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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
基礎篇〜右も左もわからないときは、まずは基礎から
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27. :伏線の張り方

 今回は「伏線」について書きました。

 マンガの話が多いですが、マンガのひとつのエピソードが中編小説規模なので、とくに小説で長期連載をするときは参考にできる点が多いのです。

 今回は「伏線」について書きました。

 マンガのひとつのエピソードが中編小説規模なので、とくに小説で長期連載をするときは参考にできる点が多いのです。





伏線の張り方


 物語とは「主人公がどうなりたい」との思いから始まって「主人公の結末(ゴール)」「主人公がどうなった」に至る出来事(イベント)の連なりを指します。しかし先を読み進めたくなるには「出来事(イベント)の連なり」だけではじゅうぶんとは言えません。

 今回はこういう出来事が起きました。主人公はこういう対処をして結果出来事(イベント)は終了する。

 ひとつのエピソードだけで完結するパターンは、長期連載されている小説やマンガではおなじみです。

 しかしそれだけで長期連載できるかというとかなり難しい。

 四十年連載が続いたマンガ・秋本治氏『こちら葛飾区亀有公園前派出所』は基本的に一話完結ですが、周りが少しずつ変化していきましたよね。特殊刑事とか爆竜大佐とか超神田寿司とかどんどん新キャラを増やし、車載電話、ショルダーフォン、ポケベルから携帯電話に、そしてスマートフォン、タブレットへとその時代を反映するアイテムも取り入れています。「両さんが調子に乗ってハメを外して大原部長に喝を食らう」という「いつも決まったパターン」なのに「新鮮に読ませる」マンガとして成立していたのです。

 長期連載の小説でもやはり多かれ少なかれこのようなことが行なわれています。


 ただこれはすでに名の通った作品でしか使えない手法です。新連載で最初から一話完結でオチがついてしまえば、ほとんどの読み手は「ああそうですか」となります。続く一話完結を読んだ読み手が「面白い」と感じてくれれば人気も出てくることがあるのです。

 でも初心者がこの手法で毎回凝ったアイデアをひねり出そうとすると途端にネタが尽きてしまいます。書き慣れていない書き手だと「毎回毎回まったく切り口の異なるアイデアにしないといけない」と思ってしまうのです。

 もちろん創造力が豊かで「毎回毎回まったく切り口の異なるアイデア」を出せるのなら心配する必要もありません。

 でも「自分にはそれだけの創造力はないな」と自覚しているのであれば異なるアプローチを考える必要が出てきます。

 それは「次回が気になって仕方がない」作りにすることです。



次回が気になって仕方がない

「次回が気になって仕方がない」作りとはなにか。

 新しく書いた連載小説では当然エピソードを出し、それを解決するのはまったく同じです。ただ完結するには「足りないなにか」を残しておきます。

 たとえば初回の連載ぶんで二つのエピソードを出し、そのうち一つだけを完結させる。するとひとつのエピソードは未解決のままになります。

 いちおうエピソードのひとつは完結しているので楽しく読めましたが、読み手の心には「足りないなにか」が生じます。

 その「足りないなにか」が物語を次へ進める推進力になるのです。


 これもマンガですが北条司氏『シティーハンター』では素性不明の凄腕スイーパーが、毎回依頼を解決していくストーリーです。ほぼ毎回このパターンですが読み手は先が気になります。

 それは毎回入れられるエッチなシーンであったり主人公の「もっこり」であったりする「ネタの盛り上げ」も深く関係しているのは間違いないでしょう。

 しかし読み手は根本的に「この主人公の素性っていったいなに?」という思いがつねに残っています。つまり「足りないなにか」は「主人公の素性」なのです。

 『シティーハンター』はこの「足りないなにか」であった「主人公の素性」が明らかになって完結します。作者・北条司氏には明確に「足りないなにか」がなんであるのかを計算してエピソードを作っていたはずです。


 これもマンガですが車田正美氏『聖闘士星矢』では「地上に危機が迫るときに現れるアテナの聖闘士(セイント)」を主人公にしています。

 こちらは聖闘士(セイント)同士のバトルを中心に据えていますが、連載当初は「アテナは誰か」が「足りないなにか」であり、城戸沙織がアテナと判明したとき「なぜ沙織は命を狙われるのか」が次の「足りないなにか」になっています。

