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四の姫お菓子を作る  作者: 十海 with いーぐる+にゃんシロ
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エミルのお料理教室2

 

「……どう、師匠」


 薬草店の台所で、ニコラが緊張した面持ちでフロウを見上げた。

 授業で教わったルバーブのパイを、さっそく作ってみたのだ。その間、フロウは見守るだけ。何度かひやひやする局面もあったが、あくまで見守るだけ。


 皿にとりわけた一切れのパイは、あらかじめ少し冷ましてあった。フロウが猫舌だからだ。

 それを、さらにふーふーと冷ましてから、ぱくりと口に入れる。


「ん……初めて一人で作ったにしちゃ、上出来だな」

「やったぁ!」

「でもよお、ニコラ……これは……いくらなんでも……」


 味は悪くない。生地も上手い具合に混ざっていて、こんがりいい感じに焼き上がっていた。

 だが、この大きさはどうなのか。


「多い」

「えー授業で教わった通りに作ったのに……」

「どう見たってこれ、お茶会用とかの5人か6人分ある分量だぞ」


 おそらく授業では5~6名のグループで一皿のパイを作ったのだろう。その分量そのままで作ったものだから……ルバーブのパイが、巨大なパイ皿にぎっしりこんもり山盛りに。


『エミリオの奴、またずいぶんとダイナミックな指導したもんだなあ……』


 若い男ならともかく、さすがに中年の胃袋にはいささかきつい。


「6人分食えと」

「しまった、それ考えてなかった」

「んぴゃ!」


 フロウは苦笑して、肩に飛び乗ってきた猫を撫でた。


「ま、ちびがたらふく食うから大丈夫だろうけどな」

「ぴゃあ」

「余ったらダインに食わせりゃいいし」

「ぴぃ」


 噂をすれば影とやら、ちょうど店のドアが開いてのっそりと、背の高い人影が入ってきた。


「あ、ダイン来た」

「ただ今!」


 金髪混じりの褐色の髪、緑の瞳のがっちりした体つきの青年は、ひくひくと鼻を蠢かせて空気のにおいをかぎ、柔和な顔をほころばせた。


「美味そうなにおいだな!」


     ※


 ちょうどその頃。エミリオも大量のパイを前に冷汗をかいていた。

 お盆に山盛りになったルバーブのパイを、ささげ持っているのは他ならぬシャル。女神のごとき丹精な顔いっぱいに、あどけない笑みを浮かべている。


「魔法学院の生徒さんたちが、差し入れてくれたんだ」


 この展開、予測すべきだった。

 銀髪の騎士様は、魔法学院の女生徒たちにたいへん人気があったのだ。


「うん……いいんじゃないかな。美味しいものを食べると、幸せになれるしね」

「だよね! あ、ロベルト隊長や隊のみんなにもおすそ分けしてきたよ!」


 おすそ分けしてもこの量なのか。

『分量通り』に作るのが大事だと教えた。

 けれどまさか、素直に生徒の一人一人が実習で教えた分量で焼いて来るとは……。


(次からは、もっと小分けにしよう)


 心に決めるエミリオだった。


「こっちはダイン先輩にとっておこうっと」


 特大の一切れを取り分けるシャルに、思わずエミリオは目を丸くした。


「え、そんなに?」

「うん。先輩、ちびさんの分も食べるから」

「あ、そっか使い魔の維持に必要なのか」

「美味しいもの食べると、すごく嬉しそうな顔するしね!」


 確かに事実なのだけれど。

 ルバーブは食べ過ぎるとお腹がゆるくなります。くれぐれもご用心。


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