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指輪の魔法  作者: き・そ・あ
9/9

2-4 水色と思ったらピンクな件

 テントの中には、広さの割に不釣合いなランタンがひとつぶら下がっているだけだった。


(薄暗いな。このテントに・・・誰かいるのかな)


 ルカはテントの中を軽く見回すと、そこには人影らしきものは見当たらなかった。

 声あの主がいないことを不自然に思いながらも、ルカはテントの中を調べ始める。

 テントの入口には散らばったボウガンの矢が散乱し、大きめの丸太を的にしていたのか、何本か突き刺さってる。

 剣で切りつけたような跡や、丸い、なにか穴があいているものがあった。

 ボウガンの矢よりも、小さかったり大きかったり・・・。その穴はいびつな大きさだった。


「っ!?」


 丸太を見てると、背後に視線を感じた。

 急いで振り向くも、そこには誰もいない。

 視線、と表現するよりも、誰かそこにいるような感覚だった。

 テントの奥の方は小奇麗になっていて、寝床らしき場所と、いつからあるかわからない中の入った酒瓶。

 謎の干し肉・・・。

 その片隅に、乱雑に置かれた数本の剣が置いてあった。

 ルカは広い、と言っても見るところがそれほどないこのテントの中、もうどうしようもなくなっていた。


(結局、声の主はどこにいるんだろう・・・。)


 床に散らばる剣を拾い上げ、鞘から刀身を抜くとそこにはヒビが入っているもの。折れている物といい、素人目にもわかるほど粗末なものばかりだった。

 残念だが、これ以上ここにいることはできない。と判断したルカは律儀にも剣を元の場所に戻すと、テントの外へ向かって歩き出した。


【ここよ・・・。私は、ここ】


「どこっ!?」


 ルカは声が聞こえなくなる前に声のした方を振り向いた。

 そこには、相変わらず誰もいない。

 一歩、テントの入口に進んだ。


 ・・・。何も起きない。


 さらに一歩、テントの入口に進んだ。


 ・・・。相変わらず、何も起きない。


(気のせいなのか?なにか、ここまで来ていて何もないなんて・・・)


「はぁ・・・。」


 残念な気持ちが溜息となって出てきた。

 森の中、学園までサボってアリアとこんな場所まで来て、さらにこんな得体の知れない場所にいる危なそうな奴らのところでこんな危険をおかしているのに・・・。

 まさかの手ぶらで帰るとは。

 このテントにあるのはボウガンと使い物にならなそうな剣が数本。

 とても欲しいものはない。

 ルカは軽く首をかしげ、落胆のあまり肩を落とす。


 ぴちゃ・・・


 足を踏み出した次の瞬間、ルカは体勢を崩しその場に倒れ込んだ。

 足の感覚がおかしい。


「なんだ?どうしてこんなに水が・・・ここには何もなかったはずなのに・・・。」


 足元には水たまりが出来ていた。

 地面がぬかるむくらいの水たまりがここだけ、ルカの足元にだけで来ている。

 そのぬかるみに滑りルカは崩れるように転んだのだ。


「こんな水・・・どこから?」


 水溜まりにたまった水を触りながら床のぬかるみをよく見てみると、水は剣の方から染み出しているような感じだった。

 さっき見た、ヒビの入った剣。鞘から水が静かに溢れ出し、そのまま地面を這いながら真っ直ぐにこっちへ向かってきている。

 ルカは不気味に思いながらも、再び剣を手に取り鞘から抜き放つ。

 薄暗いランタンの光では見えにくかったが、よく見ると柄の部分に薄水色に光る宝玉が見える。

 伝説上の水龍をモチーフにしたのか柄に部分にもちょっとしたこだわりが見える。

 刀身にはうっすらと青い人影が見え、影がランタンに照らされゆらゆらと陽炎のように動く姿がまるで生きているようだ。


【汝、我が主として認め、ここに契約を示す】


 一瞬、目も開けられないほどの閃光が足元に広がり、魔法陣がひろがっていく。


「うぐ・・、ああああああっ!!」


 急に金属がすり合うような甲高い音が耳に響く。

 ルカは驚きのあまり手にしていた剣を地面に落とし、両耳をふさいだ。

 耐え切れないくらいのボリュームになり、一瞬意識が遠のくような、体から力が抜けるような感覚に襲われ、その場に倒れるようにしゃがみこみ目を閉じる。

 少しすると、そのボリュームは少しづつ小さくなり、体の感覚も少しづつ元に戻ってきた。


「マスター、大丈夫ですか?」


(マ、マスター?誰のことだ?)


