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1026.面白篇:型破りは型を知らなければできない

 今回は「型破り」についてです。

「型破り」な「斬新な発想」なんて、普通の人には思いつきません。

 そこでまず「型」を知りましょう。「型」を知っているから「ズラせる」ようになります。

型破りは型を知らなければできない


 よく「型破り」な作品が大賞にふさわしいと言われます。

 どうすれば「型破り」な作品が書けるのでしょうか。

 そのためには、あらゆる「型」を知りましょう。




型を知る

「型」を知る。

 簡単に書いていますが、実際にはどんなものを知ればよいのでしょうか。

 私は何度も繰り返し語ってきました。

 小説における「型」とは「テンプレート」のことです。

 つまりどういう主人公が、どういう仲間とともに、どういう難関を越えて、どういう「対になる存在」と対峙して、どういう結末へ至るのか。この流れの大枠が「テンプレート」つまり「型」です。

 よく「若い感性から生まれた斬新な発想」と言われます。

 では若い人はいつも「若い感性」から「斬新な発想」をしているのでしょうか。

 これは完全に事実誤認です。「若い感性」という言葉自体が曖昧なもので、何歳まで何十代までなら「若い」のかを示せていません。

 たとえば中学二年生は「若い感性」で「斬新な発想」ができるのか。

 おそらく「斬新な発想」は生まれません。なぜなら「なにが斬新なのか」基準を知らないからです。

 斬新さの基準は、既存の「型」をどれだけ知っているかで決まります。

 さまざまな「型」を知っているからこそ、その隙間にある「斬新な発想」にたどり着けるのです。

 知らずに「斬新な発想」だと精魂込めて書いて発表してみたら「これは○○に似ていますね」と指摘されてしまいます。つまり「パクリ」扱いされるのです。


 普遍的な「型」にハマるのはあまりよい印象を与えません。無難すぎるのです。

 初心者は小説の「型」を知るために「テンプレート」作品をたくさん書きましょう。そうして「これが型のひとつなんだな」と理解していくのです。

 熟練者も流行りの「型」を短編でもよいので一度は書いておきましょう。そこから「こういう要素がウケるのか」「こういう展開がウケるのか」が見極められて、「紙の書籍」になる作品で「ウケ」を狙いやすくなるのです。


 身も蓋もない言い方をすれば、「売れるためなら、なんでも使え」というのが小説界の鉄則です。もちろんまるまるパクると盗作になります。しかし「ウケる」要素や展開だけを拝借するのはどのレベルの書き手も行なっているのです。「文豪」だって他の書き手の大ヒット作を下敷きにして新作を書いていました。ただし当時はすべての書き手の作品を読むような人はまずいませんでしたし、インターネットが普及していたわけでもありません。

 もし「文豪」が活躍していた時期にインターネットがあったら、「この作品は○○氏の『△△』のパクリですよね」と即座にレビューが付いたことでしょう。

「文豪」すら流行りの「型」を見様見真似(みようみまね)で書いていたのです。生活していくためにはなりふり構っていられなかった、とも言えます。




型を破る

 型破りな作品を書くためには、まず「型」を知りましょう。

「型」を知っていれば、そこから「ズラし」て型破りな作品を生み出せます。

 型破りとは、「型」を習得しているからこそできること。これは剣術や柔術などの武術にも通じます。

 かの剣聖・宮本武蔵氏も『五輪書』の中で、目線の使い方や剣の扱い方の「型」を教えるほか、他の流派を取り上げて「この流派はこういう型を持っている」と教えているのです。宮本武蔵氏といえば吉岡一門を倒した奇襲戦法や、佐々木小次郎氏を倒したわざと遅れてやってきて相手をイライラさせる戦法を得意とした剣豪のイメージがあります。そんな型破りな発想も、相手の「型」を知っているからこそ編み出されました。『五輪書』には自分の型を身につけて、相手の型に合わせて機転を利かせて対処する方法が記されているのです。

「文豪」も宮本武蔵氏も、まず「型」を身につけました。そこから臨機応変に対処できて初めて「免許皆伝」つまり一人前だと判断されたのです。

 あなたも「小説賞・新人賞」を獲りたければ、まず「型」を知り、次いで「型を破って」斬新な作品を目指してみませんか。




小説投稿サイトごとの型を知る

 小説投稿サイトが今、十以上存在します。

 そのうち「紙の書籍」化したサイトは限られるのです。

 小説投稿サイトは、どんな「小説賞・新人賞」が開催されているかと、どの出版社が主催・共催しているかを調べてから利用してください。

 大手の出版社が噛んでいれば、「紙の書籍」化しやすくなります。

 中小の出版社では開催される「小説賞・新人賞」で大賞や優秀賞を獲らないかぎり「紙の書籍」化されません。

『ピクシブ文芸』は幻冬舎が共催して「ピクシブ文芸大賞」を開催しましたが、「紙の書籍」化された作品は大賞と優秀賞の三作品のみでした。

『小説家になろう』で開催された小説賞では、佳作に入っても「紙の書籍」化された作品があります。

 現在最大手の小説投稿サイトは『小説家になろう』ですが、最大手の出版社はKADOKAWAです。そのKADOKAWAが共催している『カクヨム』は、開催される「小説賞・新人賞」で佳作に残れれば「紙の書籍」化が見えてきます。つまり『小説家になろう』で開催される「小説賞・新人賞」は競争率が高い割に「紙の書籍」化されづらく、『カクヨム』で開催される「小説賞・新人賞」はそれよりも競争率が低い割に「紙の書籍」化されやすいという傾向が見て取れるのです。

 小説投稿サイトごとにウケる作品の傾向は異なります。

『小説家になろう』なら「主人公最強」や「異世界転生」が強いのはランキングを見ればわかるはずです。もし『小説家になろう』を主戦場にしたいのなら、ランキング上位の「主人公最強」や「異世界転生」の「型」を知りましょう。次いで人気のある「追放」「ざまぁ」の「型」も知るべきです。

「型」を知っているからこそ、その小説投稿サイトでウケる作品が書けます。

 そして「型」を知っているからこそ、型破りな作品が書けるのです。

『小説家になろう』で開催される「ネット小説大賞」へは型破りな作品を応募しましょう。「型」にハマった作品が大賞を獲ることはまずありません。

 よく講評で「既存の枠にとらわれず」というフレーズを目にします。そのくらい型破りな作品は評価されやすいのです。

 その小説投稿サイトの「型」を知り、そのうえで型を破れば「小説賞・新人賞」が獲りやすい。

「紙の書籍」化を目指したい方は、ぜひ型破りな作品を書いてください。

 目先のランクポイントや順位を追わず、その小説投稿サイトでは需要の少なそうな作品を応募する勇気を持ちましょう。





最後に

 今回は「型破りは型を知らなければできない」ことについて述べました。

 小説投稿サイトごとにウケる「型」が異なります。

 その「型」をまず身につけてください。身についたら、少しズラして型を破ってみるのです。

 型破りな作品は「型」を知らなければ思いつきません。

 しかし型破りな作品は、その小説投稿サイトでは人気が出にくいのも事実です。

 開催されている「小説賞・新人賞」へは、必ず型破りな作品を応募しましょう。

 凡百の「型」つまりテンプレート作品を応募しても大賞は獲れず、時間をムダにするだけです。




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