。
また『兵法の要点』は書き手の皆様に「兵法」を中心とした中国古典の知識を知っていただくための入り口でもあります。
「自分の小説に政略・戦略・戦術を加えたいな」と思ったときに活用していただきたいです。
このようにして私の「完成形」は見えてきました。
では皆様の「完成形」はわかったでしょうか。
ご自身がどのような場面に沸き立つのか血がたぎるのか。
大好きな小説からそのような場面を冷静に見極めていきましょう。
最後に
今回は「お手本を見つける」ことについて述べてみました。
「小説を書きたいんだけど、書き方がわからない」という方は多いのです。
そんな方に「どんな小説を書きたいのですか?」と問うと「自分の考えた物語が書きたいんです」と返ってきます。
それでは「どう書けばいいのか」わからないのも当然です。
世の中には数多の小説があります。
図書館でもいいので、とにかく小説をたくさん読んで「お手本」にできるような小説を見つけましょう。
間違っても図書館の本に線を引かないでくださいね。
絵画もそうですが「まずは模写から始める」のが創作の第一歩です。
「この作品の文章の書き方が好きだな」「この作品のストーリーが好きだな」というようなものをどんどん増やしていきましょう。
その最大公約数に「あなただけの小説」があります。




