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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
執筆篇〜わかりやすく書くための心得
311/1500

311.執筆篇:絞り込んだほうが読まれる

 今回は「読者層を絞り込むこと」についてです。

 読んでほしい層を想定していないまま書くのは論外です。

 ですが「百万人に読んでもらいたい」小説を書くのは難しい。

 とくに小説投稿サイトでは「百万人に読まれる小説」なんて書けません。

 まずは「百人」を想定してみましょう。

絞り込んだほうが読まれる


 小説を書く以上、できるだけ多くの人に読んでもらいたい。

 この思いは書き手であれば誰もが持っているものです。

 ですが、どうすればより多くの人に読んでもらえると思いますか。




間口を広げると

 まず思いつくのが「間口を広げる」ことだと思います。

 小説という家に入ってもらうには、戸口が大きいほど一度にたくさん入ってくれるはずです。

 だから小説の「間口を広げる」ことで、より多くの人に読んでもらえるのではないか。

 多くの書き手が「勘違い」であることに気づいていない重大な問題です。


 たとえば「この作品は中学生から老人まで男女を問わず読んでもらえる小説です」と喧伝します。

 これで本当に中学生から老人まで男女を問わず読んでもらえたら、ざっと八千万人くらいは潜在的な読み手がいることになりますよね。

『小説家になろう』でアカウントを持っている人は百万人以上ですから、ざっと百万人に読んでもらえる小説です。

 ではこういう小説は実際のところ、どれだけの人に読まれると思いますか。

「そりゃ百万ユーザーに向けた作品なのだから百万人が読んでくれるに違いない」

 違います。

 百万人に向けて書いた小説というのは「百万人の最大公約数をテーマに据えた漠然とした小説」だということです。

 仮に百万人が読んだとして「これは面白い!」と手放しで褒めてくれる人は稀だと思います。

『小説家になろう』の「百万人に向けて書いた小説」は百万人が読むことなど絶対にありえません。

『小説家になろう』で平日18時00分に予約投稿されている連載小説の数をご存知ですか。

 定点観測で追いかけているわけではないのですが、だいたい連載中の長編小説だけで170〜200本はあります。

 仮に「百万人に向けて書いた小説」であっても、18時00分予約投稿すればあっという間に検索一覧の10ページぶんの中に放り込まれるのです。

 読み手が「百万人に向けて書いた小説」を探し出して読み始めるまでのタイムリミットは一時間です。

 一時間後には19時00分予約投稿の波がやってきます。

 六十分間に仮に180本の小説のあらすじをすべてチェックするとしたら、1分間に3本のあらすじをチェックできるにとどまるのです。

 では「百万人に向けて書いた小説」は読み手が必ず読んでくれるものでしょうか。

 まず物理的に考えて六十分に180本のあらすじをすべてチェックして、その中から「これなら読んでもいいな」と思える小説に出会うことは稀です。

 とくに「百万人に向けて書いた小説」というものにはテンプレートが存在しません。

 要素があれば手当たり次第に取り入れて、ごった煮状態の小説になるのがオチです。

 そんな小説が面白いと思いますか。

 ウケを狙って「男主人公」と「女主人公」のW主人公体制にして、「主人公最強」と「チート」を付けて、「悪役令嬢」も登場させて、ついでだから「異世界転生」ものにしてしまおう。

 こんな小説、あらすじを読んだだけで「これは面白そうだ」と思えますか。

 私は「なんのこっちゃ」と感じて頭の片隅にとどめることなくスルーするでしょうね。


 間口を広げようとなんでもかんでも盛り込んでしまったがために内容が漠然とし、あらすじを読んだだけではよくわからない小説というものが世の中にはたくさんあります。

 しかもたちが悪いことに、そういう作品を書いた人ほど「これだけサービスしているのになんで誰も読んでくれないんだよ」という感想を抱くものです。

 「できるだけ多くの人に読んでもらいたい」という願望をここまでこじらせてしまいます。

 「間口を広げる」ことが愚策であることの証です。




徹底的に絞り込む

 では小説投稿サイトでより多くの人に読んでもらうにどうすればよいのでしょうか。

「間口を広げる」の反対です。

 つまり「小説の設定を可能な限り絞り込み」ましょう。

『小説家になろう』なら「ハイファンタジー」だけで全体の六割ほどの作品数があります。

 そこに「男主人公」なのか「女主人公」なのかを明確にし、「異世界転生」「異世界転移」ならそれもチェックし、「俺TUEEE」「チート」「主人公最強」「最強」といった「キーワード」を必ず付けます。

