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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
基礎篇〜右も左もわからないときは、まずは基礎から
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18. :地の文と会話文

 あらすじが出来たら次は「脚本」を創りましょう。

 「脚本」は舞台設定と登場キャラの列記、会話文とト書きの組み合わせで成り立っています。

 あらすじから直接小説を書こうとすると、よほど脳内に強いイメージがない限り、書き進めていくほどに設定がブレてきます。

 それを防ぐためにまずは手っ取り早く「脚本」にしていくのです。

()の文と会話文


 小説で出てくる文は大別して二種あります。地の文と会話文です。

 地の文は状況や状態を説明したり程度を表したりし、会話文は他人との言葉のやり取りであったり己の心の内を表したりします。ただ、地の文の中に会話文を埋め込むこともあるので単純に二種に分けられるわけではありません。

 これは脚本でいうところの「ト書き」と「会話」にあたります。




脚本を創る

 小説を書くときはまずあらすじを創ります。あらすじが出来あがったら「会話」と「ト書き」だけでエピソードのやりとり、つまり脚本を創ってみましょう。何人称視点の小説かを明確にし、それに従って会話とト書きを書いていくのです。

 まず文書ファイルの冒頭に舞台設定を書きます。状況シチュエーションつまり時間と場所を決めるのです。そしてこのエピソードに出てくるキャラの名前も列記しておきます。こうしておけば、どのエピソードに誰が出演しているのかが後日でも一目瞭然です。その場にいなかった人が後にこのエピソードについて語るという物語の破綻も回避できます。

 このあたりもあらすじを創る過程で人物(キャラクター)設定と舞台設定が同時に決まっていくという所以です。

 舞台設定が終わったら何人称視点かを明確にしながら、いよいよキャラ同士の会話と反応や立ち振る舞いを書いていきます。

 ト書き(地の文)は行頭を全角の空白一字をいれて一つ下げて書き出します。会話文は行頭に言葉を発した人物の名前を書いてから「 」を書いてト書きと明確に区別できるように計らいましょう。

――――――――――――――――

舞台設定:夕暮れの下校時。登場キャラ:山田、田中。視点:田中。


 田中は山田と一緒に下校していた。

山田「そういえば田中って美穂のことが好きなんだっけ」

 と突然山田が田中に話を振ってきた。

田中「そうだけど、それがどうかした?」

 と田中は少し照れながら切り返した。

山田「実は今朝その美穂から大事な話があるから明日時間を作ってくれないかと言われてさ」

 と山田は田中の顔色を窺うように見つめた。橙色の太陽に山田のシルエットが見える。

田中「まさか美穂のやつ、お前のことが好きだってことか!?」

 と田中はつい反射的にキツい声を上げた。

山田「お前との仲を取り持ってくれという話かもしれないだろ」

 と山田はいささかも狼狽した様子を見せずに答えた。

田中(でも山田も本心では自分のことが好きだったらいいなとか思っているんだろうに)

 と田中は一方的に嫉妬心を募らせた。

――――――――――――――――

 という具合ですね。




脚本を書く意図

 会話文はすべて行頭に発言者の名前が書いてあるのでト書きを見なくても誰の発言かがわかります。なので会話の流れが不自然になっていないかは会話文だけを拾い読みすれば検証できるのが利点です。

 もちろん小説に変換する際は行頭の発言者名は削除します。その代わりト書きを地の文へ変換する際に、誰の会話文なのかを説明していくのです。

 ト書き(地の文)は基本的に「と〜」で始まるため「ト書き」と呼ばれています。こちらで発言者の行動や反応を書いていくのです。

 会話文だけではどの程度感情や動きが大きいのかわかりません。

 ト書きでその不明瞭な部分を補って、演者がどう振る舞って演技をすればいいのか筋道をつけるのです。

 「小説を書く」という行為と「脚本を書く」という行為は本来別物です。

 ですが「小説を書く」際の下書きとして「脚本を書く」ことにしておくと、手っ取り早く物語の流れを書きつけることができます。

 物語の流れが早期に掴めると、続きを書く意欲も湧いてきますからスラスラと「脚本を書く」筆が進んでいくことでしょう。

 以上のように会話文とト書き(地の文)を用いてまずは脚本を仕立てていきます。




最初の推敲

 あらすじがすべて脚本化されたときに、一回目の推敲作業に入ります。

 まずはエピソードの順序が適正かどうかを見ます。あらすじ段階では「いい」と思った順序でも、会話のやりとりの流れを見ていくと「このエピソードは前に入れたほうがいいな」と気づくこともあるのです。

 エピソードの入れ替えをやるなら早い段階のほうがいいので、最初の推敲対象は「エピソードの入れ替え」になります。

 「エピソードの入れ替え」が終わったら、各エピソードの流れを見ます。ここで遅滞があったり展開が急すぎたりしていないかをチェックするのです。

 書き慣れてくればこの段階でひとつのエピソードにかける原稿用紙の枚数も調整します。ひとつのエピソードでどれだけの枚数を費やすべきなのか。そのエピソードの重要度にもかかわってきます。

 どの分量のト書きがどの分量の地文へ置き換わっていくかは経験がないと判断できません。枚数調整はじゅうぶん書き慣れてからにしましょう。

 ただ冗長になる会話やト書きは思い切って削除したり、ト書きで簡潔に済ませたりして、できるだけ文字数が減るように努めます。




会話文と心の声文、説明文と描写文

 前記の作例で会話文が「 」のものと( )のものがありましたよね。「 」が声に出して言う言葉で、( )が声に出さないで言う言葉つまり心の声です。会話文にはこの二種類があります。

 書き手によって( )は〈 〉や〔 〕を使う方もいますので、「 」と区別のつくカッコを用いましょう。

 ト書きは地の文へ変換する際に説明文と描写文に分かれていきます。

 説明文は「桜色の花をつけた木だ。」「彼女が前髪を掻き上げた。」というように、話者から見た情報を単に説明するだけの文です。

 描写文は「桜色のこじんまりとした花をつけた木だ。」「彼女はほのかに頬を赤く染めた。」というように、話者の主観を入れて状態や状況や程度の変化を描き写している文です。

 説明文だけではまったく具体性に欠けて読み手はイメージを膨らませられません。かといって描写文が延々と続くと、読み手はそこに「書き手の自己陶酔」を見て取って一気に興醒めします。

 会話文(と心の声文)・説明文・描写文の配分こそが書き手独自の文体といえるでしょう。

 自分の好きな小説を何度でも読み返して、会話文・説明文・描写文の配分や書かれ方を丹念に研究してみましょう。

 そこから自分で書きたい文体と、実際に自分が書ける文体とが明確になってきます。





最後に

 今回はあらすじを脚本にする作業を通じて「地の文と会話文」について述べました。

 あらすじが先にありきなので、行き当たりばったりのその場その場の判断をしながら小説を書きたい、その場当たりな書き方こそが小説を書くダイナミズムだという方にはオススメできません。

 ただ初心者が場当たりな書き方をしようとすると、結局何も書けない時間が過ぎていき、結局一文を書くことすらなく挫折してしまいます。

 とくに初心者の方はあらすじをしっかりと創り、それをいったん脚本に仕立てる工程を踏みましょう。

 そうすると書きたい小説が少しずつ形になってきていると実感できます。

 わずかでも進んでさえいれば、いつか必ず小説は完成するのです。




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