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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
学習篇〜いかに効率よくものにするか
1245/1500

1245.学習篇:木を見ず森を見よ

 今回は「構成力」のたいせつさについてです。

 小説はどうしても表現力など技巧に走りがちです。

 本当に必要なのは「構成力」つもり物語の展開。それ以上に重要なものはありません。

木を見ず森を見よ


 よく「木を見て森を見ず」と言います。

 しかし小説を書くときは逆で「木を見ず森を見よ」の精神が必要です。




表現より展開に凝れ

「小説賞・新人賞」を獲るとなれば、よほどすぐれた表現力を求められるんだろうな。そう感じている方が多いと思います。

 それは違います。

 百点満点でも表現力なんて一般人なら五十くらいの点数はコンスタントに獲れるものです。

 しかし「構成力」つまり物語の展開を司る力は、一般人だとかぎりなくゼロに近い。

 そして「小説賞・新人賞」の選考さんにチェックされるのは、華やかな表現力ではなく、堅実な「構成力」です。土台もしっかりしていないのに、表現ばかり凝るのはまったく意味がありません。物語の展開が固まっていれば、どんなに拙い文章でも面白く読めるものです。

 なぜ小説投稿サイトのテンプレート作品が「小説賞・新人賞」で数多く入選するのか。

 テンプレートと呼ぶくらいですから、物語の展開が固まっているからです。

 しかしテンプレート頼みでは書き手の「構成力」がつきません。仮に受賞しても、受賞作に手を入れる際や長編小説を連載小説に伸ばす際などで、担当編集さんを納得させられるだけの作品には仕上がらないのです。

 だからテンプレートに頼らないで、かつテンプレートに匹敵するほどの「構成力」あふれる作品が求められます。

 テンプレート作品が数多く入選しますが、よくて優秀賞止まり。大賞にはなれません。

 大賞に求められる「構成力」が計れないだけでなく、テンプレート以外の物語を作れるのかわからないからです。

 表現力なんてものは山に咲く一本の桜にすぎません。

「構成力」は桜の木を引き立てるために立つ、山の木々つまり森そのものです。

 桜の美しさばかりに気をとられて、森の木々が荒れ放題ではせっかくの桜も台無し。

 私たち書き手は、まず森そのものに気を配らなければなりません。森を丁寧に管理し、その中に美しい桜を一本植えるのです。周りが整然としているから、桜の美しさがより引き立つのです。植える桜はソメイヨシノでなくてもかまいません。山桜でも八重桜でも彼岸桜でもよい。あなたの作品にふさわしい桜を見つけていきましょう。

 表現という美しい桜より、展開という森そのものをきっちりと管理するのです。

 そうしなければ、どんなに美しい桜も、埋もれてしまいます。




木を見ず森を見よ

「小説賞・新人賞」に必要なのは展開つまり「構成力」。作品という山での森そのものです。

 小説を書くときは、つねに土台となる森を見ましょう。

 目先の美しさ、表現の華やかさばかりを追ってはなりません。

 極論すれば「どんなに比喩が巧みでも、展開が雑だとすべて台無し」なのです。

「森」という展開「構成力」をしっかりと管理しなければなりません。

 さらに言ってしまえば「きっちりと計算された展開なら、たとえ比喩がなくても面白い」のが小説です。

 限りなく実写に近い絵のマンガ家がいちばん売れる作品を書けるわけではない。

 誰も考えもしなかったアイデアを構成し展開するマンガ家がいちばん売れる作品を書きます。

 尾田栄一郎氏『ONE PIECE』は海賊王を目指す主人公、という「構成力」で世界一のマンガとなりました。

 諫山創氏『進撃の巨人』は謎の巨人に生存権を脅かされる人類、という設定で世界中にファンを増やしたのです。

 どちらも実写に近い絵柄とは言えませんよね。それでも世界一や世界に冠たる作品となれたのです。

 美しい絵が描けるマンガ家がいちばん売れるわけではありません。

 おそらく現役でいちばん美しい絵を描くのは小畑健氏です。現在連載中の『プラチナエンド』の絵の密度たるや、『ONE PIECE』『進撃の巨人』など鼻で笑うくらいに濃い。

 小畑健氏では『人形草紙あやつり左近』の段階ですでに絵の密度は相当高かったのですが、連載は長続きしませんでした。少し密度を落とした『ヒカルの碁』が大ヒットし、密度を戻した『DEATH NOTE』も大ヒットを飛ばします。そしてさらに密度を落とした『バクマン。』も大ヒットさせたのです。現在連載中の『プラチナエンド』は小畑健氏のどの作品よりも密度が高い。『週刊少年ジャンプ』ではなく『ジャンプスクエア』での連載なので単純な比較はできませんが、密度を落とした作品の評価が高く、密度を増した作品は人を選びます。

 小説も同じなのです。

 比喩表現がどんなに巧みでも、それだけで売れる作品にはなりません。

 比喩表現は平凡でも物語そのものが面白い作品のほうが、かえって売れる作品に仕上がります。

 たった一本の桜に固執しない。森全体を丁寧に管理してやることで山の評価は一変します。

 比喩の文だけに頭をひねらない。他の文をいかに読みやすくするか工夫してください。

 すらすらと読める文の中に書いてあるから、「比喩」が引き立つのです。

 比喩は「ここぞ」の位置にあるから輝きます。すべての文が「比喩」だらけだと、なにを伝えたい文章なのかわからなくなるのです。

 小説は「比喩」を読ませる文章ではありません。「物語」そのものを読ませる文章なのです。「比喩」は「物語」に添える刺身のツマ。「物語」を鮮やかに読ませるための彩りでしかありません。

「物語」だけでもじゅうぶん面白い。そこに絶妙な彩りを添えることで、「誰もが楽しめる」小説に仕上がるのです。


「木を見て森を見ず」は「細かい部分にこだわりすぎて、大きく全体や本質をつかまないこと」を指します。小説でもこれを戒めにしなければなりません。

「木を見ず森を見よ」の精神は、「物語」そのものの面白さを追い求めるようになり、「小説賞・新人賞」が獲りやすくなります。

 たったひとつの「比喩」にこだわらず、「物語」全体へ気を配りましょう。

 それが「小説賞・新人賞」で高い評価となって表れます。





最後に

 今回は「木を見ず森を見よ」について述べました。

 どんな物事も「木を見て森を見ず」では近視眼になって周囲が見えなくなります。

 周囲をいかに整えて、一本の桜を映えさせるか。そこに注力してください。

 面白い「小説」は美しい絵面「比喩」がもたらすものではないのです。

 全体の「物語」が独特だから、面白い「小説」に仕上がります。




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