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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
執筆篇〜わかりやすく書くための心得
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301.執筆篇:人間と人生を書くのが小説

 今回は「ストーリー展開でキャラにある選択をさせたい」場合についてです。

 当初の「プロット」どおりに進めるのか、「プロット」を柔軟に変えるのか。

人間と人生を書くのが小説


 小説には主人公と「対になる存在」が欠かせません。

 ただ彼ら彼女らを書くだけでは小説にはならないのです。

 彼ら彼女らの人生を書くことで、読み手が感情移入できるように取り計らいます。




キャラは盤面の駒ではない

 小説は将棋ではありません。

 書き手が物語を思い描き、盤面にキャラを配役して局面を作り出した。

 だとしても、キャラはそのとおりにしか動かせないわけではないのです。

 キャラにはキャラの性格があり、取り巻く環境があり、置かれた状況があります。

 ただの「歩」が果敢に立ち向かうことで「と金」へと成り上がる。

 そういう面ではキャラは将棋の駒のようなものでしょう。

 これは推理小説に多く見られる手法です。

 しかし人間と人生を書く小説では、キャラの内面をしっかりと描写して読み手がキャラに感情移入できることが求められます。

 書き手が作為的にストーリーを書き、キャラの心を理解せずに物語を築いていくと、どうしても展開が強引になりがちです。


 そのため、キャラの心を理解することと「あらすじ」を作ることは同時進行で行なわれるべきでしょう。

「こういう場面が立ちはだかったら、キャラの性格や状況などからしてこういう選択をとるのではないか」ということを考えます。

 そうすればキャラの性格や状況などと乖離した選択をすることがなくなり、ストーリー展開に無理がなくなるのです。


 もし「物語の展開でキャラにこの選択をとらせたい」と思っているとします。

 しかし当のキャラの性格や状況などから「この選択をとることはまずない」ということが起こりえるのです。

 物語の展開を優先させるのか、キャラの性格や状況などを優先させるのか。

 これによって物語は大きく二つに分かれていきます。

 強引でも予定通りに進める物語と、柔軟に筋道を変更する物語とにです。




強引でも予定通りに進める物語

 小説を書き慣れていない方や推理小説などでは、緻密に計算された筋道に従って物語を展開させる必要があります。

 そうしなければ物語が破綻してしまうからです。

 せっかく密室トリックを練り込んだのに、目撃証言がウソだった、実は抜け道があり密室でもなんでもなかった。

 そんなことが起こると推理小説は成り立ちません。

 小説を書き慣れていない方の作品も、因果関係が書かれていない出来事や選択が頻繁に書かれています。

 そうなると面白いと思って書いた小説が、読み手にまったく受け入れられなくなるのです。

 結果として「自分には小説を書く才能がないんだな」と思って絶筆する方が多数出てきます。

 その判断はただの早とちりです。

 物語が面白いか面白くないか、つまり読み手にウケるかウケないかは、「因果関係のある出来事が起こり、適切な選択がなされる」ことに尽きます。

「因果関係」と四字熟語で言うとなにやら高尚なもので、私には理解できないんだろうな、と思うかもしれません。

 しかし「伏線」と呼べばどうでしょうか。

 とくに小説を書き慣れていない方や推理小説などで「緻密に計算された筋道」を確立するためには、「伏線」をしっかりと張ることです。

 「伏線」がいかにたいせつかがわかるのではないでしょうか。




柔軟に筋道を変更する物語

 こちらは連載小説に関することです。

 小説を連載するということは、後になってから遡って「伏線」を張れません。

 今書いている一投稿の局面において、キャラの性格や取り巻く環境・状況はもはや動かせないのです。

 そうなると選択を迫られたとき、その時点でのキャラの性格や環境や状況などを踏まえたうえで「どれを選択するのか」を決める必要があります。

