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王の剣士3「剣士」  作者: 雅
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第三章 八

「上将お一人で、行かれるのですか!?」

「そんな無茶な話、何でそのまま納得して来られたんです!」


 一人執務室に戻ってきたグランスレイの言葉に、クライフやフレイザーがグランスレイに詰め寄った。ヴィルトールとロットバルトは非難こそ口にしなかったが、その顔の上には到底承服しかねる色が浮かんでいる。


「バインド相手に軍を出す意味はないと、王はそのおつもりで命を下された」


 フレイザーは不服そうに目の前の顔を睨んだ。


「ではせめて、我等のうち一名だけでも、上将の傍にお付けください」


 グランスレイは考え込むように彼等の顔を見渡した。


 王は軍を動かす事は認めず、レオアリスにだけ討伐を命じた。


 確かにたった一人で行かせる訳にはいかない。だが、その事が王に背いたと指摘される事にも繋がりかねない。王からではなく、他の諸侯からだ。


 批判の糸口をこれ以上広げさせるべきではない。


「――ロットバルト。上将に付いて、北方へ向かえ」


 ロットバルトは微かに目を見開き、それから笑った。


「私の立場なら、それほどの咎を受けまいとお考えですか」


 ロットバルトの指摘に、グランスレイは僅かに口篭った。

 彼の本来の身分を考慮したのは事実だ。ヴェルナーという地位を背景に持つロットバルトならば、諸侯の批判の声は封じ込める事が出来る。


「……そういう意味だけではない。お前なら預かる隊も無く、かつて上将に伴って郷里を訪れた事もあるだろう。それ故、適任と考えたのだ。不服か?」

「いえ。喜んで参りましょう。まあバインド相手では、私が力になれる事はほとんどないでしょうが」


 グランスレイは不器用だと、ロットバルトは心の内で笑う。ただ違うと言えばいいものの、彼の性格ではそれはできないのだろう。


 今回その実直さが少しばかりの不安を招きはしたが、だからこそレオアリスもまた、彼に全般の信頼を置いているのだ。


「上将は一刻後、夜明けと共に発たれる。戻って準備をし、再びここへ」

「承知しました」


 夜明けまで、それほどの時間は無い。ロットバルトはグランスレイに一礼すると、踵を返して扉に向かった。









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