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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
応用篇〜小説を書くために一歩踏み込んでみる
132/1500

132.応用篇:もしも○○だったら

 「もしも○○だったら」どんな世界が広がっているのでしょうか。

 そもそも小説にまったくフィクションがないなんてことあるわけないですよね。

もしも○○だったら


 ノンフィクション以外の小説はすべて「もしも○○だったら」というフィクションを前提にして作られています。

 そして実はノンフィクション小説もどこかしらに「もしも○○だったら」という描写が書かれているものです。




実はノンフィクション小説もフィクションだらけ

 そもそも書き手が主人公でないノンフィクション小説も実はフィクションだらけなのです。

 いくら時代考証をし、情勢を調査し、人物を調べあげたとしても真実とまったく同じにはまずなりません。

 それを書き手が頭の中で重ね合わせて、ある出来事が起こったら「その人物はどういう選択をするのだろうか」という「既成事実」を導き出すのです。


 一時期話題になったウォルター・アイザックソン氏『スティーブ・ジョブズ』もMacやiPhoneやiPadでおなじみのAppleを創業したスティーブ・ジョブズ氏について周辺を取材し、関係者の話を聞き取って伝記としてまとめられています。

 ジョブズ氏は自身でその伝記をいっさい読まずアイザックソン氏にすべてを一任していたので、どこまでが真実でどこまでが虚構なのかを判別するのが難しいのです。のちにブレント・シュレンダー氏&リック・テッツェリ氏『Becoming Steve jobs スティーブ・ジョブズ 〜無謀な男が真のリーダーになるまで〜』はアイザックソン氏の伝記とは異なる証言をまとめて出版されました。シュレンダー氏&テッツェリ氏版のほうがより真実に近いのではないかと思われるエピソードも載っています。

 このようにノンフィクションであっても集める素材が変われば内容も変わってしまうのです。ノンフィクションの伝記であってもどこかにフィクションがある証拠といえます。


 もし書き手が主人公の小説(これを「私小説」と呼びます)であっても主人公以外のキャラが考えていることについて書き手である主人公がすべてを知りえるはずもありません。そこにフィクションが入り込むのです。

 ノンフィクション小説の「○○というのが真相だ」というのは詰まるところ「もしも○○だったら」のフィクションと同じなのではないでしょうか。ノンフィクション小説にはフィクションが多分に含まれている。ノンフィクション作家もそう認識しなければなりません。

『ピクシブ文芸』には「エッセイ・ノンフィクション」というジャンルがあり、『小説家になろう』にも「エッセイ」「ノンフィクション」のジャンルがあります。このコラムもこのジャンルに投稿しています。(『カクヨム』では「創作論・評論」ジャンルにしています)。

 ですが「ノンフィクション」小説はまず投稿されていません。せいぜい日記を書く人がいるくらいのものです。

 日記はノンフィクションというよりエッセイに近いととらえるので賛否両論あると思います。




フィクション

「もしも○○だったら」とはフィクションの出来事です。英語の「if」に当たります。

「もしもタイムリープできたら」「もしも超能力が使えたら」「もしも魔法が使えたら」「もしも変身できたら」「もしも織田信長が『本能寺の変』で明智光秀を返り討ちにしていたら」「もしも明治維新が失敗に終わったら」「もしも太平洋戦争でアメリカ軍が原子力爆弾を広島と長崎に落としていなければ」などさまざまな「if」が考えられるでしょう。


