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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
鍛錬篇〜まったく書けない方が書けるようになる
1104/1500

1104.鍛錬篇:引き出しを増やす

 小説を書く前から「引き出し」は増やしておきましょう。

 執筆を始めてからでは間に合いませんからね。

 しかしただ情報を仕入れるだけでは「底が浅く」なります。

 情報をきちんと自分のものにして「底が深く」なるようにしてください。

引き出しを増やす


 これから小説を書こうとお考えの方にはぜひ「引き出しを増やし」ていただきたい。

 もちろん今書かれている現役の方も「引き出しは増やす」べきです。

 しかし執筆している最中に新しい「引き出し」を作っても付け焼き刃になりやすい。

 作品を書く前だからこそ、さまざまなものから積極的に学んでください。




引き出しはネタになる

 たとえば「株式投資」の知識を得ようとします。

 あなたはどのようにして知識を得ますか。

 おそらくインターネットを利用して「株式投資」をキーワードにして検索するでしょう。

 しかし他人が書いた「株式投資」の知識は、あなたの作品に活かせるレベルにはありません。

「株式投資」は日本なら東京証券取引所で株式証券を売り買いして利ざやを稼ぐものです。しかし投資家は東京証券取引所で直接株式証券を売り買いできません。必ず「証券会社」を通じて行なわなければなりません。「証券会社」は対面売買の証券会社と、インターネット売買の証券会社に分かれます。

 対面売買の証券会社にはふたつのデメリットがあるのです。まず手数料が高い。そして売買のタイミングがどうしても後れてしまいます。間に証券会社の人間が介在しているため、どうしても人件費を含めた手数料は高くなりますし、売り買いの注文を出しても間に人間が入るのでタイムラグが発生してしまうのです。

 インターネット売買の証券会社のメリットはこの真逆になります。つまり手数料が安い。そして売買をほぼリアルタイムで行なえます。証券会社の売買システムに直接アクセスして、投資家が直接株式証券を売買するような感覚です。手数料はシステム利用料とメンテナンス料を加えたものですが、対面売買の人件費に比べればはるかに安い。

 ですので、現在「株式投資」では「インターネット証券会社」が多く利用されています。よほど対面売買でないと信頼できないとかインターネット証券は信頼できないという方でないかぎり対面売買の証券会社は利用されなくなっているのです。

 そこで対面売買の証券会社は、「株式投資」ではなく「投資信託」を売りにしています。証券会社が抱える優秀な証券マンが顧客から資金を預かり、運用を代行するものです。

「投資信託」は「東京証券取引所で扱っていない外国証券」を扱えます。つまりGAFAの株式証券を運用できるのです。しかし「投資信託」は証券マンが銘柄を選別していますから、確実にGAFAの株式証券を運用できるわけではありません。ですので「投資信託」ではどの「投資信託」を選ぶかが重要になります。


 さて、皆様はここまでお読みになって「株式投資」を理解できたでしょうか。

 おそらく理解できなかったはずです。なぜでしょうか。

 ご自身で納得がいくまで調べていないからです。

 つまり「他人の引き出し」を覗いているだけで、自分の「引き出し」が増えていません。

 これではあなたの作品に「株式投資」をしている人物を登場させるのは無理です。

 あなたの作品に「株式投資」をしている人物を出したければ、「株式投資」に関する情報を自分で納得の行くまで調べてください。インターネット検索で表面的な情報を集めても、それは「他人の引き出し」です。書店に赴き「株式投資」の棚から入門書を買いましょう。入門書でも、インターネット検索よりもはるかに情報量は多いのです。

 どういう理屈で「株式投資」が行なわれているのか。儲けを出すためにはどうすればよいのか。どのようなリスクがあるのか。「株主優待」とはなにか。「投資信託」は「株式投資」とどう違うのか。「長期トレード」「スイングトレード」「デイトレード」の差はなにか。

 こういった基本的なことは、たいていの入門書に書かれています。

 書籍から知識を得て自分の「引き出し」を増やしていく。こうすれば「株式投資」の主要な知識は手に入ります。




引き出しの知識を深める

 入門書により「引き出し」がひとつ増えました。

 しかし中に入っている知識はひじょうに浅いものです。浅い知識で小説を書いても、読み手にはすぐ見抜かれてしまいます。

 もし「異世界転生」もので、前世が「デイトレーダー」にしたい場合は、浅い知識でもまったく問題ありません。作中で「株式投資」を行なっている場面は書かないからです。

 しかし「異世界転移」ものであれば、異世界に飛ばされてそこで「株式投資」を始めるかもしれません。そんなときは浅い知識では通用しないのです。

 作中でどれだけの知識が求められるのか。それを知らなければ、たとえ「引き出し」があっても底の浅い知識でしか書けないかもしれません。

 より深い知識を得たければ専門書を購入して学びましょう。資金に余裕があるのなら実際に「株式投資」を行なってみるのも選択肢のひとつです。

 ただし「株式投資」にはリスクがありますので、たかが小説を書くためだけに手を出すようなことはしないでください。「株式投資」のスキルが高ければ生き残れるような、深い知識を絶対に必要とするような場合にのみ、リスクを覚悟のうえで体験してみるのです。

