121.応用篇:書きたいものかウケるものか
書き手が書きたいものを書くのがいいのか、読み手にウケるものを書くのがいいのか。誰もが悩むと思います。
それぞれのいい点と悪い点を挙げてみました。次回投稿にも少し絡んできます。
書きたいものかウケるものか
小説を書こうとする人は大別して二通りいます。「自分の考えた物語を皆に読んでもらいたい」書き手と「読み手にウケる物語を書きたい」書き手です。
そこに「読み手の反響を意識する」書き手と「読み手の反響を意に介さない」書き手という観点もあります。
これを掛け算することで四通りの書き手が存在することがわかるでしょう。
ダメなタイプから順に列記します。
自分の物語を読ませる×反響を気にしない
たいていの書き手はここからスタートします。とにかく小説を書きあげること、発表することだけで満足するのです。今は小説投稿サイトがたくさんあります。そのサイト特有の風潮を知ろうとせず、とりあえず書いたものだから投稿する。これで結果が出ることなどないのです。
「自分の考えた物語を皆に読んでもらいたい」と思って時間をかけて書き上げた志は立派です。
そしてどうせ苦心して書いたものだからと小説投稿サイトへ投稿してみるのもかまいません。
でも「読み手の反響を意に介さない」のはいただけない。ただの「独りよがり」の「自己満足」です。
せっかく手間暇かけて書いたのであれば、読み手の反響を知って改善点を見つけるべきです。改善点がわからなければ、よりよい小説など書けません。
現在、読み手が最も改善点を挙げてくれる小説投稿サイトは『小説家になろう』と『カクヨム』です。小説投稿サイトの最大手と機能発展が速いサイトであり、誰でも気軽に投稿作品を読みますし、ユーザー登録している方が感想を積極的に書き込んでくれもします。「とりあえず書いた物だから投稿する」という人は、第一に『小説家になろう』か『カクヨム』へ投稿すべきです。そして読み手の反響を真摯に聞き入れてください。『小説家になろう』はネット小説が開花した頃から存在している小説投稿サイトであるため、読み手の目も肥えています。また『カクヨム』はライトノベルをたくさん読んできた方が多いので、審美眼も長じています。つまりその小説のどこがよくてどこが悪いのか。『小説家になろう』『カクヨム』ユーザーは的確に指摘してくれます。
読み手にウケる物語を書く×反響を気にしない
小説投稿サイトで読み手にウケそうな物語を書く。これは人気を得たいがために行なう行為です。それなのに「読み手の反響を意に介さない」というのでは矛盾しています。
少なくとも「読み手にウケる物語を書いた」わけですからなんらかの反響があってしかるべきです。
そして実際に「ウケる」小説を書いたのだから評価やブックマークが目に見えて増えていきます。でもそれだけに満足して読み手から「ここが悪かった」という指摘が来ても馬耳東風。これではよりよい小説など書きようもありません。
『pixiv小説』であれば人気アニメの二次創作を書いていれば確実に「読み手ウケ」はします。それなりの閲覧数やいいね!やブックマークが得られるのです。でもしょせんは二次創作。読み手から「ここが悪かった」というコメントはまず得られません。
『小説家になろう』で「異世界転生」「異世界転移」のハイファンタジーを書けば必ず評価されますし反響が返ってきます。『エブリスタ』『アルファポリス』で女性向け恋愛小説を書いたり、『カクヨム』でライトノベルを書いたりしてもやはり評価されますし反響は返ってくるものです。
評価だけを気にして、読み手からの反響を無視していてはいい書き手に成長することなどできません。
せっかく「読み手ウケ」する小説を書いて評価も得られたのです。もっと上を目指してもよいのではないでしょうか。
読み手にウケる物語を書く×反響を意識する
前述の通り『小説家になろう』の「異世界転生」「異世界転移」のハイファンタジー、『エブリスタ』『アルファポリス』の女性向け恋愛小説、『カクヨム』のライトノベル、そして『pixiv小説』の女性向け二次創作。この「確実に読み手にウケる」ジャンルを書くのです。
小説投稿サイトで人気のあるジャンルに小説を投稿すれば必ず評価と反響は返ってきます。
