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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
学習篇〜いかに効率よくものにするか
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1248.学習篇:分析用に集めただけで満足しない

 今日は「2の累乗」回目。

「2^0=1」「2^1=2」「2^2=4」「2^3=8」で出来ています。

「24816」回目はありえないので、最初で最後ですね。

 そんな自己満足な本日のコラムは「集めただけで満足しない」についてです。

「分析用」のはずですが、集めるのに夢中になって一冊も読んでいない。

 小説投稿サイトでは過去の受賞作がまとめて読めますから、探し出してブックマークするだけで満足してしまう。

 よくいるんですよね。

 一冊だけでもよいので、まずは「分析しながら読み」ましょう。

分析用に集めただけで満足しない


 受賞作の分析のために作品を集めるのはたいせつです。

 しかし集めただけで満足してしまう方がとても多い。

 たいせつなのは分析することであって、集めることではありません。




百冊より一冊を徹底的に

「小説賞・新人賞」を獲りたいと願っていて、過去の受賞作を集められるだけ集める方がけっこういらっしゃいます。

 その労力と財力には恐れ入りますが、ほとんど役に立ちません。

 直近の「小説賞・新人賞」受賞作と優秀賞作を集めても、百冊は集まるはずです。

 これらをすべて読んで分析できるだけ、時間に余裕のある方はまずいません。

 すでに現役をリタイアして暇を持て余しているような方々なら読む時間はあるでしょう。そうなると「小説賞・新人賞」に応募できるのはリタイア組しかいなくなります。

 リタイア組に今の中高生が読みたがる小説を書けるものでしょうか。かなり怪しいですよね。たとえ池井戸潤氏「下町ロケット」「半沢直樹シリーズ」のような企業小説であっても、現役感がなければ多くの社会人にはウケません。まぁ池井戸潤氏の作品はある種「ファンタジー」ではあるのですが。

 集めるだけ集めて読まない方が多い中、「小説賞・新人賞」を獲る書き手は毎週のように誕生しています。なぜ彼ら彼女らは大賞が獲れたのでしょうか。

 それは過去の受賞作から学んでいるからです。

 百冊読むだけの時間なんてありません。年に十作が関の山な方がたくさんいます。

 それでも受賞できたのです。

 最も効率がよい方法とは。狙いの「小説賞・新人賞」で直近の大賞作だけに絞って読んで分析してください。

 百冊集めて死蔵するくらいなら、一冊だけを十回読んだほうがテクニックは身につきます。

 わざわざ落選した優秀賞作を読む必要もないのです。

 ですが、大賞と優秀賞作の差がどこにあったのかを知るには、「小説賞・新人賞」の同じ回で大賞と優秀賞を獲った作品を読み分けるしかありません。

 比べてみて「ここが鍵を握っていたんだ」と気づければ、あなたは次の作品で「鍵」を意識しながら執筆できます。よかった点を取り込み、悪かった点を排除する。それを積み重ねれば、誰でも大賞が獲れるのです。

「違いのわかる男」とは某コーヒーのCMでしたが、違いもわからないのに改善できる人なんてこの世にいません。「違いのわからない男」は大失敗を犯してから「こうすればよかったんだ」「これをしなければよかったんだ」と気づきます。

 あなたも効率のよい「違いのわかる人」になりませんか。




なにが書いてあり書いていないのか

 大賞作を分析するとき意識していただきたいのが「なにが書いてあり書いていないのか」です。

 たとえば要所で「挫折と復活」が書いてある。全編通して「主人公の親や子供の頃」を書いていない。そんな気づきが得られれば、あなたは「小説賞・新人賞」へ一歩近づけます。

 無意識に「主人公の親(血筋・血統)」や「主人公の子供の頃」について書いてしまうのが凡人です。

 才能のある人は過去にとらわれません。

 ライトノベルではよく「子供の頃に体験した出来事がトラウマになった」人物が登場します。物語の構成を考えるとき、「過去」も入れたほうが味わい深くなる、と勘違いしてしまうのです。

 小説に時間軸を持ち込んだほうが面白くなる。

 これがよくある「小説の誤解」のひとつです。

 現代劇で高校が舞台なのに、なぜか十年前だったり十年後だったりが登場してしまう。

「ただの十七歳」では物足りなさを感じて、つい小学一年生や社会人五年目くらいを書きます。時間軸が加わって「面白くなる」に違いないと思い込んでしまうのです。

 でも受賞作を数多く読んでみると、「ある時間だけを切り取った」物語が多いと気づきます。

 そもそもなぜ「過去」を書いてしまうのか。

「過去」を書きたくなるのは「水増し」がしたいからです。

「現在」でひとつの出来事が起こり、それに関連する「過去」を書く。

 するとひとつの出来事で「現在」と「過去」が書けます。つまり二倍も書けるのです。

 選考さんも心得たもので、「過去」が書いてあるだけで落とします。本筋である「現在」の物語がそれだけ短くなってしまうからです。

 もし「現在」と「過去」の比率が1:1なら、本筋の「現在」が五万字しか使えません。これではただの中編小説です。残り五万字はとくに必要もない「過去」話となってしまいます。

「過去」を書く必要があるならワンシーンに限りましょう。「現在」の本筋を進めるうえでどうしても「過去」に触れなければ先へ進めない。そんな事態は十万字に一回あるかないかです。できるだけ「過去」の分量は少なくしてください。一文で済ませられるなら済ませるのが名人芸です。

「将来」も基本的には必要ありません。書いてよいのは「結末」でだけ。

「そして数年後」を読ませて大団円で締める。そんなときにだけ「将来」を書いてもよいのです。本筋でいちいち「将来」について書くのもただの「水増し」でしかありません。

 小説で書かなければならないのは「現在」だけです。

 すべて「過去」を振り返る形をとる必要もない。「現在」をしっかりと描ききるから現代劇なのです。「過去」を振り返ってばかりでは現代劇になりません。

「水増し」のために「過去」や「将来」を書くのはご法度です。

 すべて「夢」で構成した夏目漱石氏『夢十夜』という作品もありますが、あれは実験小説だからよいのであって、まともに真似してはなりません。





最後に

 今回は「分析用に集めただけで満足しない」について述べました。

 あなたがやらなければならないのは「小説を書く」であって「受賞作を集める」ではないはずです。ライターであってコレクターではない。

 受賞作・優秀賞作を集めただけで満足してはなりません。必ず分析読みをしてください。

 ただ集めるだけならお金を持っている小学生にだってできますよ。




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