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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
応用篇〜小説を書くために一歩踏み込んでみる
130/1500

130.応用篇:長編はあらすじ四割、プロット四割

 長編小説を書こうと決めたけど、具体的にどうすればいいのでしょうか。

 執筆前までの工程を簡単に書き出してみました。

 「あらすじ」と「プロット」の具体例を改めて書いてあります。

長編はあらすじ四割、プロット四割


 長編小説や超長編の連載小説を書くとき、最も重要なものは「あらすじ」と「プロット」です。「あらすじ」と「プロット」は厳密には違います。

 以下は私なりの言葉の捉え方を書いています。




あらすじとは

「あらすじ」とは物語の骨格です。

「主人公がどうなりたい」から始まって「主人公がどうなった」で終わる、とても小さなお話の形になります。

 たとえば第一章「主人公が魔物を掃滅したい」から始まって最終章「主人公が魔物を掃滅した勇者となった」で終わったら。そ;れが「あらすじ」の根幹を担っているのです。

 その間にどんな「エピソード」を入れていくのか。いくつか「エピソード」を足してみましょう。

 第一章に含めて「主人公が住む村に魔物が攻撃してきたので仲間とともに撃退する」、第二章「主人公の住む地域の魔物を一掃する」、第三章「主人公の住む国が魔物の大侵攻に遭い凄惨な殺戮が行なわれる」、第四章「主人公たちが魔物と戦ううちにラスボスの存在を知る」、第五章「主人公たちが魔物のラスボスを倒す」、第六章「魔物の残党を掃討する旅に出る」という「エピソード」を挟むとします。最終章「主人公が魔物を掃滅した勇者となった」は第六章に含めたほうがすっきりするのでまとめてしまいます。

 今回の長編小説の「三百枚」は全六章で構成することにしましょう。これが「あらすじ」です。目安として章ごとに五十枚を書けばいいことがわかりますね。

――――――――――――――――

第一章「主人公が住む村に魔物が攻撃をしてきたので仲間とともに撃退する」

   「主人公が魔物を掃滅したいと決意する」

第二章「主人公の住む地域の魔物を一掃する」

第三章「主人公の住む国が魔物の大侵攻に遭い凄惨な殺戮が行なわれる」

第四章「主人公たちが魔物と戦ううちにラスボスの存在を知る」

第五章「主人公たちが魔物のラスボスを倒す」

第六章「魔物の残党を掃討する旅に出る」

   「主人公が魔物を掃滅した勇者となった」

――――――――――――――――

 第一章が「起」になります。それを受けて第二章で「承」に進み、第三章で状況が一変するので「転」とする。第四章でもう一度「承」となって第五章でもう一度「転」にします。そしてエピローグの第六章が「結」となるのです。ですので起承転結でいえば「起承転承転結」という形になります。

 第五章の後に第六章を置いたことでエピローグが冗長になっているなと感じたら、第六章の内容を第五章の終わりでコンパクトにまとめてしまってもかまいません。なんならいっさい省いてもかまわないでしょう。

 その場合は第一章から第三章までが変わらず、第四章は「転」のままにし、第五章を「結」にしてしまいます。つまり起承転結でいえば「起承転転結」という形になるのです。


「あらすじ」とはこのように「三百枚」を区切るために「エピソード」を加え、起承転結や序破急をどう当てはめるかを決めたもののことを言います。

「あらすじ」だけできちんと物語になっているのかどうか。これが長編小説を書くうえで最も心がけるべきことなのです。もし「あらすじ」に無理があり物語として成立しないようなら、「エピソード」を加えたり減らしたり並べ替えたり変更したりして物語として成立するように整えなければなりません。

 物語として成立している「あらすじ」があればこそ、「プロット」で迷わないし、執筆中もあれこれ考えずに済みます。

「あらすじ」は「着想力」がものをいうのです。どれだけ「エピソード」で差別化を図れるか。とくに『小説家になろう』で単独ジャンルになっている「異世界転生」「異世界転移」のハイファンタジーでは顕著です。そこらにある「エピソード」だけで「あらすじ」をつくっても、どこかの誰かが同じような小説をすでに書いている可能性が高くなります。




プロットとは

「あらすじ」は「三百枚」を区切って物語になっているように整えることを指しています。

 では「プロット」とはなんでしょうか。

「あらすじ」で決めた「エピソード」を「場面(シーン)」ごとに区切ったものです。そして「場面(シーン)」ごとに状況(シチュエーション)や会話や動作を書き溜めていきます。脚本でいうト書き、アニメでいう絵コンテに当たるでしょうか。


「あらすじ」が出来あがっているので、「エピソード」を「場面(シーン)」で区切っていきましょう。

 たとえばクライマックスの第五章「主人公たちが魔物のラスボスを倒す」を区切っていきます。

「主人公たちが魔物のラスボスの居城までやってくる」「城に入ると強い魔物たちが現れる」「魔物たちを倒しながら先へ進んでいく」「ラスボスのいる場所までたどり着く」「主人公たちの攻撃が通じない」「ラスボスが強力な攻撃を仕掛けてくる」「窮地(ピンチ)に陥った主人公たちが勇気を振り絞る」「ラスボスとの壮絶なバトル」「ラスボスが予期しなかった方法で主人公たちがラスボスを倒す」とこんな具合です。全部で九シーンに分けられました。これで一シーンが原稿用紙「六枚」ほどにまで減ったのです。

