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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
応用篇〜小説を書くために一歩踏み込んでみる
129/1500

129.応用篇:長編小説を書く

 どうしても小説がうまく書けない。そう思う方こそ「長編小説を書く」べきです。

 長編小説にはあらゆる小説に必要な基礎が詰まっています。

長編小説を書く


「これから小説を書こう」「前回よりもっとよい小説を書こう」「出版社の賞を獲れる小説を書こう」「プロの小説家になろう」。新たに小説を書く場合のモチベーションはだいたいこの四つだと思われます。

 実はこの四つにはある共通点があります。それは「長編小説である」ことです。

 長編小説とは四百字詰め原稿用紙でだいたい二百五十枚から三百五十枚ほどになります。文字数では十万字から十五万字といったところです。




長編小説は本当に長い

 小説を書いたことのない人から見ると三百枚前後も書かないといけないのかとお思いになるでしょう。

 小学校時代の読書感想文が四百字詰め原稿用紙五枚程度だったとしてその六十倍もの量を書かなければならないのです。

 読書感想文ですら字数を埋めるのに苦労したのに、その六十倍の字数を埋めるなんて無理。そう感じられたのなら小説なんて書かないことをオススメします。

 字数を前にして立ちすくむだけなら「小説家」なんて目指すべきではありません。

「小説家」を目指すのなら「たった三百枚書けばいいわけね」と事も無げに語れるくらいの胆力が欲しいところです。




三百枚といっても

「三百枚」に怖気づいたのでは小説家など務まりません。でも安心してください。「三百枚」といっても実はそれほど怖くはないのです。

 たとえば長編小説を全八章に仕立てたらどうでしょうか。「三百枚」を全八章ですから、一章につき三十八枚書けばいいのです。「三百枚」と三桁あったものが三十八枚と二桁に減りました。ほら幾分気が楽になったでしょう。

 八章仕立てに決めたとします。物語には最低限「導入プロローグ」と「結末エピローグ」が必要です。第一章は「導入」、第八章は「結末」に割り当てれば残る「エピソード」は六章ぶんになります。

『小説家になろう』で人気の「異世界転生ファンタジー」なら第一章は「主人公が現実世界で死んで異世界に転生する」エピソード、第八章は「主人公が勇者として認められる」か「主人公が現実世界に戻ってくる」エピソードのどちらかでしょう。「勇者に認められたのち現実世界に戻ってくる」のであれば第七章が「主人公が勇者として認められる」、第八章が「主人公が現実世界に戻ってくる」で埋まりますから、残り五章です。

 ほら「三百枚」がどんどん埋まっていきますよ。何章仕立てにして「エピソード」をいくつ作ればいいのか。それを考えていけば「三百枚」なんて実は怖くないのです。




これから小説を書くなら

「これから小説を書こう」と思ったら、まず長編小説を書きましょう。

 えっ? カルチャー・スクールや小説講座では「まず短編小説を書け」と言われるけど。そう思った方もいますよね。おそらく私もそのようなことを書いてきたはずです。

 ですが短編小説はあくまでも「書くことに慣れる」ため、または「ネームバリューを高める」ために書きます。内容なんてほとんど瞬間芸で終わりです。短編小説は基本的に「着想力」だけで書けてしまうのです。状況(シチュエーション)ひとつでどれだけ書けるか。その程度の浅い物語になります。

 小説ではありませんが、私も今このコラムを「着想力」だけで書いています。初級篇と中級篇は私個人のWebサイトに載せていた講座を参考に、大きな流れを意識して「構想」していましたが、今は本を読んでネタを着想したら都度書くようにしているのです。百日も連載していると書くべきことが尽きてきます。そこをなんとかするために「着想力」だけで書いているのです。だから今は「着想力」だけが身につきました。「構想力」や「描写力」はまったく進歩していません。

「構想力」や「描写力」を磨くには、長編小説を書き続けるしかないのです。短編小説では短すぎて「何章に分ける」とか「物語の展開の仕方はどうする」とか「もっとわかりやすいような描写を心がける」とかに注力できません。少しでも注力すると内容がスカスカの「小説のようなもの」が出来あがるだけです。

 だから「これから小説を書こう」と考えていらっしゃる方は、たとえハードルが高くても長編小説を書くべきだと思います。

 たとえ低評価であっても、失敗したポイントを分析して次作に活かしていけば「構想力」と「描写力」は必ず高まってくるものです。




小説賞・新人賞を狙うなら

 小説を書いている以上、書き手の思想を書き連ねて発表するだけで満足してはいけません。

 そんな思想の押しつけは読み手の反発を買うだけです。今どき小林多喜二氏『蟹工船』のような小説を書いても読み手にはウケませんよ。

「小説賞・新人賞」を狙うなら長編小説で勝負すべきです。物語の「着想力」「構想力」「描写力」を余すところなく審査員に見せられます。長編小説なら審査員は書き手の小説を書く基本的な能力が「お手並み拝見」できるのです。