 これだけ絞っても全体の25%ほどが同じ状態のはずです。

 もっと絞り込みましょう。

「ハイファンタジー」だとたいてい「魔法」が登場しますよね。なら「魔法」の「キーワード」を入れましょう。

 エルフは登場しますか。登場するなら「エルフ」の「キーワード」を付けます。

 ドワーフは登場しますか。登場するなら「ドワーフ」の「キーワード」を付けるのです。

「ハイファンタジー」なんだけど宇宙船が出てくるですって? なら「宇宙船」も「キーワード」にしましょう。

 魔族を召喚して戦うのであれば「魔族召喚」なんていう「キーワード」もいいですね。

 このようにどんどん「あらすじ(キャプション)」や「キーワード」に要素を追加していってください。

 すると読み手が指定する「キーワード」次第で百タイトル程度が残るだけの状態まで持っていくことができるようになります。

 ここまで「間口を狭めて」勝算はあるのでしょうか。


 実は絞りに絞ったほうがニッチな読み手の食いつきはよくなります。

「間口を広げる」と多くの読み手に「そこらにあるのと同じ小説ならうちにもありますよ」と言っているだけなのです。

 あなたが書き手である必要性のない作品、つまりいくらでも代替可能な小説ということになります。

 対して「間口を狭める」と不特定多数の読み手が「今日の気分としてはこんな小説が読みたいな」とキーワード検索にさまざまな条件を放り込んでくるのです。

 その中から読み手が「あらすじ」を読んで「これは面白そうだ」と感じてくれれば、確実に作品を読んでもらえます。


「百万人」すべてが読みたがる小説というものは残念ながら存在しません。

 でも「百人」が読みたがる小説というものは確実に存在します。

 最初は「百人」を相手に小説を書くべきです。

「せっかく小説を書くからには、百万人に読んでもらってたくさん評価されたい」と思うのが小説を書き始めたばかりの書き手の心理でしょう。

 ですが残念ながら「百万人」を相手にした小説ほど、誰の心にも響かない小説はありません。

 もし「百万人の心に響く小説」を書く方法があるのだとすれば、誰に教えるでもなく私自身がそうやって小説を書いているはずです。

 でも私はそんな小説を書いていません。

 つまり「百万人」を相手にしようとすること自体に無理があるのです。

 でも「百人」を相手にしようとするのなら話は別。

「百人の心に響く小説」というものは確実に存在します。

 ジャンルを絞りに絞ってピンポイントで攻めるのです。

 できればあなたの得意なジャンルならなおよい。

 推理小説が好きなら推理小説で勝負しましょう。「ハイファンタジー」と比べて競争相手も少ないので作品の内容次第で読み手をごっそりかっさらうこともできます。


「ローファンタジー」ものとしてたとえば「吸血鬼で日光に当たると灰になるんだけど、どうしても昼の街を闊歩してみたいからとAmazonで買った遮光スーツを着込んでひもすがら街を徘徊する主人公が、ふと脇道に視線を向けると大勢の黒スーツの男性たちに囲まれている美少女を見つけ、男性たちを倒して美少女の血を吸おうと思ったら実はシスターで……」

 ここまでピンポイントに絞り込んでもまったく問題ありません。

 ここまでの「企画」を読んでみて「これ小説にしたら面白くなりそうじゃん」と思えたなら「エピソード」を追加して「あらすじ」を創ってみましょう。

 そこら中にありそうな設定をもとに、絞り込む要素をどんどん投入していくことで、あなたの「オリジナル小説」として受け入れられる作品に仕上がります。





最後に

 今回は「絞り込んだほうが読まれる」ことについて述べてみました。

「百万人に読ませたい小説」と「百人に読ませたい小説」があります。

 ビッグヒットが出るとしたら「百万人」のほうでしょうが、小説投稿サイトでは「百人」のほうが読まれるのです。

 なぜなら「百万人」は他の書き手も書いています。

 しかし「百人」はほとんど書かれていません。

 需要がまったくないわけではないのです。

 読み手の絶対数が少なそうだから、書き手が皆避けてきただけ。

 実際に投稿してみれば、それなりに評価されます。

 それなのに「百人」は書かれなくなったのです。

「百万人」を狙いに行って百人が反応しただけで終わる小説と、「百人」を狙いに行って百人が反応して終わる小説があります。

 どちらも「百人」を獲得していますが、前者は想定した読み手の1万分の1しか反応されなかったのに対し、後者は読み手の全員が反応を示してくれたのです。

 書き手としてどちらが「良い結果」と言えるのでしょうか。言わずもがなかもしれませんね。

 であれば「百人に読ませたい小説」を書くべきだと思います。




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