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1031.面白篇:雑学で世界観・舞台の設定を読ませる

 今回は「雑学」の使い方です。

 世界観・舞台の設定を「雑学」として読ませられれば、スムーズに読み手へ受け取ってもらえます。

雑学で世界観・舞台の設定を読ませる


 小説を面白くする要素のひとつが「雑学」です。

 なにがしかのうんちくが書かれているから、読んでいて「面白い」と感じます。

 今回はどんなことを知れるのだろうか。という興味が湧いて仕方がなくなるのです。




雑学を知りたがるのは人の(さが)

 推理小説で冒頭を「死体を転がせ」にしたとき、読み手は「なぜこんなところで死んでいるのだろう」「いつ殺されたのだろう」「どんな殺され方をしたのだろう」「犯人は誰だろう」など、知りたいことが山ほど浮かんできます。そして刑事や探偵が捜査を開始して、ひとつずつ事実を確定させていくのです。

 すると被害者に恨みをもち、死ねば利益を得る者が何人かリストアップされます。

 その頃には死因と死亡推定時刻が判明しているでしょうから「いつ殺されたのだろう」と「どんな殺され方をしたのだろう」の謎が判明します。

 そこで疑わしい人物たちからアリバイを聞く。次は聞き込みでアリバイの裏をとってくるのです。

 つまり推理小説とは「これはなんだろう」という疑問に対する答えを、次々と読み手へ提示していく物語になります。

 これは「その物語内での雑学を得る」ことでもあるのです。

 知っていけば物語内での情報通になって、自身も刑事や探偵になったように事件へ挑んでいけます。

 つまり推理小説の「物語内での雑学」とは刑事や探偵の「推論」であり自供に至る「伏線」なのです。


 推理小説以外でも「物語内での雑学」があると読み手はより感情移入しやすくなります。

 たとえば「異世界ファンタジー」で「太陽は西から昇って東へ沈み、月は東から昇って西へ沈む」という設定があったとします。

 これをまったく書かなくとも物語は書き進められるのです。

 しかし「この世界では、太陽は西から昇って東へ沈み、月は東から昇って西へ沈む。」という一文があるだけで、読み手は「物語内での雑学」をひとつ憶えます。

 たったひとつの「雑学」ですが、この情報があるだけで読み手は脳内でその光景を思い描くのです。それが読み手を物語世界へと一歩連れて行ってくれます。




第一話でジャンルがわかる雑学を必ず入れる

 小説投稿サイトで最も人気のある「異世界ファンタジー」を書いている。なのに第一話の閲覧数(PV)は増えどもブックマークも評価も付かない。

 それは、その世界の「雑学」つまり「世界観・舞台の設定」を読み手へ適切に与えられていないからです。

 主人公の一人称視点なら、往々にして主人公の設定だけを書いて、世界観や社会秩序などが書けていないケースが多い。

「世界観・舞台の設定」は「説明」するのではなく、「雑学」として読み手へ提供しなければなりません。

「雑学」は主人公の心の声でも書けます。もちろん他人や周囲から聞こえてきてもよいのです。

 たとえば、

――――――――

「まったく、それじゃあ太陽が東から昇ってくるようなものじゃないか!」

 しかし今朝も太陽は西から昇ってきた。太陽が東から昇ってくることなどありはしない。東から昇ってくるのは月だけだ。

――――――――

 と書きます。

 これなら主人公の語りだけで「太陽は西から昇り、月は東から昇る」と読み手に伝わるのです。そしてこの「世界観・舞台の設定」が「物語内での雑学」となって読み手の脳内で形作られます。

「雑学」は正面切って書いてしまうとただの「説明」になるのです。それを「視点を持つ主人公の語り」で書けば、読み手へ「雑学」を植えつけて物語内へ深く誘えます。

「物語内での雑学」の大枠を第一話できちんと語っているか。

「異世界ファンタジー」であれば、そこがどんな「異世界」なのかをきちんと読み手へ伝えているのか確認してください。

「現代ファンタジー」であれば、「ここは異世界ではなくあなたの暮らしている現実の世界での話だ」ということをきちんと読み手へ伝える必要があります。単に「現代ファンタジー」のジャンルで書いているから、ここが「現実世界」であると書かなくてもよい、というわけではありません。


 あなたの小説が「紙の書籍」化されたと考えてください。そのとき、初めてあなたの作品を読んだ方には、これが「異世界ファンタジー」なのか「現代ファンタジー」なのか単なる「ファンタジーのない日常」なのか区別がつきません。だから、物語の始まりつまり第一話ですぐに「この作品はどのジャンルの話ですよ」と教えなければならないのです。

「異世界転生ファンタジー」であれば、第一話で現実世界から異世界へ転生していなければならないのです。そうしなければ、この物語が「異世界転生ファンタジー」であると読み手へ伝えられません。

 これが小説投稿サイトだと「キーワード」「タグ」に「異世界転生」と書くだけで説明不要だと思いがちです。しかし「紙の書籍」化を目指して「小説賞・新人賞」へ応募するのであれば、必ず第一話で「この作品はどのジャンルなのか」がわかる「雑学」を読み手へ与えてください。さまざまなジャンルの原稿を読んでいる選考さんに、第一話で「この作品は異世界ファンタジーです」と伝えられるかどうか。

 たったそれだけのことで、一次選考を通過できるかどうかが決まります。

 考えてもみてください。選考さんは、選考するだけが仕事ではありません。さまざまな職業の方が臨時で駆り出されます。出版社レーベルの編集さんなら常日頃から「プロの書き手」さんとの原稿のやりとりや印刷の手配など作業が山積みです。新人の「プロの書き手」なら普段は自分の新作を書くので手いっぱい。編集プロダクションには選考専門の人員がいるかもしれませんが、たいていは「プロの書き手」を抱えて出版してくれる出版社レーベルを仲介しています。いずれにしても読み返す時間はないのです。

 だから第一話できちんと「この作品はどのジャンルなのか」がわかる原稿は高く評価されます。「世界観・舞台の設定」を「説明」するのではなく「雑学」として読ませられるかどうか。

「基礎なればこそ」

 この言葉の真意を見極めてください。





最後に

 今回は「雑学で世界観・舞台の設定を読ませる」ことについて述べました。

 第一話で必ず読み手を惹き込むには「世界観・舞台の設定」を「雑学」として読ませるのです。

 そうすれば第一話の評価は必ず高まります。

 新作はいつも第一話だけよくて、第二話以降にはつながらないのも「世界観・舞台の設定」を「雑学」化できていないからです。




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