 私は現在構想している四部作の中で「デイトレーダー」を出す予定にしています。だから実際に「株式投資」を経験しています。「株式証券」を「買う」とき「売る」ときのスリル、株価が上がるか下がるかを待っているときの不安感は、実際に現金を注ぎ込まなければわかりません。

 聞くとやるとは大違いでした。

 体験しようと行動し、いざ現金を「株式証券」に替えるつまり「買い」を入れたときのスリルは相当なものです。そして株価は上がるのか下がるのか。それを待っているのは恐ろしいまでの不安感で全身が満たされます。しかも上がってくれれば期待感に変わりますが、下がってくると絶望感に苛まれるのです。このプレッシャーは相当なもの。

 だから「株式投資」をする人を描いた小説の現実味(リアリティー)が見抜けるようになりました。


 私はとんぼ返りやバク転などをしますが、これなども実際に体験しなければ底の浅い知識でしかありません。

 独りで練習するとき、どのような危険を味わうのか。頭を地面にしたたかに打ちつけるなんて日常茶飯事です。バリエーションとして脳天から落ちたり後頭部を打ちつけたり。それが百日も二百日も続いて、ある日偶然成功するのです。そうしたら今度は「どうすれば安定して成功できるか」について試行錯誤します。安定して成功できるようになったら、今度は土からアスファルト、コンクリートの上で実施できるよう練習に明け暮れるのです。

 アクロバットの知識は、すべて独学で身につけました。失敗し続けたことで、成功したときの達成感はこれ以上にないほど爽快でした。

 これを応用して、たとえば剣術で未熟者が熟達者になるための困難や挫折についても書けます。剣術をほぼ独学で身につけた宮本武蔵氏の心境がよくわかるのです。だから晩年、宮本武蔵氏は『五輪書』を著して深い知識を後世に遺そうとしました。私はいつ晩年かはわかりませんが、苦労して身につけた深い知識を本コラムで後世に遺そうとしています。

 もし私が小説をいっさい書いていないのに本コラムを投稿しても、「打てば響く」とはいかなかったはずです。実際に書き方や表現や描写などに苦労した経験があるから、多くの方から「小説が書けるようになりました」とご報告をいただいています。


 これが「引き出しを増やし」て深い知識まで掘り下げる意義です。

 現実味(リアリティー)を担保するのは、書き手本人の経験に根ざした知識だけです。

 なんでもインターネット検索でわかる時代ですが、それは「受け身」の情報収集でしかありません。書店で書籍を購入して読めば、「能動的」な情報収集になります。必要とあらば自ら体験してみるのがオススメです。

 経験に根ざした知識は絶対に揺るぎません。自分はこうやって知識を手に入れた。実際にあなたが経験しているからこそ、誰からつつかれても抗弁できます。

 現実味(リアリティー)が足りない、と言われる方は、実際に経験してみてください。


 ただし、法律で禁止されている窃盗(万引きという罪名はありません。すべて窃盗です)や違法薬物や傷害・殺人などは実際に経験してはなりません。そういったものは、経験者が語る書籍がいくらでもありますので、それらを読めば事足ります。そこまで現実味(リアリティー)を求めてしまうと「小説賞・新人賞」でも選考さんから引かれてしまうのです。犯罪は浅い知識でかまいません。実際に経験した人のほうが少ないので、書籍を読んだだけでそれほど知識が深くなくてもそれなりの説得力を持ちます。

 もし経験談なのであれば、映画の是枝裕和監督『万引き家族』は監督や脚本家が実際に「万引き家族」だったことになってしまうのです。ありえませんよね。

 書籍を読んだり経験者と面談したりして、法に触れなくても知識を深められたからこそ、あれだけの傑作が生まれたのです。





最後に

 今回は「引き出しを増やす」ことについて述べました。

「プロ」とアマチュアの大きな違いは「引き出しの豊富さ」です。

 例外なく「プロ」は「多くの引き出し」を持っています。しかもそれぞれの底が深いのです。

「小説賞・新人賞」へ応募しても一次選考すら通過しないのは、「引き出しが少ない」か「底か浅い」かで、選考さんを納得させられなかったからかもしれません。

 将来「プロ」になりたければ、まず「引き出しを増やす」ようにしてください。

 増やした「引き出し」には深い知識を収めておくのです。

 その蓄積が将来「プロ」となったときに活きてきます。




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