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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
技術篇〜いかにして名作が創られるか
1202/1500

1202.技術篇:熱くなれ、クールな頭で

 今回もちょっとわかりづらいサブタイトルをつけました。

 このくらいのほうがクリックされやすいかなと思いまして。

 意味は読めばわかりますよ。

熱くなれ、クールな頭で


 小説を書くには情熱が不可欠です。

「この物語を多くの人に読んでもらいたい」という強い気持ちが維持できなければ、原稿用紙三百枚・十万字を埋められません。

 しかしあまりにも熱量が高すぎると、思いが空回りしてうまく文章に落とし込めないのです。




他人が引くほど熱くなれ

 あなたには、他人が引くほど熱くなったものはありますか。熱く語れるものはありますか。

 そういったものは、いくらでも文章が書ける気分にさせてくれます。


 たとえば「AKB48」の誰々のファンで、とくにどこがよくて他のメンバーよりすぐれている。だから推しているんだ。

 これならいくらでも文章が書ける気分がしませんか。

 とくに推しているものほど、それにまつわる情報をたくさん仕入れてきますから、必然的に他人よりも詳しくなります。

 文章を書くには、他人よりも詳しくあるべきです。

 誰もが知っていることしか書いていなければ、他人を説得させられません。

「これは〇〇だからイチオシです」の「〇〇」についてどれだけのパターンを把握しているか。それがあなたが書ける文章の量を左右します。

 歌はうまいし、ダンスも切れている。コール・アンド・レスポンスがうまくて、フリートークも面白い。美人だけど、身近にいそうな感じがする。

 ほら、どんどん出てくるでしょう。

 だからあなたの「好き」を、燃え上がるほどに「熱く」してください。

 他人が引くくらい熱くなれば、その人たちが知らなかった事柄を伝えられます。

「好きこそものの上手なれ」

「好き」になったらそれにのめり込んで、いつの間にか「上手」になっているものです。

 ときに「好き」を「恋愛」と誤解してストーカーになる不届き者もいます。

 そのようにこじらせないで、「好き」は「好き」のまま認識してください。

「好き」の中でも最大限の「好き」つまり「大好き」を極めればよいのです。

 相手のすべてを自分のものとしない。相手を深く理解してあげる心があればストーカーにはなりません。それが相手にとって迷惑だとわかっているからです。


 ここまで「好きな人」について述べてきましたが、「好きなもの」「熱く語れるもの」でもかまいません。私の「コンピュータ」だって「好きなもの」「熱く語れるもの」ですからね。

 コンピュータをデジタルの0と1の組み合わせから理解しており、OSがどのようにして動いているのかも知っています。私はコンピュータにそれほど入れ込んでいるのです。

 使っているコンピュータは現在iMacですが、元々『MS−DOS』コンパチを作るほどでしたので、『Windows』もたいてい操れます。『Windows10』機種も扱えるだけの知識はあるのです。

 と、ここまで熱く語ってしまいましたが、皆様にも「これは人並み以上にやれる」「誰よりも詳しい」ものがあるでしょう。

 すべてが中途半端な人なんてそうはいません。たいていの方がなにがしかに一家言持っているものです。

 それこそが「小説のネタ」として最もふさわしい。誰からもツッコまれないほどの知識があるから、気兼ねせずにいくらでも文章を書き続けられるのです。




頭はクールに

「熱いハートを叩きつける」ように書いた文章は、確かに相当な熱量を持っています。

 しかしあまりにも熱すぎて、読み手が手を焼いてしまうものです。

 文章へ書き出すときは、「熱いハート」をクールに表現しなければなりません。

「熱いハート」は膨大な知識を文章に書き込みます。書き込みすぎるくらい細かなところまで書いてしまうのです。

 正直に言って「情報量が多すぎる」ほど、読み手に伝わらない文章はありません。「一文一意」の精神で、ひとつの文にはひとつの意味しか持たせないようにしてください。「熱いハート」が一文にふたつも三つも意味を持たせないためには、「頭をクール」にしましょう。

