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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
基礎篇〜右も左もわからないときは、まずは基礎から
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19. :書き出しと風景描写

 今回は少し実践に踏み込みます。

 多くの書き手が「書き出し」に苦労します。試し読みした「書き出し」がダメなために続きが読まれない小説が山のようにあるのです。「書き出し」以外がいかによくても「書き出し」がダメならすべて台無しになります。

 また小説というものは「主人公がどうなるか」を書いた文章です。そのためどうしても人物描写が多くなります。おざなりになりかねない風景描写についても言及致しました。

 ……はい、正直に言いますと、双方別々にしたかったのですが分量が少なくなってしまったのです。そこで無理やり連結させてひとつの投稿に収まる分量を確保した次第です。

書き出しと風景描写


「書き出し」では真っ先に主人公と、彼(彼女)が置かれている時間と場所を掲示しましょう。

 これが書かれていないと、読み手にはなにがなんだかわかりません。

 主人公がいったい誰で、置かれている状況はどこで、世界観はこんなだ。

 これを真っ先に読み手へ伝えることが書き手には求められます。




書き出してすぐに主人公を明示する

 いつまで経っても主人公が出てこないと読み手は誰に感情移入して読めばいいのかわかりません。

 人物が出てくるたびに「この人が主人公なのかな」と疑心暗鬼で読み進めることになります。

 とくに三人称視点と神の視点で起こりやすいのです。

 そんなふわふわした状態では、とても小説を読み進める意欲が湧きません。読み手はブラウザの「戻る」ボタンを押し、もっと主人公がわかりやすい小説へと心移りしていくことでしょう。

 主人公がすぐに判明しやすいのは一人称視点の小説です。たいていの場合「俺」や「私」が初めのうちに出てきます。

 三人称視点や神の視点であっても冒頭から「〜に見える。」「〜だろう。」「〜と思った。」などと書けば視点を持つ話者が誰なのか判断しやすい。よって誰が主人公なのかなんとかわかってきます。

 冒頭の一文で必ず主人公を登場させてください。




最初の一ページ目から出来事が起きる

 冒頭の一文で主人公を書いたら、最初の一ページ内で二つのことを書きましょう。最初の一ページ内とは、ハードカバー書籍や新書や単行本なら最初の一ページ以内、四百字詰め原稿用紙なら二百字以内、小説投稿サイトに投稿する小説なら一画面以内、スマートフォンであなたの小説を読んでいる方がいれば制限はさらに短くなります。

 まず主人公の性別と年齢(年代)をはっきりさせます。主人公はどんな人物なのか、読み手が想像する手がかりになるのです。

 名前で性別がわかるのならとくに書き及ぶ必要はありません。そして主人公の見た目や人となりをできるだけ早めに逐次説明していきましょう。主人公の風体を読み手がすぐにイメージできます。性格・性向などはの描写で後々記すことになります。

 次に主人公の身になにか出来事(イベント)の影響が及んでいる状態にしましょう。

 すると読み手は「おっ、この主人公はこれからどんな目に遭うんだろう」「どう対処するんだろう」と興味を持ってくれます。そして「なぜその出来事(イベント)が起きたんだろう」と読み手に疑問を持ってもらえるようにする。

 とにかくひと目見たところに主人公が出てきて出来事(イベント)が起きるか起こすことがたいせつです。

 試し読みをしている読み手に、最初の一ページで「こんな主人公がこの後どうなるんだろう」「どうするんだろう」「なぜなんだろう」と感じさせて「先が気になる」と思わせられれば書き手の勝ちです。

 もし最初の一ページでなんの出来事(イベント)も起こらなければ、試し読みをしている読み手はもっとわかりやすい「最初の一ページで出来事(イベント)が起こっている小説」を探すためにあなたの小説を閉じて書棚に戻し、別の小説を試し読みすることでしょう。


 


主人公はいつどこにいますか

 また、主人公が置かれている状況、時間や場所についての説明も必須です。「いつ」「どこで」起こっている出来事(イベント)なのか。これがわからないとあまりにも抽象に過ぎます。

 暗幕を背景とし主人公にスポットライトが当たって他の人物との掛け合い漫談やコントをしているようなものです。今どきテレビで観られるコントですら大道具・小道具をお客様に見せて具体性を持たせていますよね。

 ましてただの文字の連なりでしかない小説です。出来事(イベント)の舞台となる時間や場所は書かれない限り、状況は誰にもわかりません。

 最初の一文で主人公を出し、冒頭で出来事(イベント)が起こったら、その冒頭部分で時間と場所を必ず説明しましょう。

 説明の一つもなければ「暗幕にスポットライト」です。




風景描写を忘れない

 小説は結果的に「主人公がどうなった」かを書いた文章です。だから当然主人公を始めとした人物描写が多くなります。

 ですが人物が置かれている状況や場所などを書かないと、いつどこで起こった出来事(イベント)なのか、読み手にはさっぱりわかりません。これではせっかくの話がつまらなく感じます。そのためにも風景描写を忘れないでください。