 フィクションを小説へ組み入れるには「もしも○○だったら」登場人物はどういう選択をするのだろうかと考えることから始めます。

 上記の例からとれば「もしも歴史上の真実が違っていたら」その後の歴史はどうなってしまうのだろうか。

「もしも超常的な力を持っていたら」登場人物はどう振る舞うだろうか。そのことを考えるのです。


 賀東招二氏『フルメタル・パニック!』は「ソビエト連邦が崩壊していなかったら」という「歴史if」の世界観になっています。

 鎌池和馬氏『とある魔術の禁書目録』は「現代社会に超能力や魔術が混在していたら」という「技術if」の世界観です。

 このようにフィクションとは物語の「もしも」「if」要素にあたります。

 それにより世界は、登場人物はどうなってくるのでしょうか。当然現実世界とはかけ離れていきますよね。

「プロット」に記す「場面(シーン)」ではどのように「もしも」「if」要素が効いてくるのかを考えるのです。その積み重ねが「エピソード」であり、小説でもあるのです。




フィクションによる世界観構築

 どのような「もしも」「if」要素を考え出せるかが書き手の腕の見せ所になります。

「剣と魔法のファンタジー」であっても、J.R.R.トールキン氏『指輪物語』やTRPGテーブルトーク・ロールプレイングゲームのゲイリー・ガイギャックス氏『Dungeons & Dragons』に準拠した「もしも」「if」要素かもしれませんし、ゲームブックのスティーブ・ジャクソン氏『Sorcery!』シリーズかもしれません。

(ゲームブックとは「ページを読みながらサイコロを振って出た目で指定されたページに飛んで結果を知る『ゲームのように遊べる』書籍」を指します。ページ管理が面倒ですが『pixiv小説』で再現することはじゅうぶんに可能です)。


 日本の「剣と魔法のファンタジー」といえば栗本薫氏『グイン・サーガ』に準拠した「もしも」「if」要素かもしれません。それら先例に拠らないオリジナルな「もしも」「if」要素を考え出せたら、書き手オリジナルの確固たる世界観が出来あがります。

 水野良氏『ロードス島戦記』は当初『Dungeons & Dragons』を用いたリプレイ企画でそれに準拠していましたが、のちに出版されたリプレイ小説では『月刊コンプティーク』版とは異なり『ロードス島戦記RPG』というオリジナルTRPGの世界観でリライトされたのです。同じく水野良氏『魔法戦士リウイ』はグループSNEの『ソード・ワールドRPG』で示されたアレクラスト大陸というシェアワールドを用いた作品となっています。ちなみに『Dungeons & Dragons』と『ロードス島戦記RPG』は現在販売されておらず、『ソード・ワールドRPG』だけが現在『ソード・ワールド2.0』として生き残っているのです。

(この投稿ののち、『Dungeons & Dragons』第七版、『ロードス島戦記RPG』の改訂版、『ソード・ワールド2.5』が次々と発売されていきました。さらに『Tunnels & Trolls』完全版、『Advanced Fighting Fantasy』第二版も発売され、黎明期のTRPGが軒並み復活しています)。

 シェアワールドでいえば『クトゥルフの呼び声』に代表される『クトゥルフ神話TRPG』は現在でもルールブックとシナリオが販売されており人気を博しています。『pixiv小説』にも『クトゥルフ神話TRPG』のシナリオが数多く投稿されているのは周知の事実でしょう。試しに「CoCシナリオ」で検索をかけてみてください。思ったよりもたくさん出てきますよ。


 先述の『フルメタル・パニック!』は巨大ロボットのアーバレストが活躍するフィクションですし、『とある魔術の禁書目録』は学園都市で科学と魔術が交差するフィクションとなっています。ともに独創性(オリジナリティー)のある世界観ですよね。

 川原礫氏『アクセル・ワールド』『ソードアート・オンライン』はともにインターネット・ゲームを取り入れた独特の世界観を有しています。

 このように商業的に大当たりした小説は「独創性(オリジナリティー)のある世界観」を持ったものが多くなるのです。





最後に

 今回は「もしも○○だったら」について述べてみました。

 フィクションがまったくない小説というのは私小説で自分だけが登場して「思いついたことや考えついたことや運動してみたことなどを書く」というひじょうに限られたものになります。

 ノンフィクション小説にもフィクションが含まれることは先述しました。

 だからこそ積極的にフィクションを取り入れてオリジナルな世界観を作るのです。それがあなたの小説をオリジナルなものにします。




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