 聞きなれない声に驚き、ルカは半分ぼやけた意識のまま視線を声のした方へと向ける。

 霞む視界の中、2本の足が見える。


(足?誰だ?さっきの声・・・、僕を呼んでた?)


 目をこすりながらゆっくりと立ち上がると、そこには長い水色の髪、紫色と青い色違いの瞳。見た目は、ルカと同じくらいの女の子が心配そうにルカの顔を覗き込んでいた。


「大丈夫・・・ですか?マスター」


「君は・・・。僕を呼んでいた女の子?」


「は、はいっ!やっと出会えました。」


 うっすらと瞳に涙を浮かべながら優しく微笑む彼女。


「どこに隠れてたの?まぁ、見つかってよかった。君こそ、怪我もなさそうだしよかった。」


 意識を完全に戻したルカは再びテントの中を見渡すも、そこにはまだ人の気配はない。


(まだ、誰も帰ってきてはいないみたいだ・・・。でも、さっきの音で気づかれているだろうな)


「わ、わたしは―」


「と、とにかくここを出よう!さっきの凄い音を聞かれてたらここは危険だ。きっとまた連中が戻ってくる。さぁ!」


 ルカは喋りかけた彼女の声をかき消すように言い放ち、手を掴むと急いでテントの外に向かった。


「う、うわぁ!!」


 勢いよく走り出したルカは膝がガクッと脱力し、そのまま前のめりになって倒れた。


「だ、大丈夫ですか?まだ無理をしない方がいいのではないでしょうか?」


 彼女は倒れるルカの手を即座に放し無事だった。

 倒れたルカの前にしゃがみこむと、そっと手を差し出す。


「いててて。そ、そうだね。まだ・・・、その、、うん。ありがと」


 ルカは差し出された手をつかもうとすると、視界に薄ピンクに光るものが見えた。

 彼女はルカに見られていることは気づいていないようだった。

 ルカは視線をゆっくりと外し、見てしまったことをバレないようにゆっくりと立ち振る舞った。


(・・・。そこはピンクなんだ。)


 服についた汚れを払いながら、冷静に分析する。

 彼女は慌てる様子もなく、静かにルカの様子を見ている。


「そ、それじゃあ今度こそ行こうか」


「はい。マスター」


(この子、なんで僕のことマスターって呼ぶのかな・・・それに、確かに誰もいなかったのに)


 テントの入口に向かう途中、振り返って見渡してみるも女の子一人隠れて入れそうなところはない。


「おいっ!!だいじょうぶか!!なにがあった?!」


 不思議に思いながらもそのままテントを出ると、すぐ近くで男の声が聞こえる。


(や、やばい!!見つかる!)


 慌ててアリアの方へ視線を送るとアリアもこちらを見てなにか合図をしている様子だった。


「どうしたんですか?マスター」


 後ろから出てきた彼女の声が聞こえ、体がビクッと大きく動いた。

 アリアは茂みの中で大きなため息をついているように見える。


「だ、だれだ!!そこにいるのは!」


 相手も急な声に驚いたのか、動揺しているようだった。

 ルカは黙って彼女の手を握ると今度は転ばないように注意しながら走り出した。

 後ろから眠らせた男の仲間と思われる人間も息を荒げて近づいてくる。


「だ、ダメだよ!声を出したら!!アリア!!先に逃げろっ!!」


 ルカが叫ぶと、アリアは頷くと先に街道をめがけて駆け出した。

 高鳴る鼓動を抑えながら、湧き上がる興奮をルカは楽しんでいた。不思議と恐怖が少し和らいでいる。後ろを振り向かずに、一目散にアリアのいる場所へ道なき茂みをかき分けながら走り抜ける。


「そ、そうだったんですか?いきなり止まっていたのでどうしたのかと思って・・・」


 手を引っ張られて連れてこられる彼女は、どこか楽しそうにはしゃいだ様子でついてくる。

 草木をかき分け、3人は凄まじい勢いで迫りくるその手から、街道があったと思われる方向へ逃げ出した。

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