表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1034/1500

1034.面白篇:先に展開を決めてしまうと面白くなくなるのか

 今回は「先に展開を決める」ことについてです。

 展開を決めずに書きだす方は、緊迫感(スリル)を味わいたいのでしょうか。

「文豪」も緊迫感(スリル)という快楽を味わうために、締め切りまで書かないことが多かった。

 その成れの果てが薬物依存やニコチン中毒、アルコール依存などになって早逝していったのです。

先に展開を決めてしまうと面白くなくなるのか


 連載小説を書く方の中には、「企画書」だけ創ってすぐに執筆に入る方がおられます。

 そういう方たちの多くが「事前に展開を決めてしまうと、躍動感がなくなって面白くなくなるから」と言うのです。

 本当に「躍動感がなくなる」のでしょうか。




展開を決めないと支離滅裂になりやすい

「企画書」から直接執筆する方にご忠告致します。

「あらすじ」「箱書き」「プロット」を経なければ、物語の展開が定まらず、浮き雲のような「ただ文章が存在している」だけの作品になるのです。

「あらすじ」すら創らないと、どんな出来事(エピソード)を起こせばよいのか、毎回悩まされます。

 毎日連載をモットーとしているのなら、ひとつの出来事(エピソード)に時間をかけなければなりません。その間に次の出来事(エピソード)を考え出したら、その時点でようやく今連載している出来事(エピソード)が終わらせられるのです。

 これでは連載が毎回「綱渡り」になります。

 一度この「綱渡り」を味わってしまうと。とくに「綱渡り」しながら連載を完結させた経験があると、この緊迫感(スリル)はクセになります。

 つまり「小説を書いている」と実感するのは、「綱渡り」をしている緊迫感(スリル)を味わっているときだけです。

緊迫感(スリル)が味わいたくて小説を書く」という、本末転倒な動機になってしまいます。

 こんな書き方をされた小説を読まされる人の身になって考えてください。

 文章から緊迫感(スリル)が伝わってきますから、読み手も緊迫感(スリル)を味わえます。それは事実です。だから読んでいて面白い小説にはなりやすい。

 しかし全体を俯瞰で見た場合、出来事(エピソード)に脈絡がなく関連性も見いだせなくなります。つまり「なぜこの出来事(エピソード)が起こったのだろう」という物語の「構成」そのものが破綻してしまうのです。

「構成」が破綻している小説は、読み手になんの教訓も与えません。小説投稿サイトで読んでいるときだけ盛り上がります。しかし「小説賞・新人賞」を獲って「紙の書籍」化しても人気が保てるかというと保てない。連載時には構成のアラは目立ちません。しかしひとたびまとめて読むと、物語が「支離滅裂」になっているのです。

