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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
応用篇〜小説を書くために一歩踏み込んでみる
145/1500

145.応用篇:テーマの裏技

 今日は「テーマの裏技」がテーマです。

 先にテーマを決めるのが普通ですので裏技は後から決めることをいいます。

 ただ途中で決めたら振り返って直す必要があるので注意です。

テーマの裏技


 小説には「テーマ」が必要です。

 しかし「テーマ」を大上段に構えて執筆していると、どうしても作品がお説教臭くなります。

 ここでこのキャラにこんなセリフを言わせてやろう、ここでこのキャラにこう動いてもらおう。

 書き手のその演出がいちいち「テーマ」に則ったものになるからです。

 では「お説教臭くない」小説はどう作ればよいのでしょうか。




テーマを決めない箱書き

 身もふたもない言い方になりますが「テーマを決めずに箱書きとあらすじとプロットを書けば、テーマによる説教臭さ」はなくなります。

 小説には「テーマ」だと言っていたのに、初級篇に戻って「ノー・テーマ」で「箱書き」を書けという。私はかなりの分裂的な考え方なのでしょうか。

 別にそういうわけではありません。あくまでも「説教臭く」ならないようにしたいなら最初はテーマを決めないほうがいいですよ、ということです。


 小説に限らずマンガなどの「作品を書こう」と書き手が思い立つのは、だいたいが「こんなキャラクターが活躍する物語が書きたい」「こんな感動的なシーンやかっこいいシーンを書きたい」「こんな佳境(クライマックス)を書きたい」「こんな結末(エンディング)を書きたい」というアイデアが湧いたときでしょう。


 なら「テーマ」など決めず、最初からその「作品を書こう」と思い立ったシーンを主軸に置いて作品の「箱書き」を作っていきましょう。

 そのときは変に「テーマ」を意識せず、書きたいものを自由に書くのです。

「このシーンで主人公はこうやってかっこよく決めたい」と思っているのなら、そのシーンが頭から消えないうちに「箱書き」を書いてしまいましょう。

「箱書き」についてはコラムNo.46「中級篇:箱書きを書く」、コラムNo.73「実践篇:箱書きの書き方」を参照してください。




箱書きを取捨選択する

「ノー・テーマ」で「箱書き」を書く場合、すべての「箱書き」が使えるわけではありません。

 ある程度方向性が等しく、物語の流れが無理せず通る「箱書き」だけをひとまとめにして構成を考えてください。

 そして今回使えなかった「箱書き」はストックしておくとよいでしょう。

 別の作品を書くときにメインのシーンとして使えるかもしれませんし、サブシーンで盛り込めるかもしれないからです。

「ノー・テーマ」の場合はとくに「箱書き」の脈絡がなくなります。

 思いついた「箱書き」だからすべて使おうなどと思わないでください。

 あなたにとって小説はこの一作限りではないのです。これから先、何作も「三百枚」「十万字」を書くことになります。

 そのときに以前思いついた「箱書き」を利用するのです。

 この一作を最後に絶筆するというくらいの覚悟があるなら引き止めはしませんが、たいていの書き手にとって人生はまだ長いでしょう。

 つまり何作も書くゆとりがあるはずなのです。




テーマは書き手の知識と感情の枠を出られない

 かなり散漫な「箱書き」を元にして「あらすじ」と「プロット」が出来たと思います。

 ではその「あらすじ」と「プロット」を何度でも読み返してみてください。

 すると「あらすじ」の背骨(バックボーン)を構成しているもの、プロットである程度一貫しているものがあることに気づくはずです。

 わかりましたか。それこそあなたが作品で読み手に伝えたかった「テーマ」なのです。そしてこれはあなたの「命題」でもあります。

 書き手が書きたいものを書いた。ですが曖昧模糊とした「あらすじ」や「プロット」から、全体を通した「テーマ」「命題」が見つかります。

 これは「テーマ」が「書き手が知識や感情の中に持っているもの以外からは生まれない」という、「テーマ」の実態があるからです。

 たとえば「死」について深く考えたことのない書き手が「死」をテーマにして小説を書いたとしても表面的な表現にしかなりません。


 乳がんの闘病をしながらブログを書き続けた故・小林麻央氏は「死」について深く考えていました。

 だからこそ対になる「生」を魅力的に発信することができたのです。

 そういった深い考えもなしに「死」を「テーマ」に据えてしまうとどうしても上っ面だけの作品になってしまうのです。

「死」をテーマにして作品を作ろうと思ったなら、東洋でも西洋でも構わないので思想書の類いはある程度読み込んでいなければなりません。

 それが血肉になって知識と感情へ及んだとき、初めて「死」をテーマとした小説を書くことができるようになるのです。

 現状あなたは「死」についてどの程度考えが及んでいるでしょうか。


 だからこそ書き手は時間を見つけてはあらゆる情報を貪欲に集めなければなりません。

 他人の書いた小説や歴史書、アニメ・ドラマ・映画などの映像作品、流行している歌といったものに数多く触れておくべきです。

 またテニスやゴルフなどスポーツをするのもいいでしょう。

 体を使うことで頭の血流も増しますし、気分転換にもなって新たな発想が生まれるかもしれません。

 そうやって書き手の知識と感情が豊かになれば、自然と小説の「テーマ」は幅広く設定できるようになります。

 つまり「高いレベルのテーマを書けるようになるためには、書き手はそれだけ高いレベルが要求される」ということです。

 ただそうなるためにはそれなりに時間がかかりますから、今すぐ改善できる問題ではありません。

 今できることは「ノー・テーマ」で「箱書き」を書いてあらすじとプロットを構成していくことだけです。




テーマを後づけしてみる

 前述しましたが「テーマ」を決めないで箱書きを書いて「あらすじ」と「プロット」を作れば、その中に「テーマ」と呼べるようなものがにじんできます。

 無自覚のうちにあなた特有の思想「命題」が反映されているはずだからです。

 であればそれを「後づけのテーマ」として掲げてみましょう。

 掲げた「後づけのテーマ」を元に「プロット」へ手を入れて修正していくのです。修正はできるかぎり最小限に抑えます。

「箱書き」をいじることはやめましょう。「シーン」を大胆にバッサリと切り捨てたり大幅に書き加えたりしてもなりません。それではあなたが本来書きたかった作品に仕上がらないからです。

「後づけのテーマ」と反する出来事の解決シーンがある場合に「後づけのテーマ」に沿うように解決方法を改変する。その程度でかまいません。

 改変に伴って「プロット」の前後もいくつか設定を変更しなければならなくなることもあるでしょう。

 そういう細かな変更を抜け目なく行なってください。

「テーマを後づけする」ときは矛盾の発生がいちばん怖いのです。





最後に

 今回は「テーマの裏技」について述べてみました。

 中級篇以降で語ってきた「テーマ」について、初級篇の「ノー・テーマ」をもう一度持ち出すのです。

 そうすると「説教臭くない小説」が出来あがります。

 最初から「テーマ」を振りかざすと、その「テーマ」の呪縛を受け続けて、箱書きもそこから出られません。

 でも「ノー・テーマ」なら箱書きは自由を得ます。

 きちんと「テーマ」を決めて書けるようになってからも、「閑話休題」のエピソードを思いつこうとするときなどに「ノー・テーマ」は意外と使い勝手がいいのです。

 というわけで「テーマの裏技」として「あえて『ノー・テーマ』で」というのもありでしょう。




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