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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
執筆篇〜わかりやすく書くための心得
302/1500

302.執筆篇:テーマとなりうるもの

 今回はたびたび述べてきた「テーマ」についてです。

 代表的なものとして四つ挙げました。

テーマとなりうるもの


 人は社会に所属する生き物です。

 国際情勢・戦争・国内政治・経済・経営・職業といった社会的な影響を受けます。

 人には日常を取り巻いている現実があるのです。

 家族・友人・知人・隣近所との付き合い・学校・部活動などの影響を受けます。

 そして人は心の中でなにかを空想しているものです。

 将来の夢であったり理想とする自分の姿であったり、内面からの影響を受けます。

 人が生きていると分岐点にたどり着きます。

 どの分岐を選択するのかでその後の人生は多大な影響を受けます。




社会的な影響

「テーマ」として「社会的な影響」を取り上げると、ひじょうにスケールの大きな小説に仕上がります。

 社会的な「テーマ」をショートショートや短編小説などで訴えるのでは、見合ったスケールを確保できません。

 最低でも中編小説、できれば長編小説や超長編の連載小説の形で書きたいところです。

 たとえば「戦争」における「戦場での生と死」を「テーマ」にしようと思ったら、単行本四、五冊は必要になります。

「戦争」といえばレフ・トルストイ氏『戦争と平和』がその筆頭とされています。

 帝政ロシア軍とナポレオン軍との戦いを描いた小説です。

『Wikipedia』によると1,225ページといいますから、単行本換算で四冊ぶんの分量があります。

 田中芳樹氏『銀河英雄伝説』は正伝だけで単行本十巻ですし、『アルスラーン戦記』は十六巻です。比較的短い『タイタニア』でも五巻を費やしているのです。

 田中芳樹氏の作品で単行本一冊の「異世界転移ファンタジー」である『西風の戦記ゼピュロシア・サーガ』も「戦争」を描いています。でも「テーマ」は現実世界の主人公二人の「葛藤」に置いているので、あくまでも「異世界転移ファンタジー」なのです。

「戦争」から間接的に影響を受ける作品として「冒険者」が主人公の水野良氏『ロードス島戦記』『魔法戦士リウイ』が挙げられます。『ロードス島戦記』は本伝だけで七巻、『魔法戦士リウイ』は〇巻を含めれば十巻を費やしているのです。『新ロードス島戦記』や『魔法戦士リウイ ファーラムの剣』とさらに長く連載が続いた人気シリーズとなりました。

「戦争」と「学園もの」を融合させたライトノベルとして賀東招二氏『フルメタル・パニック!』は本編が「戦争もの」で、短編集が「学園もの」という二軸展開をしたきわめて稀有な作品です。

「戦場での生と死」を描いたライトノベルの近年傑作として川原礫氏『ソードアート・オンライン』が挙げられます。とくに最初の世界である「アインクラッド編」は「ゲームで死ぬと現実でも死んでしまう」という、まさに「戦場での生と死」について真っ向から取り組んだ意欲的な作品です。


 中編小説の上限を使って書いた拙著『暁の神話』は、「戦争」を駆け足で描写したため「テーマ」の深掘りができなかった「失敗作」といえます。

 そこで『暁の神話』は再構成して上限フリーの連載小説に改めて執筆することを決めたのです。

 これで「戦場での生と死」をもっと深く掘り下げられ、物語のスケールが当初の意図通りになります。

 本コラムを執筆しながら、あらすじ⇒箱書き⇒プロットと進めているので、牛歩であることは事実なのですが。

 私が構想する『神話』『伝説』『戦記』『物語』シリーズ四部作の第一弾である『神話』なので、納得のいく作品にしたいというエゴがありますね。




日常的な影響

「テーマ」として「日常的な影響」を取り上げると、読み手の共感を最も得やすくなります。

 こちらも基本的に四、五巻を超える連載小説が多いのです。

 人はひとりでは生まれてきません。必ず両親がいます。

 結果的に両親のいない環境で育たざるをえない子どももいますが、現代日本では稀です。

「家族もの」はハートウォーミングな物語になりやすく、それゆえに読み手の共感がとても得やすくなります。

 伏見つかさ氏『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』『エロマンガ先生』のような兄妹ものや、白鳥士郎氏『りゅうおうのおしごと!』のような師匠と弟子のようなものが近年スマッシュヒットしているのです。

