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三百枚書けるようになるお得な「小説の書き方」コラム  作者: カイ.智水
対決篇〜村上春樹氏は目標たりえるか
1055/1500

1055.対決篇:村上春樹氏の文体2/3

 前回に引き続き、村上春樹氏の長編小説の寸評へツッコみます。

村上春樹氏の文体2/3


 今回もちくま文庫・ナカムラクニオ氏『村上春樹にならう「おいしい文章」のための47のルール』を引いていきます。タイトルが長いので『47のルール』と呼びます。

 ナカムラクニオ氏が村上春樹氏の長編十四タイトルを寸評しているところを元にツッコんでみましょう。の中編です。




『国境の南、太陽の西』

「半自伝的に村上さん自身を描いたような喪失の物語です」「ある日、満ち足りた生活を送る三十七歳の「僕」は、幼なじみの島本さんという女性のことが好きになってしまいます。小学校の五年生のときに転校してきた島本さんは、小児まひの後遺症で少し足が悪い女の子でした」とあります。

 またしても障害者を登場させています。『風の歌を聴け』では四本指の少女、『ノルウェイの森』ではサナトリウムを想起させる直子。なぜ村上春樹氏は身体障害・知的障害・精神障害の人間を好んで小説に書くのでしょうか。健全な「僕」つまり村上春樹氏自身が「優越感」を味わいたいためではありませんか。つまり「マウントをとりにきている」のです。

「物語の中で「国境の南」というナット・キング・コールのレコードが出てきます。しかし、これ本当は、存在しない幻の曲です。ナット・キング・コールが歌った「国境の南」の音源は存在しないのです。/ 実際にレコードがないだけではなく、物語の中でもレコードは消えてしまいます。島本さんは、もしかしたらもともと存在しない幻で、自分自身の中に住んでいる恋人なのかもしれない。そんなことがレコードを通じて表現されているのだと思います。/ 村上さんは、一部の読者だけが発見できる宝箱の鍵を物語の中に、こっそりとしのばせて楽しんでいるのです」とあります。

 これは単に「架空のレコードを出した」だけの話ですよね。それが「幻」であり、島本さんも「幻」なのだ、と考えるのはナカムラクニオ氏の発想が飛躍しすぎだと思います。




『ねじまき鳥クロニクル』

「村上春樹の最高傑作だと言われることが多い『ねじまき鳥クロニクル』。/ 複雑で重層的な物語の構造が、高く評価されています」とあります。

 物語の多層化については私も本コラムに書きましたから、高く評価されるポイントなのは間違いありません。

「謎に満ちていて、奇妙な登場人物ばかり。読んでいても何を意味するのか、何を書こうとしているのか、かなり理解が難しく、読者が想像をふくらませながら読まないとついていけません。しかし、この世界の複雑な「多層性」が描かれていることが『ねじまき鳥クロニクル』における最大の魅力なのです」「まるでシュルレアリスム絵画のように、いろんなものが絡み合って謎に満ちています。それなのに読者はスラスラと何かがわかったような気になりながら面白く読み進めることができます」「村上さんもバラバラのように見えるキーワードを「集合的無意識」の象徴である「井戸」に放り投げて、多層的な世界観を楽しんでいるのです」とあります。

 つまり村上春樹氏自身も、何を書いているのかわかっていないのです。意味を持たせず、とにかく謎だらけにしたかっただけ。分裂ぎみな作品だからこそ、多層的に見えるだけなのではないでしょうか。




『スプートニクの恋人』

「物語では、文学青年である主人公「ぼく」と、文学少女であるすみれ、そして年上の女性ミュウという三角関係が描かれます。/ それぞれ両思いにはなれずに、まるでスプートニクの人工衛星のように恋愛感情がすれ違う様子が丁寧に描かれています」とあります。

 三角関係ではよくある「すれ違い劇」です。

「『スプートニクの恋人』はある意味、ピュアな文学青年と文学少女の美しい夢の物語でもあります。村上さんの「会話力」を最大限に楽しみながら読み進めるのが正解なのでしょう」とあります。

 その「会話力」は、性交渉に関するやりとりがほとんどなのです。つまり際どい会話で読み手の注意を惹きたい。人間は「エロティック」な情報にとても敏感です。この作品はその「エロティック」を楽しむ大人向けの作品と言えるでしょう。




『海辺のカフカ』

「とにかくこの作品は、キャラクターに力があります」と書かれています。

「主人公は、十五歳の田中カフカ。幼い頃に両親が離婚し、母親が姉だけを連れて出て行ったトラウマで傷ついた彼は、ある日家出をします」

「「カラスと呼ばれる少年」も登場しますが、彼はカフカの頭の中にいる想像上の友達。孤独で友達がいないため、自分の頭の中に想像上の友達をつくって会話しています。家から持ち出した折り畳み式のナイフを擬人化して「カラス」と呼んでいるのです」

「さらに中野区野方に住むナカタさんも登場します。字が読めない謎の老人ですが、ネコと話せる不思議な力を持っています」

「カフカの父親は、芸術的な才能を得ることと引き換えに、自分の魂を「悪」に売り渡したジョニー・ウォーカー」

「中日ドラゴンズファンである「ホシノちゃん」」

「ケンタッキーフライドチキンの創業者に紛争した謎の人物、カーネル・サンダースも登場します」

「村上さんは、魅力的なキャラクターを丁寧に練りあげてから、物語を紡いでいるのです」とあります。

 まずカフカ少年は「カラス」と会話するほど精神に変調をきたしています。さらにナカタさんも障害持ちです。カフカ、ジョニー・ウォーカー、ホシノちゃん、カーネル・サンダースはいずれも特定の名称をそのまま使っています。

 村上春樹氏としては、とりあえず長編を書かなければならないが、どうにも物語が思いつかない。キャラクターだけでも個性的にして、それを動かしてみれば書けるのではないか。そういうアプローチに映ります。

 そんな書き方もあると思いますが、小説投稿サイトであればまず「エタる」でしょう。

 本作が十作目の長編であるため、内容がなくても経験だけで小説を書ける能力はあるようです。





最後に

 今回は「村上春樹氏の文体2/3」をまとめました。

 障害者をためらいもなく出したと思ったら、有名な名称や人物を惜しげもなく出してくる。つまり「売るためなら手段は選ばない」村上春樹氏の本領が発揮されています。




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