 連載で「面白い」から「紙の書籍」にしても「面白い」とは限りません。

 緊迫感(スリル)を求めて連載しても、「小説賞・新人賞」はまず獲れないでしょう。

 連載を追っていない選考さんからすれば、人気はあるけど物語が「支離滅裂」だから作品として評価できない、と感じます。

 小説の文章が書けていれば一次選考は通過するでしょう。しかし物語の「構成」や「面白さ」を問われる二次選考はけっして通りません。

「面白さ」はどっしりとした「構成」の安定感がなければ、しょせん一過性なのです。

「紙の書籍」化しても「面白い」作品は、しっかりした「構成」によって支えられています。

 あなたは小説投稿サイトのトップランカーの地位に満足してしまうのですか。

 どうせ小説を書くのなら、「紙の書籍」化して小説で食べていきたいとは思いませんか。

 連載時の緊迫感(スリル)を求めて、「紙の書籍」化を逃してしまう。これでは本末転倒ではないですか。

「書いた時間がお金になる」かどうかは、物語の展開を作る「構成」にどれだけ時間をかけたかによります。

 ただし、現在『カクヨム』では広告を表示して収益を受け取る仕組みが出来ました。これにより「緊迫感(スリル)重視の場当たり的な作品」でもお金になるのです。




文豪も緊迫感(スリル)の虜に

 小説を書く方ならご存じかもしれませんが、「文豪」は締め切りが近くなると出版社によって旅館やホテルへ缶詰にされて新作を書かせられていました。

 もちろん期日に間に合うように新作を校了させる「文豪」のほうが多かったのです。

 しかし締め切り近くならないと筆が乗らないという「文豪」もかなりの数いました。

 なぜ締め切り間際にならないと筆が乗らないのでしょうか。

「締め切りに間に合うかどうか」という緊迫感(スリル)を感じないと書けないように思い込んでいたからです。

 緊迫感(スリル)こそ「筆が乗る」最大の要因だと誤認していました。

 そう「誤認」なのです。

 確かに締め切り間際に書いた作品が「傑作」と呼ばれれば、勘違いしても致し方ありません。

 しかしベストセラーの書き手は、執筆など締め切りより前に終わって、残りは推敲に当てていたのです。

 推敲に時間をかけたほうが、より質の高い作品が生まれやすい。

 推敲もせず締め切りギリギリに仕上げてそのまま出版されると、表現を直しようもないのです。

 そうなると名作になるか駄作になるかは、書き手の経験値が大きく作用します。

「文豪」は場数を踏んできた方ばかり。修羅場慣れしているのです。また高い表現力を有していましたから、一発書きできちんとした文章が書けました。

 だからこそ緊迫感(スリル)が「文豪」のモチベーションとなったのです。


 人間であれば誰もが快感に弱い。違法薬物に手を染める芸能人・著名人が多いのも、一度覚えた快感に抗えないからです。

「文豪」の中には違法薬物をやりながら執筆していた方もいました。それもよい小説が書けるようになってからがほとんどです。

 なぜ「文豪」は違法薬物に弱かったのか。執筆の苦労を違法薬物で感じないようにしていたのです。また、締め切り間際の緊迫感(スリル)が回数を重ねるうちに薄れてきて、執筆する意欲を違法薬物に求めました。

 結果として早逝したり廃人になったりした「文豪」が多かったのです。

 執筆に緊迫感(スリル)を求めると、道を踏み外しやすいし早死にしやすい。

 だからこそ、きちんと「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」を経るべきなのです。けっして緊迫感(スリル)の虜になってはいけません。

 計画どおりに執筆する習慣をつければ、健康な体を維持したまま「傑作」を連発できるようになります。

 重ねて忠告致します。

 けっして緊迫感(スリル)を求めて「企画書」だけで場当たり的な執筆はしないでください。





最後に

 今回は「先に展開を決めてしまうと面白くなくなるのか」について述べました。

「企画書」だけで連載を始めると、出来事(エピソード)がなかなか思い浮かびません。なんとか思い浮かんでも全体から見て支離滅裂になりやすい。

 しかもそんなギリギリの緊迫感(スリル)に快感を覚えるようになると、あらゆる誘惑を断てなくなります。

「文豪」は違法薬物だけでなく、タバコやお酒を大量に飲んで身を滅ぼした方が多いのも特徴です。

 そういった誘惑は最初から近づけてはなりません。

 少なくともタバコは今ここで「禁煙」に踏み出してください。タバコは脳が麻痺して思考力を鈍らせます。当人は「頭が冴えている」と思い込んでいるだけでよい効果などいっさいないのです。

 お酒は校了してから嗜む程度にしてください。アルコールは「微量」であれば血の巡りをよくして筆が進む効果もあります。しかし「微量」とはどれほどなのか、正確にわかっている方は少ないのです。日本酒なら数滴、第三のビールなら三十ml程度が目安になります。お酒を飲む方からすればきわめて少ない量ですよね。だから「微量」と言います。アルコールは舌の裏に数滴垂らすだけでよいのです。たったそれだけで血の巡りは劇的によくなります。けっしてお酒を飲みながら執筆してはなりません。これも誘惑のひとつですよ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