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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
基礎篇〜右も左もわからないときは、まずは基礎から
25/1500

25.:登場人物の設定(その2)

 キャラの書き分けをするためには「他とは違う特異なもの」をポイントにして設定する必要があります。

 今回はとくに外面の「特異」にスポットを当ててみました。

登場人物の設定(その2)


 登場人物の設定と書き方は必要最小限に抑えます。




外面の個性

 その世界での平均的な人間からみて突出しているものだけを描写するようにするのです。

 全員白色人種なのに、各キャラの説明で「白い肌の」と書くのは無意味であり冗長でしかありません。全員青い瞳なのに取り立てて「青い瞳で」と書くのも同様です。

 あまりにわかりきっていることを殊更書き記す必要はありません。せいぜい原稿用紙の枚数が埋まらないから、空白を埋めるために書いておこう、くらいのノリでしかないのです。

 重ねますが、ほとんどの人が同じであれば、あえて書く必要などありません。皆金髪なのに「金髪の」などと書いてなんになりますか。「いやこの金髪は他のキャラの金髪とは異なるんだ」。そうお思いなら、それがわかるように細かく「どのような金髪」なのかを書きましょう。

 全員金髪の中に一人だけ黒髪なら、明らかに突出しているので「黒髪の」と書く必要があります。全員黒髪なのに「黒髪の」と書くのは当たり前の情報でしかありません。だから「文豪」は「烏の濡羽色」のように「黒髪」を別の言葉に言い換えて特徴を出そうとしたのです。苦肉の策ではあります。しかしこのような書き方はキャラの「個性」を引き立てるには不可欠です。


 抜きん出て身長が高ければ「頭一つ高い」「皆が見上げながら話している」などの説明を用います。際立って筋肉質なら「筋肉太り」「着ている制服がはちきれんばかりの」などの説明が必要です。肌や髪や瞳の色だけでなく、身体的な特徴もやはり書く必要があるのです。

 結果的に主人公はなにかしら平均とは異なる容姿に設定されるようになります。

『銀河英雄伝説』以降、登場人物に左右の瞳の色が異なる「ヘテロクロミア(オッドアイ)」のキャラが増えました。投稿作品の書評をされているある方の著書を読んだ際「ほとんどの作品に出てきた」と書いてありました。今では商業小説でもたいていの作品に出てくるほどです。

 際立つ特徴を持たせるために、書き手はいろいろな作品のさまざまに特異なキャラをつい自身の作品に持ち込もうとしてしまいます。そのためにかえって多くの作品で同じ特徴を持つキャラが増えてしまうことになったのです。


 体格も体型も色も普通なんだけど、どうしても書かなきゃいけないキャラがいるんですけど。という書き手もいますよね。そのようなときは「服装」「装飾品」で差をつけるとよいでしょう。

「露出度の高い服を着た女」という一文だけでも特徴が出ていると思いませんか。服装は私服であれば基本的に各違いますし、指輪やイヤリング、ネックレスやペンダントや時計などをしていればそれも「個性」として用いることができます。


 学園もので服装も装飾品も一緒なんだけど、こういうときはどうすればいいのか。これもよくある疑問ですね。その場合は「髪型」「髭」などで分けられます。

 いやその学園は生徒全員丸坊主の設定なんだけど。重箱の隅をつつき始めていますね。この場合でも「頭の形」に「個性」が表れます。全員丸坊主であっても全員同じ頭の形をしていることはまずありません。ある程度分類できるはずですよ。

 それでも分けられないんだけど。そうおっしゃるのであれば、もういっそ何も書かないでください。そのときは全員が「平均的に同じ」状態に戻っています。そもそも「個性」がまったくありませんから、書く必要がないのです。

 これでキャラの外見の書き分けはできますよね。




内面の個性

 以上は外面的な特徴ですが、内面的な特徴も同様です。

 どこが発祥か定かではありませんが「ツンデレ」と呼ばれる女性が「テンプレート」としてさまざまな作品に登場します。普段はツンツンしていてひじょうに素っ気なかったり罵詈雑言を浴びせかけたりしてくるけど、二人きりになったらデレデレと甘えてくるとかそういった内面性です。

 現在の書き手はたいてい「ツンデレ」女性を一人は小説に書きます。過去の作品で受けたものはすべて取り入れないと損だという焦りを感じるほどに。

 もはや「ツンデレ」キャラ無しで小説を書けないのではないかと思わせるほど、病的なまでに追い詰められています。だからメインの女子キャラは「ツンデレ」でなければならないなんて誰も決めていないのに、書き手は「ツンデレ」キャラを書いてしまうのです。