 この中でも見せ場はやはり「ラスボスとの壮絶なバトル」場面(シーン)と「ラスボスが予期しなかった方法で主人公たちがラスボスを倒す」場面(シーン)でしょう。

 今回は後者のシーンを取り上げてみます。ここを重点的に書きたいので他を「五枚」にして残り十枚を使ってもいいですね。


 「ラスボスが予期しなかった方法」というのはいろいろとアイデアを出さなければなりません。読み手が簡単に予想できるような方法は、ラスボスも予想しているはずです。

 あれこれアイデアを思い浮かべてみましょう。思い浮かんだらとにかくメモをとるべきです。今回は使えないけど将来の作品で使えるアイデアかもしれませんからね。

 今回は主人公たちの中からひとりが身を賭して突進し、ラスボスの意識をそのひとりに集中させることにします。するとラスボスの意識外に出た残るキャラは、一気にラスボスへ詰め寄っても気づかれにくくなるのです。つまり一人を犠牲にした奇襲が成立します。

 仲間を捨て駒にする作戦は小説では頻繁に用いられる手段です。

 ですが愛着の湧いているキャラが犠牲になるのは、読み手の心を強く揺さぶります。

 犠牲になるキャラが魅力的ならそれだけ効果も高くなるのです。小説のテクニックとしては陳腐だけどとても効果があります。


 では今回は仲間のドワーフが一心不乱にラスボスへ突進していくとしましょうか。ドワーフは短足で走力は遅いのですが動作は機敏です。ラスボスに攻撃を仕掛けられてもある程度かわせます。もちろん距離が詰まるほど反応速度が要求されますから、ドワーフの機敏さをもってしても避けきれない攻撃も出てくるのです。攻撃を食らっても怯まず突進していけばラスボスの注意は完全にドワーフ一人だけになります。

 主人公たちが反撃する大チャンスが訪れたのです。

 主人公たちは(おのおの)の技量によってラスボスに狙いを定めて技を繰り出します。ラスボスがドワーフにトドメを刺したと同時に、ラスボス自身も主人公たちの総攻撃を避けきれずに倒されるのです。

 これでラスボスが倒せました。そうなれば死んだドワーフの弔いも必要になりますね。愛着のあったキャラなのですから、必ず丁寧に弔いましょう。蔑ろにすれば読み手から「書き手都合かよ」と総ツッコミされること必定です。


 漠然とした「場面(シーン)」から具体的な行動が示される。これが「プロット」の雛形です。これをさらに細かく分けていきます。各キャラはどんなことを思い、どんな動きをし、どんな言葉を発するか。それを決めるのが「プロット」なのです。

 これって執筆と変わりないんじゃないか。そうお思いの方もおられるはずですね。ですが「プロット」は特段「描写」をする必要がありません。その「場面(シーン)」で繰り広げられることを「説明」するだけでいいのです。

 もちろん走り書きや箇条書き程度でかまいません。「どんなことを思っていて」「どんなことをして」「どんな言葉を発する」かを書いていくだけ。「場面(シーン)」の流れをつかむために「プロット」を書くのです。


「プロット」をすべて書き出すとそれだけで三千字を超えてしまうため、ここではプロットづくりの流れだけを取り上げてみました。

 明確な「あらすじ(着想力)」と「プロット(構想力)」があれば、執筆で悩むのは「描写(描写力)」のみです。どのように「描写」していけばいいのか。

場面(シーン)」の流れは「プロット」が示してくれています。

 その流れに乗って、「説明」と「描写」の地の文、「会話」と「心の声」の会話文、この四つを組み合わせる作業だけでいいのです。

 これなら長編小説だってスラスラ書けてしまいます。それも恐ろしく簡単にです。

「プロット」は「構想力」が試されます。「あらすじ(着想力)」の流れを損なわずに、どれだけ「場面(シーン)」の流れを構築していくか。「プロット」を数多く書くことで「構想力」は高まります。





最後に

「あらすじ」で「エピソード」を決めて物語の流れを作り、「プロット」で「エピソード」を「場面(シーン)」で区切って「場面(シーン)」の流れをつかみます。そして「場面(シーン)」の中に行動や会話を書き溜めていくのです。

 これだけお膳立てしておけば「長編小説が書けない」という問題は簡単にクリアできます。

「長編小説が書けない」人は「書きたいキャラ」を先行して作り、行き当たりばったりの連載をしようとしているからです。

「あらすじ」を書き「プロット」を仕上げれば、話の筋に一貫性が出てきます。

 迷うのは「説明」「描写」「会話」「心の声」の四つの文だけです。これは「描写力」が問われます。そう「描写力」はそれほど重要ではないのです。

 長編小説で必要な「着想力」「構想力」「描写力」のうち「着想力」は「あらすじ」が、「構想力」は「プロット」が担います。残る「描写力」が執筆作業に当たるのです。

 だから「あらすじが四割、プロットが四割」なのです。ここが固まってしまえば、執筆で物語がブレることはありませんからね。




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