 そして沙織を狙っていた教皇を倒したあと、最も重要な「足りないなにか」であった「地上に危機が迫るとき」が「足りないなにか」として立ち上がるのです。

『聖闘士星矢』は最初に「足りないなにか」を多量に出しておき、それをひとつひとつ解決することで次回への期待を煽るようになっています。

 人はその「足りないなにか」を「伏線」と呼びます。

 そう、物語には「伏線」が必要なのです。




伏線とは

 最終的に「主人公がどうなった」か。それを暗示するものが物語の根本を貫いていること。それがあれば読み手は飽くことなく物語に没入し、続きが読みたいと思ってくれます。

「主人公がどうなった」かを暗示するものこそが「伏線」です。「伏線」があるから「この謎はいつ明らかになるのかな」と気になって続きが読みたくなります。

「伏線」がまったくなければ「このエピソードは面白そうだから読もう」「このエピソードはつまらなそうだから読まなくていいや」と見切りをつけられてしまうのです。

 せっかく書いた渾身のエピソードが導入部分だけで見切られてしまうのはあまりにももったいない。しかもエピソードだけでなく、作品単位として「この書き手の作品は軽く読めるから、冒頭だけ読んで気に入ったら買えばいいや」と見切られてしまいます。

 それがひじょうに物語性が高く講評もよい小説であっても、冒頭だけで見切られてしまってはフォロワーがそれほど増えません。

 読み手が最初に触れる「この書き手のエピソードが面白い」のはもちろんのこと「読んでみて何か足りていないな」と思わせること。「何かわからないけど続きが読みたくて仕方がない」と思わせること。

 つまりしっかりと「伏線」を張ることです。


「伏線」を張ってさえいれば読み手は続きが読みたくなる。そう単純なものでもありません。

 一度張った「伏線」は必ずすべて回収されなければなりません。回収し忘れても一作だけならそれで通用します。

 しかし次作からは「この書き手は伏線を張るだけ張って回収しない伏線がたくさんある」という理由で読まれなくなります。

 最悪の場合「この書き手は風呂敷を広げるだけ広げて畳むつもりがないから読むに値しない」という評価を下されてしまいます。一作目がブレイクしたのに二作目以降で評価を落とす書き手はたいてい「伏線」の回収不足が原因です。




伏線を隠さない

 よく最終決戦において大どんでん返しの展開を見せたいので、それまで情報を隠しておこう、と考える書き手がいます。

 しかしまったく「伏線」の張られていない小説を読んでいる読み手は、唐突に現れた大どんでん返しの展開に触れた途端「なぜそうなった?」と感じるのです。

 そこで説明をいくらしたところで、読み手は「後づけの設定じゃないか」としか思いません。書き手が「劇的だ!」と思って書いたとしてもムダなのです。読み手は「こじつけだ!」としか感じません。

 最終決戦において大どんでん返しをしたいのなら、そこで起きる出来事(イベント)への前フリがその出来事(イベント)以前までできちんと示されていなければならないのです。

「伏線」も張らずに出来事(イベント)を起こさないようにしましょう。「できるだけ隠せば驚かせられる」というものではないのです。書き手はここを勘違いしないでください。

 よくある大どんでん返しに「味方のはずが実は敵だった」というのがあります。

 最終決戦で「実はこいつが敵だったんだ」と驚かせようと思って、それまでに「この人物はもしかすると敵かもしれない」と匂わせる行動をとらせようとしない。

 疑う余地のまったくない人物が最終決戦で「実は敵だった」では、あまりにも展開が唐突に過ぎますよね。その人物がひじょうにポーカー・フェイスで言動に疑う余地もない。現実では確かにそういう人もいるにはいます。

 ですが物語である小説では「当然の帰結」が求められるのです。「この人物はもしかすると敵かもしれない」と匂わせる言動がそこまでに示されていなければなりません。

 それでいて「やはりこの人物は味方なんだな」という描写もすることで、キャラを読み手の「認識のゆりかご」に乗せるのです。

 あるときは「敵かも」あるときは「味方かも」。この揺れがその人物の存在に緊張感を生み出し、キャラの魅力に深みを与えてくれます。





最後に

 今回は「伏線」について述べてみました。

「伏線」は読み手の心の隅にでも引っかからなければ意味がないのです。

 ひたすら隠しておいて、そのときが来たら前フリもなくバーンと出せば驚かせられる、というものでもありません。

 それ以前にきちんと「伏線」を明示して、読み手が「この伏線はまだ回収されていないな」と思われるくらいがちょうどいいのです。

 せっかく時間をかけて書く小説です。

「伏線」を活かして読み手が「次回が気になって仕方がない」と思うよう刺激することを忘れないようにしましょう。



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