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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
再考篇〜振り返ってもう一度考えましょう
189/1500

189.再考篇:舞台先のあらすじづくり

 三回にわたる「あらすじづくり」の締めくくりです。

 今回は「舞台(世界)から創る」方法になります。

舞台先のあらすじづくり


「キャラ先」「ストーリー先」があれば「舞台先」のつくり方もあります。

 舞台つまり「世界を創る」のはとても面白い作業です。

 あまりに面白すぎて「世界を創る」ことに血道を上げ、肝心の小説を書くことさえ忘れてしまうこともあります。

 それだとあまりにももったいないので「世界を創る」のならそのまま小説にしてみませんか。




あなたの創ったのはどんな世界ですか

「世界を創る」のは人々の営みを創ることになります。

 どんな惑星に、どんな大陸や島があって、どんな国があって、どんな民族のどんな人達がどのように暮らしているのか。これを丸々創り出すわけです。

 壮大なSF小説ならその惑星はどの星系に属していて、それがどの銀河に属しているのかということも決めることがあります。

 たとえば大陸があったらそれは北半球でしょうか南半球でしょうか。

 地球では北半球に住む人の数が多いので、標準的な地図は北が上になるようにして作成されています。ですが南半球にあるオーストラリアなどでは南が上になっている地図が存在しているのです。

 当然のことなのですが、意外と忘れられがちなので書いてみました。


 大陸だとするとどこに山脈があり、どこに河川が流れているのでしょうか。基本的に山脈が河川の湧出源になります。山々に降った雨が谷に集まって河川の源になるからです。

 そして文明は河川のそばに発生します。水は命の源です。水を飲みに行く手間よりも、住処を河川のそばにしたほうが効率が断然良くなりますよね。だから河川のそばに人々が集まり、そこに文明が生まれるのです。

 地球でも四大文明のエジプト文明はナイル川、メソポタミア文明はチグリス川とユーフラテス川、インダス文明はインダス川、黄河文明は黄河の流域に発生しています。

 中国については黄河だけでなく南の長江の流域にも文明が発生していたようです。これを長江文明と称することがあります。


 また必ずしも河口付近に文明が発達したわけではありません。黄河文明は黄河の中流域に発生しています。

 これは黄河が頻繁に氾濫したため、河口付近に住居を構えるのが難しかったからです。そのため伝説では堯帝・舜帝が治水に乗り出すのですがことごとく失敗します。

 そこで治水に一定の功績があった禹を次の指導者に定めたのです。こうして生まれた夏王朝の禹王は黄河の中流域に都を定めて治水工事を行ない定住地としました。この都を後継の殷も周も受け継いできたのです。『三国志』に詳しい方には「中原」と呼べば場所がわかるでしょうか。

 黄河の河口付近にあたる斉の国は周の武王の軍師であった太公望呂尚(姜子牙)が治めました。呂尚が真っ先に手をつけたのが治水工事です。完成して人々が安定して生活ができるようになり、桓公の頃に管仲(管夷吾)が経済面で中華を支配して春秋時代最初の覇者となりました。このように治水は繁栄の源なのです。

 エジプト文明でもナイル川の氾濫が頻繁に起きましたが、こちらではかなりポジティブにとらえられていました。ナイル川が氾濫するとよく肥えた土地になったのです。そこに小麦を植えれば収穫が増えて食糧が大量に確保できました。




その設定は小説で使えますか

 このように土地ひとつにしても決めておくべき要素はたくさんあります。

 ですが「そのすべてが小説に必要なのか」と問われれば、答えは「否」です。

 もしすべてを小説に書いてしまうとそれだけで文字は埋まってしまいます。出来あがったものは「小説」でも「物語」でもなく「地理の教科書」です。あなたは「地理の教科書」を読み手に読ませようとしていませんか。

「世界を創る」ことはとても楽しいのですが、このように全体的にムダが多いものなのです。

 小説で使う範囲の設定だけを決めておくのがよいでしょう。


 水野良氏の著作である『ロードス島戦記』と『魔法戦士リウイ』は同じ世界を共有していて歴史的にも同時代の作品ですが、『ロードス島戦記』ではアレクラスト大陸のことをロードス島の存在する場所を説明する基点としか用いていません。

 そしてアレクラスト大陸の話も基本的になく、せいぜい港町のライデンで大陸と交易していることやフレイム王国のカシュー王が大陸で剣闘士をしていたことくらいしか書かれていません。

