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「卒業」シリーズ

人魚姫、高校辞める

作者: 希恵和

連載小説「卒業」の補完になります。「卒業」読後にどうぞ。

 人のこと信じるとかもう二度とできないと思っていたんだ。

 だから、私。嬉しいんだ。また誰かと笑える日がきたことを。その機会を私は得たことを感謝したい。


 ――そして、初めての恋をした。

 

 そんな幸せを得させてくれてありがとう。


「りんご」

 それが私の名前。

「美鈴」私が彼女に呼びかける。

 それが彼女の名前。目の前の黒髪ストレートの女の子は生徒会会長の紀式美鈴(きしきみれい)。容姿端麗な私の親友。

「もう5月になる。体育祭までもう少しだ」

「そうだね」私達は高校三年生。環境は5月。そろそろ部活は引退。本来なら引退式とかしてもらうけど。私は文藝部の幽霊だから。勝手に退部届けだけ出して終わり。そんなもの。

 そこで美鈴がきりだした。

「そろそろ教室にでもいけばいいのに」

 

 ――私は保健室登校の女の子。吊り目。青白青魚。青い服しか似合わない。

「嫌。青魚は冷蔵庫のなかでしか生きれないよ」

「ふざけるなよ。りんご」

「ふざけてなんか」いない。

 

 透明な膜で覆われたように私の心は何故か感覚を失っていた。

 何故か。分からない。文化祭以降。何かが変わってしまった。何も変わっていないのに。



「――先輩」

 帰り道、誰かに呼ばれた。

 そう呼ぶのは一人しかいない。後輩の尾野仄香ちゃん。とても優しくて素敵な自治会の応援スタッフ。この前も一緒に文化祭を盛り上げるために戦った。後輩というより戦友。

「引退なされたんですね。お疲れ様です。本当なら引退式もしないといけないんですけど」

「あ、いいよ。私なんかただの幽霊部員みたいなものなんだし。中野さんだけしとけばいいよ。あの人は仕事二年間してたんだし。私なんて退部しても問題ないし」

「問題なら少しはあるんですが」

「え? 」

 あるの? もしかして人数少なくて……廃部? 

 嘘だ。あ、でも一人になるから。や、ヤバイ。


「――どうやら先輩の退部が生徒会に認証されてないみたいで、援助金が一人分多いんです。まあでも幽霊部員のゆずきのせいで部費はかつかつなんで、いいですけど」

 ああ、お金のほうか……。


「幽霊いたんだ」

 というかその『ゆずきちゃん』には、私会ったことないけど。

「はい、最近知りました」

 最近なんだ。ちゃんとしようよ会計問題を。


「先輩」

 まだ何か?

「中野先輩に会ってみませんか。あの人はなんというか素敵な人なんです。皆を幸せにする……みたいな。とにかくそんな魅力のある人なんです。だから」

 

 ――後輩の思いやり、痛い。


 だからって簡単に会っちゃいけないんだよ。たとえ、体育祭のスタッフ大変でしたとか文化祭も応援スタッフしてましたって言い訳だけ並べても、

 それは私にしか得が無いんだから。

 私のせいで迷惑こうむったのはその人でしょ。一人で部活切り盛りして。偉いよね、中野さん。

「止めとく。今更何やっても無駄だし」

 私は私の道を行くから。ごめんね。ほのかちゃん。

「ばいばい、ほのかちゃん」



――次の日。人権を考えるとか何かで近所のホールでビデオ鑑賞。もちろん保健室からも私、参加。


「――ビデオ鑑賞は嫌いだ」

 遠くで安藤が生徒会副会長らしからぬ発言をしているのを聞いてしまった。

 そして、横には。

「安藤。あんた仮にも副会長じゃ……」

 中野さんだった。二人は恋人とか? 

 でも、安藤か……苦労するよ。中野さん。

 勝手に哀れんでしまいました。

 だって、安藤だもん。


 でも、そっか。安藤の彼女なら。


 ――彼のことが好きなんだと思ってた。

 

 彼女も、おぼれていた私を助けた……あの男の子のことがすきなんだと思ってた。

 勘違いか。はは。



「――お隣、いいですか」

 ――それは出来心でした。ホールの中が自由席だったからってわざわざ中野さんの隣に座らなくてもいいじゃない、私。

「どうぞ」

 中野さん親切! ごめんね。中野さん。二年ほどご迷惑をかけたのは私なんです。この雪柳りんごなんです。本当に申し訳ないです。

 そして、座る。

 ――どうしよう。何いうか考えてなかった。え、こういうときは……私からきりだせば……。


「人魚姫……」

「へ? 」

 今なんて。

「いや、きれいだなっと思って」

 中野さん。お世辞なんていわなくても。

 

 後、どちらかといえば『白雪姫』です。りんごだけに。

「中野さんのほうこそ、素敵じゃないですか」

 そうつぶやいたとき、ちょうど映像が上映されてしまい。言葉はかき消された。


 あー、はずい。私の馬鹿馬鹿。人にほめてもらっといて自分は何にもなしかよ。ホント。私ってばかだ。

 人生に絶望して勝手に死のうとした挙句助けられ未だに生きているんだから。

 

 ――私は。最強最悪の愚か者だ。


 やっぱり気付いてよかった。

 ありがと。中野さん。あの時、私を助けてくれて。あなたは覚えてないけれど私は覚えてたよ。

 中野さんはかわらないもの。私の恩人ってとこは変わってないよ。 


「最後の最後であなたに会えて、私本当によかった」

 私は彼女に言った。今度こそ聞こえただろうか。私の思い。



 ――後日、私は高校を中途退学した。

 

 そしてこれからの人生を改めることにした。

 とりあえず、高校認定はとりたいので、通信制には行く。でも、それより私はもっと経験をつみたい。もっといろんなことを知りたい。

 勢いで高校辞めてしまったけど。まあ、いっか。

「まあ、なんとかなるでしょ」

 

 ――とりあえず、海にでも行こう。


 お先真っ暗だけど、とりあえず希望だけは満ち溢れてた。


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