「学園もの」「部活もの」もたいへん人気があります。

 ライトノベルに限っても谷川流氏『涼宮ハルヒの憂鬱』に始まり、現在先頭を走る渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』や鎌池和馬氏『とある魔術の禁書目録』や佐島勤氏『魔法科高校の劣等生』など、十巻を超える連載となる作品が多いのも特徴です。




内面の影響

「テーマ」として「内面の影響」を取り上げると、応援したくなる雰囲気が醸し出されます。

 主人公が思い描く将来の夢や理想とする自分の姿を追い求めることで、読み手は主人公がどうなっていくのだろうかと親心を抱きやすいのがポイントです。

 「将来の夢」を追い求めた作品はマンガ・尾田栄一郎氏『ONE PIECE』が挙げられます。主人公モンキー・D・ルフィの「海賊王になる」という「将来の夢」へ向けての冒険譚のはずなのです。でもここのところ完全にこの初心を忘れていますよね。二十年以上連載しているのならすでに地球何周ぶん回れると思っているのか、作者に聞いてみたいところですね。

 最も端的に「理想とする自分の姿」を追い求めた作品はマンガの桂正和氏『ウイングマン』ではないでしょうか。「無敵のヒーロー」ウイングマンとなることに憧れを抱く主人公・広野健太。彼が異世界ポドリムスからきた少女・アオイと出会うことで「無敵のヒーロー」ウイングマンへの道を歩むことになります。

 『ウイングマン』と表裏な作品である大場つぐみ氏&小畑健氏『DEATH NOTE』も主人公・夜神月が「新世界の神になる」という「夢や理想」を追い求める物語です。


 小説投稿サイト最大手『小説家になろう』で人気の「異世界転生」「異世界転移」のファンタジーは、たいてい「現実世界では夢や理想だったことに挑戦していく」パターンになります。

 これは「内面の影響」が物語の主軸となって、読み手の願望を投影しやすいからでしょう。

 だから現実世界では「ニート」や「引きこもり」だった主人公が、異世界に行くと環境が変わったのでやる気を出すわけですね。

 現実世界でも「ニート」や「引きこもり」を減らすには、まず環境を変えてあげましょう。

「異世界転生」では異世界へ飛ばされると魔王になったりゴブリンになったりスライムになったり剣になったりと、環境ががらりと変わりますよね。

 人間でなくなるだけで、やらなければならないことがまったく変わってしまうのです。

 また「異世界転移」をすると人間関係がすべてリセットされた状態になるので、現実世界で人間嫌いになった主人公でも異世界に行けばひとりずつ人間関係を構築していくことができます。

 この点でも読み手が応援したくなりますし、場合によっては共感してくれることにもつながるのです。




分岐点

 人は生きている限り必ず「分岐点」に差しかかります。

「分岐点」は鉄道のポイントであり、ゲームの攻略ルートです。

 どちらに分岐するかによって、その後の行き着く先が決まります。

 人生にはどんな「分岐点」があるか、いくつか挙げてみましょう。

 出生、幼稚園や保育園への入園と卒園、学校への入学と卒業、受験、思春期・恋愛・離別、就職・昇進・降格・辞職・転職・退職、金銭、趣味、資格試験、住居賃貸・購入・引っ越し、結婚・別居・離婚・単身赴任、妊娠・出産・名付け・子育て、家族・兄弟姉妹・父母・祖父母・孫、老化、障害、事故、事件、ケガ・病気、手術、災害、戦争、倒産、喪失、死去など。

 ざっと考えただけでこれだけの「分岐点」が思い浮かびました。

 いずれもなにを選ぶかによってその先の人生が変わってしまいますよね。

 だからこそ「分岐点」は小説の「テーマ」となりうるのです。





最後に

 今回は「テーマとなりうるもの」について述べてみました。

「社会的な影響」「日常的な影響」「内面の影響」「分岐点」の四つを提示しました。

 複数用いると「テーマ」がボヤけやすいので、できればひとつの作品にはひとつの「テーマ」を設定してください。

 もちろんこれ以外の「テーマ」も存在します。

 ただ病気やケガを題材にすると、どうしても医学的な知識が求められます。

 医学に詳しくなければ病気やケガを「テーマ」にすべきではないでしょう。

 それがなくても満足の行く小説は書けるはずなのです。




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