 つまりアレクラスト大陸の詳細についてはまったく記されていないのです。

『ロードス島戦記』はあくまでも「ロードス島」で起こった出来事について書いた小説になります。

 そのためアレクラスト大陸について取り立てて詳しく書く必要がなかったのです。

『ロードス島戦記』でわかるように「世界を創っ」ても用いる範囲が限定的であれば、用いることのない設定を決める必要はありません。存在を創ること自体は悪くないのですが詳細は要らないのです。

 アレクラスト大陸のことについて書きたければ『魔法戦士リウイ』のように別の物語を書くときにきっちり設定を詰めるだけで事足ります。

 なにも『ロードス島戦記』の段階でアレクラスト大陸全体の設定を詰める必要はありません。

 そう考えが及べば「世界を創る」とき、どこに注力すればよいのか判断できるのではないでしょうか。




世界設定を活かした物語を考える

「世界を創る」ことは楽しいです。そしていろいろと設定を作っていくことになります。ですが小説で用いることができるのはその中のごく一部です。

 そうだとしても、できうる限り「世界設定を活かした物語」を考えてみましょう。

「さまざまな職業」を創り込んだのなら、その職業を活かすような物語を考える。「さまざまな人種」を創り込んだのなら、その人種を活かすような物語を考えましょう。「さまざまな国や自治領」を創り込んだのなら、国際紛争を主題とした世界を股にかけるような物語にできないでしょうか。


 せっかくあなたが知恵を絞って創りあげた世界です。その設定を有効に活用しましょう。「鶴翼の陣」や「魚鱗の陣」などの戦陣をオリジナルで数多く考えついたら、戦争の小説を書いてぜひ活かしてください。


 私は「戦術」を考えついたので『暁の神話(旧題:希望の灯)』を書きました。架空の大陸が舞台ですが、小説内で使っているのはあくまでもその一部にすぎません。

 現在構想途中の『伝説(仮)』は同じ大陸で『暁の神話』の数百年後の話です。そして舞台もより広くなります。使うところだけ設定を随時追加していくだけでもじゅうぶんに小説は書ける。その「見本」となれるような作品を書きたいですね。

 自らハードルを上げてどうするんだという話ですが。




創世神話を考える

 あなたの小説の「世界を創る」のはあくまでもあなた自身です。ですが創った世界はどのようにして成立したのか。これを考えておく必要があります。四大文明が河川のそばに誕生したような理由が必要です。

 そこで用いると便利なのが「創世神話」になります。

 創世神話として有名なのは「ギリシャ神話・ローマ神話」と『聖書』ではないでしょうか。またある程度知識があれば「北欧神話」や日本の神話である『古事記』も視野に入ると思います。

 たいていは最高神がいて、そこから神々が発生していく。そして神々に対抗する存在が生まれて神々との戦乱が勃発する。その結果天地が分かたれる。神々は地に住まう人間をひと(つが)い生み出す。そこから人間の歴史が始まっていくという流れが多いのです。

 日本の神話である『古事記』は天之御中主神アメノミナカヌシノカミから始まります。そこから次々と神々が発生していくのです。日本列島を誕生させたイザナギとイザナミもその流れで発生しています。

 このような創世神話を考えることが最も高次元の「世界を創る」ことなのです。おそらく妄想の中でもとくに極まった妄想でしょう。


『ロードス島戦記』の舞台であるロードス島も、その成立は神々の戦いに端を発しています。神話レベルまで考えられたファンタジーは、それだけでじゅうぶんに価値があるのです。


 また、不思議な力が使える世界でしょうか。魔術とか呪術とか精霊とかの存在や、科学が発達した「超科学」な力がありはしませんか。

 そういった不思議な力があると、それだけで世界は大きく変わってくるはずです。力の発生理由などを考えておくのも創世神話のひとつだと考えてください。





最後に

 今回は「舞台先のあらすじづくり」について述べてみました。

「世界を創る」ことが大好きな人って実はとても多いのです。心の中に「自分の世界」を持たない人はまずいません。

「自分の世界」が無ければ、現状で何かに挫けても希望を見出だせないからです。

 ほとんどの人は「自分の世界」を持っています。ならその世界を舞台にした物語を、より多くの人に伝えたいとは思いませんか。

 思っていただけたら新たな小説の幕開けとなります。「どんな人でも一片の長編小説は書ける」と言われています。それも「自分の世界」を持っているからです。

 二作目以降の長編小説が書けるかどうかは「世界を創る」力が問われます。「キャラ先」の書き手であっても「舞台先」でなければ二作目は作れません。「キャラ先」でしか書けない人は、最初の一作を延々と連載し続けるしか生き残る術がなくなるのです。

 もしこれから小説で身を立てようとお思いなら、「舞台先」で「世界を創る」こともできるようになってもらいたい。

 そうすれば多種多様な物語を紡いでいけるようになります。




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