フェイス
「境界上の意識」
<死後>
もし、もしも僕が死んでしまったら悲しんでくれる人がいるのだろうか?
私という存在は世界の中のほんの一角に存在してる小さな…ほんの小さなものなんだ
もし、もしも僕が存在していいと、生きていいと言われたら僕はどうなるのだろうか?
私にはその答えがどうしても出せない
そんな僕が、私が世界を超えて生きていく世界。
さぁ、僕に(を)教えて(ころして)くれないか?
「現代」
<正義と力と欲望>
僕がふと意識したのは今このときであった。
前世か前の自分の記憶か何かわからないがとにかく僕の中には「前」というものがあった。
「経験」と言い換えてもいいだろう。
おおよそ僕には初めてというものがなかった。
僕は初めてという物に憧れていた、いや渇望していたといっても置き換えをしてもいいだろう。
僕という存在には毎回同じ名前が付けられていた。
「天災」だ。
僕には力があった。ただそれだけだった。ほかの何ももっていなかった。
なんでもできた。それだけの力はあった。
子供を助け、親を助け、若者を助け、老人を助け、平和を保ち、秩序を保ち、法を守り、社会を助け、議会を助け、治安を助け、国を助けてきた。
ある者は僕を崇拝し、ある者は僕を軽蔑し、ある者は僕に感謝し、ある者は僕に憤怒をし、ある者は僕に悲しみ、ある者は僕を、ある者は、ある者は、ある者は…。
そして僕は死んだ。
あらゆる植物、動物、人間を助けた私は死んだ。
死ぬ前にはいろいろな者が看取ってくれた。
私は正義をやり遂げたのだろうか?私のことを正義を思ってくれる人がいるのだろうか?
私には分からない。私には解らない。私には私には私…。
ピラミッド型の社会を生きていた僕にとっては何を行うにしても「正義」という物が必要
だった。「正義」があるというだけで許されることがあるからだ。
私は貪欲に正義をいう物に憧れた。いかにして自分を正当化させ正義へと導くのか?
これに執着したといっても過言ではない。
時は移ろい80歳に差し掛かった時自宅にいた私は遺書をしたためていた。
伴侶の妻は数年前に死亡し独り身の私であった。
しかし執事やメイド、庭師やコックなどは私を診ていてくれた。
こんな老いぼれに付き合ってくれたのだ、遺産と言われる物を皆で分けてもらうために皺だらけの指に万年筆を持ち書き続けた。
翌日の早朝のことであった。
身を上げ枕元にある鈴を鳴らした。
しばらくして老齢の執事が部屋に来た。
「何か御用でしょうか?」
私は執事の顔を見て言った。
「今日私は天寿を全うする」と。
執事はただ一言言った。
「御80年まことに御疲れでございました。後のことは私どもに御任せくださいませ」と。
私を一瞥した後、部屋を出た。
執事は皆に何というのだろうか?気にはするがそれも些細なこと。
私は私であればいいのだから。
…嗚呼、今日も空は青い