そして「ここが悪かった」という反響に耳を傾けて次回投稿や次シリーズでそれを生かす。
そうすればすぐに人気が出てきますし実力もついてきます。きわめて短い期間のうちにランキングに載ることも夢ではなくなるのです。
反省無くして成長無し。とにかく読み手から反響を得ることが必要です。
これも前述しましたが『小説家になろう』が最も反響を得られます。『小説家になろう』は「異世界転生」「異世界転移」のハイファンタジーだけだと思われがちですが、それ以外のジャンルにも目の肥えた固定ファンは数多く存在します。そして『小説家になろう』は他のサイトに投稿した小説を二重投稿することが規約で認められています。規約の都合上『カクヨム』オンリーの小説と『pixiv小説』の二次創作を投稿することはできませんが、それ以外のオリジナル小説であれば必ず『小説家になろう』に投稿しておくべきです。
そこで得られた反響はきっとあなたを育てる肥やしになってくれることでしょう。
自分の物語を読ませる×反響を意識する
最後に「自分の考えた物語を皆に読んでもらいたい」と思い立って小説を書き、小説投稿サイトへ投稿して評価と反響を得る。そして反響に耳を傾けて次回投稿や次シリーズでそれを生かしていくことです。
処女作からこれができる人はまずいません。なぜなら「書き手の考えた物語」が読み手の共感を得られない場合も多いからです。
まず各小説投稿サイトではどのジャンルの読み手が多いのかチェックしておきます。そして読み手の多いジャンルの短編小説を数多く書いて投稿し、フォロワーさんを増やす努力をしてください。短編小説でランクインできない書き手は連載を始めても鳴かず飛ばずになります。「書き手の考えた物語」を書いた短編小説でフォロワーさんが増えてランクインするようになってから連載を始めればいいのです。そうすればフォロワーさんは「書き手の考えた物語」を純粋に評価し、反響も返してくれます。
そうなって初めて「理想的な連載小説」になるのです。「理想的な連載小説」はランキングにも載り始めるでしょうし、そうなれば加速度的に読み手の数が増えていきます。寄せられる反響も桁違いに多くなるのです。これは「成長促進剤」のような役割を果たします。誰におもねるでもなく「書き手の書きたい小説を書いて評価される」ことが「紙の書籍化」への大きな一歩です。
当初は「確実に読み手にウケる」ジャンルで書いていたとしてもある程度フォロワーさんが増えてきたら書き手自身の書きたいものを書く。この転換ができなければいつまで経っても「紙の書籍化」の話なんて来ないでしょう。
あなたにしか書けない小説。出版社はそれをこそ求めています。ただ「流行りをなぞっただけでそのときのウケ狙いな小説」など廃れるのも早いものです。
最後に
四タイプを検証してみました。
「書きたいものを書く」のは最低でもあり最高でもあります。「ウケ狙い」は最低でもなければ最高でもないのです。
その特徴を最も生かすには「ウケ狙いの短編で反響を聞き入れる」ことから始めてフォロワーさんを増やすこと。
「ウケ狙いの連載で反響を聞き入れる」こと。
そして「書きたい連載で反響を聞き入れる」こと。
この順でこなしていきましょう。
とにかく「反響に耳を傾けない」のは最悪の愚策です。「私は誰よりも小説について詳しいのだから、他人の意見など聞くだけムダだ」などと思ってはなりません。思い上がりもいいところです。もっと謙虚にならなければ読み手から見放されてしまい、結果フォロワーさんが減りますしブックマークも減っていきます。そして評価も減っていき、結果出版社の目の届かないところまで落ちぶれてしまうのです。
批判されずに高みまで上れる書き手というのはまずいません。いたらその人は物書きの天才です。
「あなたが天才でない」と言いたいのではありません。天才も地道に努力を続ければ偉大な記録が残せるのです。
メジャーリーグベースボールのイチロー選手やサッカーJリーグの三浦知良選手、スキージャンプ競技の葛西紀明選手などが好例でしょう。彼らは抜きん出た才能を持ちながら、基礎トレーニングを欠かしたことがありません。だからこそ年齢を重ねても活躍を続けられます。
小説の書き手も同じです。どれほど実力があろうとも、つねに己の能力を貪欲に追い求めて向上心を持ち続けましょう。