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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
鍛錬篇〜まったく書けない方が書けるようになる
1111/1500

1111.鍛錬篇:イメージしていますか

 今回は「一一一一」回目のキリ番となります。

 最近添削をするようになって見えてきたのが「情報量の不足」でした。

 なぜ最近は「情報量の不足」した作品が多いのでしょうか。

 それでは「小説賞・新人賞」は狙えませんよ。

イメージしていますか


 あなたはイメージしていますか。

 こう問われると「イメージするってなんですか?」となりそうですね。

 簡単にいうと「頭の中で物語を繰り広げる」ことを指します。

 すると「いや、私は現実を見ているからイメージなんてしません」のような模範的な回答が返ってくる。

 しかし「小説を書く」のであれば、かなり高度な「イメージ力」が必要です。




いかに細部までイメージするか

「イメージする」を「想像する」、「イメージ力」は「想像力(イマジネーション)」と呼べば膝を打つ方が多いでしょうか。

 頭の中で、どれほど細かくイメージするか。その細かさが「イメージ力」の高さです。

 もし小説を書くとき、あなたの頭の中に詳細なイメージがなかったら、小説の書きようもありません。

 器用な方なら、主人公と「対になる存在」と脇役を揃えたら、それなりの物語が作れるでしょう。ですがそんな作品で「小説賞・新人賞」は獲れません。

「小説賞・新人賞」の選考さんを唸らせるほどの「緻密な情報」が文字として書かれてあれば、あなたの筆力を高く評価してくれます。

 もちろん「緻密な情報」が盛り込まれている作品が、総じて受賞するとは限りません。

 しかし、ただ器用に記号としてのキャラクターで物語を演じさせているだけよりは、迫力があります。


「イメージ力」は大きくふたつに分けられます。 

「即興劇をさせる」力と「台本を作って練習してから上演させる」力です。

 これは私の感受性によるのですが、最近の作品は「即興劇をさせる」力だけで書かれています。だからキャラクターの掘り下げも浅いですし、物語の深みもない。

 おそらく小説投稿サイトで連載している作品だから、というのも一因でしょう。

 小説投稿サイトで連載していると、読み手を惹きつけるためにウケのよい「即興劇」が多用されてしまいます。「台本を作って練習してから上演させる」だけのゆとりが持てないのです。

 本コラムでは一一一〇回にわたって「台本を作って練習してから上演させる」力で物語を作る方法を紹介してきました。

 そのほうが物語は破綻せず、読み手の満足度も高い作品に仕上がるからです。

 だからもし「即興劇をさせる」力だけで小説を書いておられる方には、ぜひ「台本を作って練習してから上演させる」力も身につけていただきたい。

「即興劇をさせる」方法は臨機応変と呼べるかもしれませんが、物語の芯がなくなってしまいやすいのです。

 物語は貫徹する「哲学」――私はこれを「命題」と読んでいます――があると深くなります。

「即興劇をさせる」方式では、この「命題」が消えてなくなってしまうのです。正確に言うなら「命題」が増えすぎてどれも目立たなくなります。伝えたい「命題」が複数あるがために散漫になって結局隠れてしまう。

「木を隠すなら森の中」と言います。

 物を隠すには同種の物の群がりの中に紛れ込ませるのが最適です。

 書き手にその気がなくても、伝えたい「命題」という「木」のほかにも「木」が乱立したら、読み手からは「森」しか見えません。

 一般的に「小説賞・新人賞」で読み手に「森」を伝えようとする作品は評価されません。たった一本の「木」が目立つよう、原っぱの中に一本だけ「木」を植えるのです。そうすれば選考さんも「この作品はこれを伝えたいのか」と過たず「命題」を捉えてくれます。「森」と「木」とでは、「木」のほうが選考さんの評価は高いのです。

 だから「即興劇をさせる」方法で小説を書いておられる方は、「台本を作って練習させてから上演させる」方法で物語を作ってください。

 書くより前に「練習させる」というのは「頭の中でキャラクターたちがどう動くのかを想像する」ことです。

 つまり「想像する」イコール「イメージする」であり、その能力の高低が「イメージ力」イコール「想像力(イマジネーション)」になります。

 近頃の流行りなのかもしれません。小説投稿サイトのランキング上位には「即興劇」方式で作られていると看破できる作品が多いのです。それはランキングに載るためなら必要なスタイルでしょう。しかしいざ「小説賞・新人賞」を狙うときには足枷(あしかせ)となります。




