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絶体絶命になった

短編です。よろしくお願いします。


5/5、一部表現の変更、行間の調整をしました。

 異世界にきて早二ヶ月。

 どっかのラノベみたいにチートを貰えるでもなく。

 知識で無双できるわけでもなく。

 着の身着のままこの世界に放り出されたが、簡単な依頼をこなしたり、たまたま学生の頃やっていた空手で弱い魔物を倒した素材とお肉で何とか今日まで生き延びてきた。


 部活真面目にやってて本当によかった。自慢じゃないが全国大会に出たこともある。

 最もそのせいで俺ラノベの主人公になっちゃう?無双しちゃう?なんて淡い期待も持ってしまったが。


 まぁ夢から覚めるのも早かった。やはり当然のようにあった冒険者ギルドにて、テンプレであるチンピラ冒険者に絡まれあっさりとのされたのだ。

 いやぁ強いのなんの。やっぱり戦うのが職業の人は違うね。一撃一撃が重くて心もプライドも希望も見事にぽっきりだよ。


 その場はたまたまAランクの良識ある冒険者さんに助けてもらったからちゃんと登録できたものの、それがなかったら俺、今生きてなかったと思う。

 あの時の冒険者さんにはマジで感謝してる。

 いつか生活に余裕ができたら恩をお返しします。と、誓いつつ誓いは早くも破られようとしている。

  理由?それは……


「だから何でこの素材を買い取ってもらえないんですか!?」


 こんな時でも敬語になる自分は日本人だなぁなんていうのは今はいいか。


「でーすーかーら!トモシさんの持ち込まれた素材はどれも過剰に持ち込まれたり時期が悪かったりで買い取れないんですよ!」

「昨日までは買い取ってくれたじゃないですか。なんとかなりません?」

「なんともなりません。そもそもなんでこの時期にゴートなんてとってくるんですか?」


 ゴートっていうのは羊みたいな生き物だ。前にいた世界と一緒で毛が売れる。

 いや、時期じゃないのはわかってるが大人しいから狩りやすいんだよ。


「ゴブリンもですよ。普段なら常時討伐対象で賞金も出るのに、どうしてギルドで大規模な討伐が終わってから持ってくるんですか。しばらくゴブリンの賞金なんて二束三文ですよ?」


 普段なんて複数で襲ってくるから無理なんだって。

今なら単独行動するうちもらしがいるから何とかなってるだけだって。

 受付嬢の説教は続く。


「それからこの」

「あーわかりました、わかりましたよ。諦めます」


 多少厳しいとは予想してたけど、まさかほとんど買い取りができないとは。

 これ以上ここでギルド嬢に文句を言っても状況はよくならないだろし、むしろ俺自身が嫌いなモンスターペアレントチックな気分で少々自己嫌悪してしまう。

 だったらここで長居をするより先のことを考えて行動したい。


 俺は素材や部位を皮袋に入れなおしてギルドを後にする。

 しかしまいった。所持金に余裕なんてない。


「あー。明日からどうすっかな」


 不安が言葉になって漏れる。

一応宿は明日までの分の支払いを済ませている。とりあえず今日は宿に戻って対策を練ろう。


「いらっしゃい!あっ、トモシさん、おかえりなさーい」


 宿屋に着くと、快活そうな少女が笑顔で挨拶してくれる。この宿の看板娘、シーナちゃんだ。


「ただいまシーナちゃん」

「どうしたんですか?浮かない顔して?」


 しまった、顔に出てたか。


「あー、ちょっと資金難でね。明日この宿を出ていかなきゃいけないかもしれないんだ」


 あ。

 ちょっと弱気になってたせいかぺろっと喋ってしまった。気がついた時には後の祭り。


「えー?トモシさん出て行っちゃうんですか?」


 シーナちゃんが寂しそうな顔をする。

 うっ、ちょっと罪悪感。


「でもトモシさん、うちって料金相当安いですよね?私、うちより安い宿はそう知りませんし、そういうところは怖い噂を聞きますよ?」


 がふっ。

 シーナちゃんの突きつける現実が心に刺さって痛い。


「ま、まぁ最悪野宿でもすれば」

「それに野宿も危険ですよ。この辺りはまだ治安いいですけど、野宿できそうなところって治安の悪いところばかりですから」


 もうやめて!シーナちゃん!とっくに俺のライフはゼロよ!


「ま、まぁ何とかするしかないからな」


 そんなことを口にはしながら何とか笑ってみる。

あ、これ顔に出たな。シーナちゃんの顔が物語ってる。

 てかシーナちゃん、女の子がそんな顔しちゃいけません。


「と、とりあえず部屋に戻るよ。そうだ、今日も調理場借りられる?」


 なんとも微妙な空気になったので、少し話題を逸らす。


「あ、はい。いつものように忙しい時間を除けば大丈夫だと思います。もしダメなようなら伝えに行きますね」


 よし。話題を逸らすことに成功。


「よろしく」

「あっ、あのっ」

「ん?何?」


 部屋へ行こうとする俺をシーナちゃんが呼び止める。



「あまり気を落とさないでくださいね。トモシさんならきっと大丈夫だって信じてますから」


 そう言って奥へ消えていった。

 シーナちゃんエエ子や。

 シーナちゃんの励ましを嬉しく思いながら部屋に入ると荷物を適当に放ってベットで横になる。


 さて、改めて明日からどうするか。

 今まで通りじゃ明日も買い取ってもらえない。


 別の需要ありそうなのを狙うか?っつってもそういうのは大抵強いだろうし、弱いやつは競争率が非常に高い。

 あとは行きにくい場所だったり数が少なかったりでやっぱり難しい。


 いっそ別の街に移住するか?これも無理。

 この世界にきてまだ日が浅い俺は地理に疎いし、移住した先がここより環境が悪かったら俺の人生は終わる。


 じゃあ冒険者以外の職は?これも正直厳しい。

 専門職は知識がないから無理だし、簡単な仕事は賃金が激安。

 それに奴隷もいるからそういう仕事自体少ない。


 そう、奴隷がいたんだよ。しかも酷いパターンのヤツ。

 もし何ともできなくなったら奴隷落ちするか、餓死するしかない。

 そんなん絶対嫌だし。


 んでもいい手は全然浮かばない。あれ?もしかしてこれって詰んでる?

 いやいやいや、安◯先生も言ってたじゃないか。「諦めたらそこで試合終了ですよ」って。とにかく考えろ俺。




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