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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
技術篇〜いかにして名作が創られるか
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1163.技術篇:登場人物を書く

 今回は登場人物についてです。

 脇役なのに特徴てんこ盛り。よくやってしまいます。

 しかし主人公の特徴がふたつくらいなのに、脇役が三つも四つも特徴を持っていたらバランスが悪いですよね。

登場人物を書く


 前回は「主人公の容姿を書く」ことについて述べました。

 今回は主人公以外の「登場人物」をいかに書くかについて考えたいと思います。




特徴はひとつふたつあればいい

 主人公の特徴はひとつかふたつくらいでじゅうぶん、と前回書きました。これは他の登場人物でも同じです。

 ただし他の登場人物は、読み手が没入しやすくするために特徴を絞るのではありません。識別しやすくするためです。

 田中芳樹氏『銀河英雄伝説』では、名前が出てくるだけの人物も込みで四百人弱登場します。これらすべてに三つ以上の特徴を付加してしまったら。かぶるキャラが必ず出てきます。それぞれ特徴がひとつふたつだからこそ、憶えやすいのです。

 ジークフリード・キルヒアイスは「赤毛のノッポさん」、オスカー・フォン・ロイエンタールは「金銀妖瞳(ヘテロクロミア)の女ったらし」、ウォルフガング・ミッターマイヤーは「蜂蜜色の髪の体操選手然」、ヤン・ウェンリーは「黒髪の冴えない学者然」。主要キャラクターでもふたつしか特徴がありません。

 ふたつの特徴を組み合わせることで、銀河英雄伝説は数多くの個性的な人物を生み出しました。

 ですが、小説を書き慣れない方には特徴がふたつあるだけでも書きづらくなります。その場合はひとつに絞ってください。たったひとつの特徴だけで人物を書き分けられるのか。書き分けられるのです。というより、たったひとつに絞れば短編小説は書き放題。ふたつの特徴をつけてしまうと、それを効果的に見せようと考えてしまい、分量が増えてしまいます。短編小説なら特徴はひとつ。長編小説や連載小説ならふたつ。これだけで魅力的なキャラは描けます。




特徴をそのまま書いてみる

『銀河英雄伝説』を読んだ方ならおわかりだと思いますが、キャラの特徴をそのまま書いてありますよね。ロイエンタールなら「その金銀妖瞳(ヘテロクロミア)で」とか、ラインハルトなら「蒼氷色(アイスブルー)の瞳に」とか。

 特徴を設定するのは、このようにキャラを識別しやすくするためです。

「赤毛」というだけでキルヒアイスを、「蜂蜜色の髪」でミッターマイヤーを、「亜麻色の髪」でユリアン・ミンツをそれぞれ連想させます。


 キルヒアイスの死後「赤毛」はエミール・フォン・ゼッレ少年が引き継ぎますが、それは同時にラインハルトがキルヒアイスを回想する手段ともなっているのです。ちなみにエミールの担当声優は置鮎龍太郎氏。今の声質からは想像もつきませんが、間違いなく置鮎龍太郎氏の声です。

「特徴の継承」により、特定の人物を回想する手段となる。田中芳樹氏がいかにすぐれた「プロ」の書き手かを再認識させられます。

 凡人に「特徴の継承」なんて発想はありません。キャラに与えられるふたつの特徴のうちひとつを他人と共有するのは、識別を難しくすることにもつながります。

 しかし田中芳樹氏は「キルヒアイスが死んだのち、エミールを登場させ」て「赤毛」の特徴をうまくバトンタッチさせたのです。そしてエミールの「赤毛」をラインハルトがいじくって亡きキルヒアイスに思いを馳せます。「特徴の継承」でエミールだけでなく故人もイメージさせる構造を作り上げたという点で、田中芳樹氏は天才と呼んでよいでしょう。




愛称で呼んでみる

 日本の小説家で世界的に最も人気があるのは夏目漱石氏です。

 そんな夏目漱石氏の作品を読んでいると、ある点に気づきます。

 登場人物によく「愛称」がつけられているのです。

「愛称」によって特徴をひとまとめにして読み手へ提示しています。だからこそ、読み手は「愛称」を見ただけで登場人物が思い出せるのです。

「愛称」を活かした小説といえば夏目漱石氏不朽の名作『坊っちゃん』を措いてないでしょう。まず主人公が「坊っちゃん」と「愛称」だけ。校長は「狸」、教頭は「赤シャツ」、画学教師は「野だいこ」、数学の主任教師は「山嵐」、英語教師は「うらなり」でその婚約者だった令嬢「マドンナ」と、教師のほとんどが「愛称」で呼ばれています。もちろん姓のわかる人物もいるのですが、作中ではだいたい「愛称」が使われているのです。

「愛称」のよい点は、なによりもイメージしやすい。

 特徴をひとつふたつつけた人物は、だいたいその特徴が「愛称」になります。

『銀河英雄伝説』では「金髪の孺子」と称されたラインハルトや「金銀妖瞳(ヘテロクロミア)のロイエンタール」のように。

 しかし別の「愛称」をつけられる人物もいます。「疾風ウォルフウォルフ・デア・シュトルム」と呼ばれたミッターマイヤーや「魔術師ヤン(ヤン・ザ・マジシャン)」「奇蹟のヤン(ミラクル・ヤン)」と呼ばれたヤン・ウェンリーのように。

 またラインハルトとヤン・ウェンリーは「常勝の天才」と「不敗の魔術師」とも呼ばれています。

「愛称」がつけられるとそのキャラに愛着が湧くのです。

 フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトは「黒色槍騎兵艦隊シュワルツ・ランツェンレイター」を、ワルター・フォン・シェーンコップは「薔薇の騎士(ローゼンリッター)連隊」をそれぞれ率いています。それぞれの「愛称」がキャラに強烈な個性を与えているのです。

 あなたが書く小説の登場人物にも「愛称」をつけてみませんか。

 その「愛称」によって、人物の表現が幅広くなりますよ。





最後に

 今回は「登場人物を書く」について述べました。

 一人称視点では語り手となる主人公よりは、確実に書きやすい。

 しかしどこまで書いてよいのかはわかりにくいのも確かです。

 他の人とは異なる「特徴」だけを書くようにしてください。

 主人公の「特徴」は読み手を感情移入させるためですが、登場人物に「特徴」をつけるのは識別しやすいからです。

 書き分けたければ「特徴」を書けばよい。

 これは主人公でも登場人物でも同じです。

 また「愛称」をつけてみるのもよいと思います。




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