より細かくイメージする

「イメージする」重要性はおわかりいただけましたか。

「イメージ力」が強すぎて、完全に「あちらの世界」へ意識が行ってしまうと、それはそれで問題があります。社会に戻ってこられなくなるかもしれません。

 それが怖くて「台本を作って練習させてから上演する」方式に踏み出せない方も多そうです。

 安心してください。そんなに怖いものではありませんから。

 普通の人間が、普通に(そな)えている、ごく当たり前の「想像力」を作品へ振り向けるだけでよいのです。

 そのときできるかぎり「より細かくイメージして」ください。

「剣と魔法のファンタジー」で主人公が長剣を持っているとします。その長剣の刃渡りはどのくらいありますか? 重さは? 装飾は簡素ですか豪奢ですか? 魔力を帯びていますか?

 えっ? そんなに細かくわかるわけがないだろう?

 おかしいですね。あなたは主人公になにを持たせて戦わせようとしているのですか。それすらわからず「剣と魔法のファンタジー」が書けると思っているのなら「小説賞・新人賞」なんて一生獲れません。

 ごくありふれた「剣と魔法のファンタジー」世界が舞台だとしましょう。しかしそれを担保するだけの情報が書かれていなければ、「他人の褌で相撲を取る」のと同じです。「小説賞・新人賞」で「他人の褌」なんかに頼っていては一次選考すら通過しません。

 あなたの作品世界は、あなたが一から作り出すつもりで書きましょう。

 その世界で人々がどんな暮らしをしているのか。どんなものを食べているのか。どんな職業があるのか。どんな国がありどんな政治が行なわれているのか。どんな道具を使っているのか。

 そういったものを、あなたの「イメージ力」でより細かく創り上げるのです。

 物語世界はあなたの作品であれば、すべて同じものを利用してかまいません。すべて異なる物語世界を用意してもよいのですが、量産がきかないのです。

 大御所ともなると、すべての作品で新しい物語世界を創り上げるなんて造作もありません。それだけの「イメージ力」が(そな)わっているから「大御所」なのです。

 しかしまだ駆け出しの書き手であれば、たったひとつの物語世界を使いまわしても問題ありません。その代わり、より細かく設定してください。「魔法」と一言で表せるものにも、火・熱・水・氷・木・金・電などさまざまな特性があります。あなたの物語世界ではどんな種類の「魔法」があるのか。それを規定するのです。

「小説賞・新人賞」へ応募する作品の物語世界がより細かく規定されているほど、作品の評価は高まります。現実味(リアリティー)が段違いだからです。

 先ほど「長剣」について質問しました。それも現実味(リアリティー)を高めるために必要な情報だからです。

 ただ単に「腰に佩いた長剣をすらりと抜いた。」と書くより「腰に佩いた十字の(つば)が特徴の長剣をすらりと抜いた。」のほうが、形状がイメージしやすいですよね。さらに「腰に佩いた十字の鍔が特徴の刃渡り七十センチ、十キロある長剣をすらりと抜いた。」のほうがはるかに情報量が多くなります。

 現在の小説投稿サイトの作品は、どれも「情報量が少なすぎる」のです。

「剣と魔法のファンタジー」なのだから「長剣」と書けば長剣なんだ。「火の魔法が放たれた」と書けば火の魔法なんだ。そういう作品が目立ちます。

 しかしそれでは駄目なのです。

 どれだけ細かな情報を具体的に書けているかどうか。

「小説賞・新人賞」を狙うのなら避けては通れません。

 だからこそ「イメージする」ことが重要なのです。





最後に

「一一一一回」目のコラムとして用意したテーマが「イメージしていますか」でした。

 作品の質を高めるには、より細かな情報を詰め込みましょう。

 他の作品と異なる部分を明確にすれば、あなた独自の物語世界が生み出せます。

 凡百と決定的な違いがあるから、あなたの作品は「小説賞・新人賞」で目立つのです。

 ありきたりな物語世界では大賞なんて獲れやしません。




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