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指輪の魔法  作者: き・そ・あ
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プロローグ 世界を変えるのは、俺だ!と言いたい。

「―悪いドラゴンが世界を暗黒に染めました。」


 とても裕福な家とは言えない外観の、

 とても裕福とは思えない寝床で、

 とても世界絶世の美女とは言えない中年女性のもと、

 とても賢くて聡明そう、

 とは言えない男の子が今まさにその2つのまぶたを閉じようとしていた。


 言うなれば、

 ごく普通の家のごく普通のママが子供を寝かしつけている。

 ただそれだけだ。


 そして、その子供は今にも寝そうなくらいに弱っている。

 母親はだいぶ【くだびれた】絵本を片手に読み聞かせていた。

 母親が持っている絵本は、この世界では人気の絵本だ。

 世界創造の主が、一つの指輪に姿を変えて世界のどこかに堕ちる。

 その指輪を見つけたものは世界を再編できる能力を手に入れることができる。


 そんなおとぎ話をすこし変えた物で、悪いドラゴンが人々をいじめている。それに困った王様が世界に散らばる6つの指輪を集めて悪いドラゴンをこらしめて、仲良しになる。と言った内容だ。

 少年はやんちゃそうな顔つきで、この手の冒険物が好きそう、といえば好きそうな顔だった。


「悪いドラゴンは、世界中の人に悪いことをたくさんしました。

 そこで、困った王様は、この世界に散らばる6つの指輪を集めました。

 火、水、風、土、光、闇。

 光り輝く始まりの指輪を6つ集めた王様は、悪いドラゴンに戦いを挑みました。

 悪いドラゴンは、王様の集めた6つの指輪に力を吸収されてドンドンその大きな体を小さくし、弱くなっていきました。

 王様の集めた指輪は、悪いドラゴンのエネルギーをドンドン吸収すると、眩い光はその輝きを失い、王様の指から落ちると音もなく砕けてしまいました。

 ドラゴンは飛ぶことすらできなくなり、力なく地面に座りました。

 王様も、指輪が全てなくなってしまい、その場に座り込んでしまいました。

 ドラゴンも王様も、お互いジッと見つめ合っています。

 そうすると―・・・」


 母親は少年が寝ているのを見て、頭をそっとなでると、最後まで読まず枕元に絵本を閉じて置きました。

 部屋の灯りを消すと、きしむ扉をゆっくりと閉めて部屋の外へ出ていく母親。


 何も知らない少年の運命が、今ゆっくりと動き始めます。


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