「クールな頭」なら、「熱いハートにあふれる文章」を素因数分解するがごとく華麗でスマートな文章へ置き換えられます。

 小説を書くのがうまい方は「熱いハート」と「クールな頭」のバランスを適度に保てるのです。


 もしあなたが小説を書きたくて仕方がないのに、いざ書き出してみるとうまく書けないようなら、それは「熱いハート」があっても「クールな頭」ではないのかもしれません。

 書く意欲は「熱いハート」がもたらしてくれます。しかし、わかりやすい文章は「クールな頭」でいないと生み出せないのです。

 情熱はいくらでも高いほうがよい。そのうえで、どれだけ冷静になれるか。虚構や妄想と現実との差をどれだけ理解しているか。それが「熱くて読みやすい文章」を導きます。

「熱くて読みやすい文章」こそ、小説で最も求められます。

「小説賞・新人賞」の選考さんも、文章から熱量を感じられない作品には惹かれません。

 どんなに物語の筋書きが陳腐であっても、熱量の高い作品はそれだけで評価されます。

 たとえ言葉巧みな文章で書いてあっても、そこに熱量を感じなければ評価されないのです。

 あなたの「大好き」を文章に叩きつけるだけでは、選考さんも困惑してしまいます。

「大好き」な気持ちを、適度にわかりやすい文章へ素因数分解する「クールな頭」があれば、読み手へ必ず伝わるのです。

 たとえば「ラブレター」。今どき手紙で愛の告白をする人はまずいません。でも「剣と魔法のファンタジー」なら今でも「ラブレター」が使われているでしょう。今ふうなら「メール」でも「ダイレクトメッセージ」でもかまいません。

 相手に自分の「熱いハート」を叩きつけた文章を送ったとします。受け取った相手から反応がないようなら、それは「熱いハート」が空回りしているのです。

「熱いハート」を「クールな頭」で素因数分解し、「私があの人を好きなのは、これとこれとこれがあるからだな」と段階を経て組み立てられるかどうか。「優しくて気配りが行き届いている」「勉強もできて頭がよい」「なにより美形」。この三つがその人を好きなポイントなのだと理解していれば、それを順序立てて書けばよいのです。

「熱いハート」はそのままでは熱くて手を出すとやけどします。そこでいったん「クールな頭」で冷やして素因数分解してみるのです。熱した鋼を鎚で打ったあと冷水に浸けるがごとく。

「熱いハート」を前にして、いったん冷静になってみる。「熱いハート」はなにによって構成されているのか。それがわかれば、構成する素因数にまつわる「熱いハート」を叩きつければよいのです。素因数が三つあるなら、「熱いハート」を三パートに分けて書きましょう。そうするだけで、途端にスラスラと文章が書けます。

 あれだけ書こうと思って書けなかった文章、伝わらなかった文章が、わかりやすく書けるのです。


「熱いハート」もなしに文章を書いても、相手に熱意が伝わりません。

 しかし「熱いハート」だけでは支離滅裂になりやすいのです。

「クールな頭」も併せ持てば、あなたの熱意は必ず読み手へ伝わります。

 情熱と計算力のバランスがとれた作品は、大賞に最も近づけるのです。

 もし「熱いハート」を「クールな頭」で書いた作品が大賞を獲れなかったら。それはあなたよりも「熱いハート」を持った人が大賞を獲ったのかもしれません。より「クールな頭」を持った人かもしれません。

 とにかく「熱いハート」「クールな頭」が及ばなかったのです。

 それなら次作は今回よりも「熱いハート」を抱いて、「クールな頭」で明晰な文章を書きましょう。

 その姿勢こそ、大賞を獲るにふさわしい、獲って然るべき作品につながります。





最後に

 今回は「熱くなれ、クールな頭で」について述べました。

 小説に限らず、相手へなにかを伝えたい文章には情熱とわかりやすさの両立が必要です。

 他を圧する熱量があるか。それがわかりやすい文章で書かれているか。

 熱量を素因数分解して順次組み立てていけば、必ず情熱とわかりやすさは両立できます。

 まずは「書かないと治まらない」ほどの情熱を物語に持ちましょう。

 たとえ文章が拙くても、熱量の高い物語は読み手を強く惹きつけます。

 そのうえでわかりやすい文章なら、万人が惹き込まれるのです。

「小説賞・新人賞」を獲るのは、いつも情熱とわかりやすさのバランスがよい作品です。

 このことを正確に理解していれば、必要なもの、今は足りないものにも自ずと気づけるでしょう。




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