 だから出版社の「小説賞・新人賞」は基本的に長編小説を求めます。「三百枚」をどれだけムダなく活かして書けているのか。たった一本の長編小説で判断できます。


 中編や長編の処女作でいきなり「小説賞・新人賞」を獲れるような書き手はごく一部の天才か話題性があるだけに過ぎません。

 俳優の水嶋ヒロ氏が処女作『KAGEROU』でポプラ社小説大賞を獲ったり、お笑い芸人ピースの又吉直樹氏が初の中編小説であった『火花』で芥川賞を獲ったりしたのは、多分に話題性によるものです。

 事実、水嶋ヒロ氏は次作を書いていませんし、又吉直樹氏は次作の『劇場』が『火花』ほど売れていません。実力で獲ったものならば次作だって売れてしかるべきなのです。売上がそれほどでもないのなら、それは実力よりも話題性重視だったということになります。

 これは「小説賞を獲って小説家になろう」と考えている皆様にも当てはまります。

 どんなに珠玉の傑作を書いても、その他が凡作ならしょせん「平凡な書き手」でしかないのです。

 だから数多くの長編小説を書き続けて「着想力」「構想力」「描写力」を絶えず高め続けなければなりません。




プロの小説家を目指すなら

「プロの小説家になろう」とお思いの方なら超長編の連載小説が書けるようにならなければなりません。小説投稿サイトが出来る前は自らWebサイトやブログを開設して書いたものを都度発表すればよかったのです。自分のペースで書き上げたら投稿していくだけで済みました。

 しかし小説投稿サイトが出来てからは、わざわざ個人のWebページやブログを開設する必要がなくなったのです。

 小説投稿サイトに投稿すれば多くの読み手に読んでもらえるようになりました。ひじょうに便利な世の中になったものです。

 反面、小説投稿サイトをうまく使いこなせないと読み手に注目すらしてもらえません。

 アピール力のある書き手だけが「プロの小説家になって」いきます。どんなアピールかといえば「連載ペースを守って、毎日のように新しい話が読める」ようにすることです。

「連載ペースを守る」には「構想力」がしっかりしていなければなりません。

 どれだけ連載を続けても話の芯がブレない。「構想力」があればこそです。

 川原礫氏は小説投稿サイト『Arcadia』にて後に『アクセル・ワールド』と改題される小説を投稿しています。それより前に自身のブログで『ソードアート・オンライン』を投稿していたのです。だから『アクセル・ワールド』で電撃小説大賞を受賞してからブログの『ソードアート・オンライン』にも注目が集まり、両作が同時にアニメ化の道をたどります。

 超長編の連載小説を書くにはとにかく「構想力」がなければなりません。物語の大枠をきちんと設定したうえでエピソードを作っていくのです。

 行き当たりばったりの連載小説は、泥酔して千鳥足で歩いているようなものでひじょうに危なっかしい。まっすぐ歩いてくれればいいのですが、「構想力」から逸脱してドブにハマったり車に轢かれたりすることだってあるのです。

 そして「構想力」を鍛えるためには長編小説を書くしかありません。短編小説をいくら書いても「構想力」は鍛えられませんし、超長編の連載小説だけだとひとつの連載が続くかぎり「構想力」は固定されてしまって伸ばしようがないのです。

 上記の川原礫氏も『ソードアート・オンライン』の傍ら『アクセル・ワールド』を書いています。つまり次作の『アクセル・ワールド』を書いたことで「構想力」が身についてきたのです。





最後に

 今回は「長編小説を書く」ことのメリットを述べてみました。

 書き手の技量を見切るには「長編小説」を読むしかありません。短編小説(ショートショートを含む)は「着想力」だけの勝負、連載小説はがっちりした「構想力」が求められますが、字数制限がないので「描写力」は鍛えられます。残るは中編小説か長編小説ですが、物語としてきちんと読ませたいのならより長い「長編小説」のほうがオススメです。

「着想力」がそれほどなくても、「構想力」がそれほどなくても、「描写力」がそれほどなくても。それでも「長編小説」は書けます。

 だからこそ練習のために書くなら三要素をすべて伸ばせる「長編小説」が有利なのです。




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