 すると「当初想定していた選択をキャラがとれない」という状況になりうるのです。

 当然物語はその先もずっと続いていくわけですから、以後のストーリー展開も変更を余儀なくされます。

 もし可能なら一投稿の局面に差しかかるまえに「伏線」を仕込むべきなのですが、連載小説ではストックをどれだけ持っているのかわかりません。

 ほとんどの書き手はストックを持たずに連載しています。

 そうなれば「伏線」を張っているゆとりなどないのです。

 仮にストックが豊富にあるのなら事前に「伏線」を仕込めます。

 しかしその「伏線」を入れたことにより、その後のストーリー展開も変更しなければならないことが多々あるのです。

 ストックをすべて変更してまわらなければなりません。

 この煩雑さから、ほとんどの書き手は「その場のノリ」でキャラに選択させています。

 「その場のノリ」つまりキャラの性格や環境や状況などに依拠した選択です。

 その後どういう展開になるのか。

 これも書き手であってもわからなくなるのです。

 田中芳樹氏『アルスラーン戦記』の連載が長引いたのも、おそらく当初のプロットどおりに進められなくなったからだと思います。

 そこで第一巻から何度も読み返して、どこかに「伏線」となるような記述・描写はないかを探さなければなりません。

 これはかなり不毛な作業です。

 ですが「伏線」もなしに連載小説を書き続けることはできません。

 だからここまで時間がかかってしまったのです。

 連載小説の怖さではないでしょうか。


 連載小説を書くにはまず「あらすじ」をきっちりと作り、「箱書き」でシーンを決め、「プロット」で内容をあらかた書いていたことでしょう。

 そのプロットが、あるときを境に意味をなくしてしまいます。

 だから連載小説では「あらすじ」段階程度だけ決めておき、後は気の向くままに執筆している方が多いのです。

 何巻でも連載を続けて、ようやく結末がつけられそうだ。

 そうなって初めて連載を終えるタイミングを迎えます。

 小説を書き慣れていない方からすれば、気の遠くなるような話です。

 ですが「あらすじ」「箱書き」「プロット」の段階でキャラの性格・状況・周囲の環境などをしっかりと時間をかけて決めてあれば、途中で「筋道を変更する」必要なんてありません。

 つまりきちんとした「構想力」があれば、筋道から脱線することはありえないのです。

 連載小説を書いている方、書きたい方はとくに「構想力」を鍛えてください。

 そうすれば途中で「筋道を変更する」ことがなくなります。




人生を書く

 小説は登場人物の人生を書くものです。

 俗な言い方をすれば「生きざまを書く」のです。

 そうしなければ人物の奥行きが生まれてきません。

 薄っぺらい人物に物語でどんな活躍ができるというのでしょうか。

 その人物にはどんな過去があったのか。

 これが人物のこれまでの人生です。

 そして物語を通してどんな経験をして変化していくのか。

 成長かもしれませんし、退行かもしれません。

 それを読ませるのが小説なのです。

 小説の書き出しから了までの間になにも成長しないし退行もしないというのは、ギャグもの以外ではほとんど見られません。

 経験したらなにかが変わっていくのが知性を有する人間本来の姿なのです。





最後に

 今回は「人間と人生を書くのが小説」ということを述べました。

 人生とは「選択」の積み重ねそのものです。

 あなたはこれまでどれだけの「選択」をしてきたのでしょうか。

 二十歳であってもおそらく一万は下らないと思います。

 小説も当然「選択」によって人生を書くことになるのです。

 基本的に「伏線」を用いて人物に特定の「選択」をさせましょう。

 そうすれば無理なく「選択」させることができます。

 しかし連載小説では過去に遡って「伏線」を張れません。

 多少荒っぽくても既定路線を突き進むのか、柔軟に変更して結末を定めないことにするのか。

 大きく分ければこの二つの方法で「選択」をさせます。

 いずれにしても連載小説というのは初心者が気楽に手を出せる代物ではないのです。




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