 風景描写は人物の手近なものからやっと目視できるほど遠くのものまでありとあらゆるものを書く必要はありません。

 そんなことをすれば風景描写だけで三百枚をかるく超えてしまいます。

 行動に用いられる小道具や、人物の動きまわる部屋や場所などの大道具のように、人物に関係するものだけを描写すればいいのです。読み手が最低限出来事(イベント)が起きている環境をイメージできる範囲の書き込みでかまいません。

 人物とまったく関係のないものを書いてしまうと、読み手は「伏線なのか」といちおう心にとめておきます。

 その結果「伏線」として生かされていればいいのですが、たいていはそこに書いてあるだけです。

 読み手は「ムダな情報の多い小説だな」と思って読み進めるにつれ疎ましくさえ感じてきます。そして忍耐の限界を迎えたらどこまで読み進めていようと読むのを断念するのです。

 ミステリー小説のファンはこのムダを積極的に楽しむ傾向があります。ムダが多いほど情報量が多くなり、真相を覆い隠す効果があるからです。結果真犯人が意外だと思わせられる。

 だからミステリー小説ではあえてムダを書いていく必要があります。その他の大衆小説のファンはそれほど寛容ではありません。




たくさん書いてムダを削る

 一般に小説はムダが多いほどほど薄っぺらくなります。

 三百枚の小説を書いたとして、ムダな情報に百五十枚をかけてしまう書き手が意外と多いのです。

 風景描写には文字通り舞台設定の提示としての意味合いがあります。それとは別に心理表現に用いるテクニックがあるのです。だからといって心が動くたびにいちいち心理表現として風景描写を多用してしまう人がかなりいます。これが蓄積すると三百枚のうち百五十枚が風景描写という事態になるのです。

 心理表現として風景描写を取り入れるのは決して悪いことではありません。ただ書くのなら「とくに強調したい部分」のみに限るべきです。

 心の機微だからと心理表現として風景描写が連々と書かれていると、読み手は「だからどうした」という気持ちが湧いてきて、一瞬で小説世界から現実へと引き戻されてしまいます。これではせっかく貴重な時間を割いて著した小説が台無しです。

 風景描写に十行使うより、態度や言動を記した一行の説明で事足りる場合が多いことを知りましょう。ムダな部分で心理表現として風景描写を多用するより、シンプルな一挙一投足のほうが読み手には理解しやすいのです。

 主人公自身の心理表現として風景描写を行なうことはあります。でも削れるだけ削るべきです。できることなら態度や言動や出来事(イベント)への対処で示しましょう。だって主人公は自分の心が丸わかりなのですから。それを婉曲に言いまわす必要がどこにあるでしょうか。それでは性格が恐ろしく優柔不断か恐ろしくせせこましいかです。

 いずれにしてもかなり感情移入しにくい主人公になってしまいます。心理表現として風景描写を長々と書き連ねるのは逆効果なのです。

 神の視点で書いているときはすべての人物の心が丸わかりですから、心理を断定書きしてもかまいません。

 神の視点以外では必ず心理を断定できない人物が出てきます。視点を持つ者が他人の心理を知る(すべ)は、視点から見た他人の態度と言動と出来事(イベント)にどう対処したかだけです。彼らの態度や言動や出来事(イベント)への対処の仕方からそれを察する表現を心がけましょう。




心理表現としての風景描写はスパイス

 心理表現としての風景描写はあくまで「スパイス」です。振りかけすぎるとくどくなって文章が持つ本来の味わいが打ち消されてしまいます。「ここぞ」というときに使うべきであって、常用するテクニックではありません。

 心理表現に風景描写を多用しないよう絶えず意識しながら小説を書き進めましょう。

「いい文章が書けた」と思っても推敲する段階でくどくなっていないかを必ずチェックします。「スパイス」として効いているのか振りかけすぎなのか。もし振りかけすぎていたら、その風景描写はバッサリと切り取って、態度や言動の説明へ置き換えていきましょう。出来事(イベント)への対処で表現していたことなら、あえて書く必要すらありません。

 インターネット時代の小説はテンポが命です。





最後に

 今回は「書き出しと風景描写」について述べてみました。

 小説を試し読みする読み手は、まず「主人公がどういう人物か」「その主人公に何が起きているのか(何を起こしたのか)」「それはいつどこでの出来事(イベント)なのか」を知ろうとします。

 これがすべて示されれば、読み手はすぐに興味の持てる小説かどうか判断できます。

「初見で切られるのは嫌だな」と思ってこれらを書かないでいると、試し読みした読み手はもう二度と同じ書き手の小説に手を伸ばさなくなるでしょう。

 興味の持てる小説かどうかがすぐに判断できる小説を書いた書き手なら「主人公や題材が変わったらまたチェックしてみようかな」と読み手が思ってくれます。つまり潜在的なフォロワーとリピーターが増えていくわけです。

 だから「書き出し」はとても重要になります。それゆえに「書き出し」に悩む書き手が多いのです。

 私が提案している「佳境(クライマックス)から結末(エンディング)へそこから遡って」あらすじを書いていけば、書き出しのエピソードと場面(シーン)はとても簡単に見つけられます。

 そしてその場面(シーン)を上記の条件を満たすように書くだけでよいのです。そう考えると、とても気が楽になりますよね。




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