 他にも読み手ウケを狙って「メガネっ娘」「ロリっ子」「エロい」属性を持つキャラが一人はいるというのも現在の不文律としてあります。とくに「メガネっ娘」は「メガネを外したほうが魅力的」という「テンプレート」が読み飽きるほどです。多くの大衆小説を読んでもこれらはとにかくよく出てきます。

 読み手にウケさえすればなにをしてもいい。そう考える書き手が多いのも確かです。でもそんな「テンプレート」で書かれたキャラに特別な固有の魅力があるのでしょうか。

 残念ながら読み手はそんなキャラに飽き飽きしています。「テンプレート」をそのまま用いるだけではダメなのです。なら「組み合わせれば」とも考えますが、たいていの組み合わせはすでに出尽くしたといっていいでしょう。

 それでも魅力的なキャラがどうしても必要です。どうすればよいのでしょうか。




キャラの外面と内面の差別化

 せっかく書いたキャラにそれほどの魅力がないのでは困ります。小説を支えているのは「人物(キャラクター)」「舞台」「エピソード」の三つの柱です。このうち「人物(キャラクター)」に特徴がないのは致命的とさえ言えます。

 キャラの特徴は見た目の「外面」と心理の「内面」と大きく二つに分けられます。

 そのうち外面は出尽くしたと言っていいでしょう。背の高い低い、体脂肪の多い少ない、筋肉の多い少ないという本体部は言われなくても頭の中で想像するだけでわかりますよね。他にも服装の出で立ちや目立った装飾品などの装い。目の良し悪し、耳の良し悪し、感覚の鈍感敏感などの部分的な特徴を書くこともできます。こちらは細かく書けばある程度の差別化は図れますが、たいていのものは出尽くしたといってよいでしょう。

 いっそのこと、なにがしかの奇形や障害を書く方法もあります。でもともすれば「障害者差別だ」との(そし)りを免れないでしょう。書き手は楽に外面の差別化ができるでしょう。でもそれで世論から非難の的にされるのでは、苦労して書く割に報われませんよね。だから奇形や障害を配慮もなく用いることはやめたほうがいいのです。

 パラリンピックにより障害に理解を持つ方が増えています。そのような方々を読み手の対象として、障害と向かい合う小説・立ち向かう小説・乗り越えようとする小説というものは、それだけでドラマチックです。うまく書ければ文学賞だって狙えます。でも大衆小説としては垣根が高すぎる気もしますよね。

 内面は「ツンデレ」や「サディスティック」といった性質と、「臆病」「果断」といった性格とに大別されます。性質についてはこちらもほぼ出尽くしたと言っていいでしょう。となれば性格をどう描くかがキャラを魅力的にするのに重要であることは明白です。




性格は「出来事(イベント)にどう対処するか」で見せる

 性格を描くためには「出来事(イベント)にどう対処するか」を見せることが重要です。この過程は類型化されていません。

 つまり書き手の筆力により、いくらでも多様性を生み出せるのです。

 ここまでわかれば書き手としても気づきますよね。キャラの魅力として「性格」が前面に出てくるようになるわけです。

 小説とはキャラの外面をあれこれ吟味するものではありません。内面をつかんで感情移入するツールです。その中でも性格が近しいキャラにはとくに感情移入しやすい。

 だから書き手はキャラの性格を丁寧に書いていく必要があります。それを「彼は臆病だ」の一文で済ませてしまうと、キャラにまったく感情移入できません。さほど重要でないキャラならこれでいいのですが、主要キャラでこれをやられると読み手は白けます。

 読み手が求めているのは「感情移入できる小説」であり結果として「疑似体験できる小説」です。重要なキャラは殊更丁寧に性格を書いていかなければなりません。

 性格を丁寧に書くには「出来事(イベント)にどう対処するか」を記すことです。これまでのコラムで何回も「性格は『出来事(イベント)にどう対処するか』で書く」と述べてきました。駄目を押すようですが、やはり性格は「出来事(イベント)にどう対処するか」で書くべきです。





最後に

 今回は「キャラ設定」について補足をしてみました。設定すべきものは「他とは明らかに違うなにか」だけでいいのです。他と同じなら取り立てて書く必要性がありません。

 相撲部屋を舞台にした小説で「彼は太った力士だ」と書いても読み手は「力士なんだから当たり前じゃん」としか思ってくれません。

 他と違う何かが「個性」になります。外面的な個性はしっかりと書き込んでおく。内面的な個性は「出来事(イベント)にどう対処するか」を見せて、キャラに感情移入してもらって読み手にわからせる。これができればひじょうに味わい深い小説になります。

 以上は一次創作小説について適用されます。二次創作小説に関しては、読み手はすでにキャラの外面的な個性も内面的な個性も承知のうえですから、あえて書く必要がありません。でも書かないより書いたほうが、より味わい深い小説になることは間違いありません。




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