お薬
「『 僕の大好きな食べ物は、お薬です。
お母さんが食べると褒めてくれるから、好きになりました。
お薬は、毎日お母さんがたくさん買って来てくれます。お母さんは、「食べたいだけ食べていいんだよ」と言います。でも僕は、食べ過ぎないように気を付けて、十粒と決めています。
僕は、お母さんが「偉いね」と褒めてくれるのが好きです。ずっと優しくしてくれるから、僕は頑張って毎日毎日、苦いお薬を食べます。
身体が痛くても、お腹が空いていなくても、お薬は欠かさず食べます。
でもたまに飽きたりもします。お母さんが食べるハンバーグを、一口かじりたくて、お母さんにお願いをしたことがありました。
そんな時は、お母さんは「ダメな子」だと言って、僕が薬を飲むと言うまで、ほっぺたをつねり続けます。
だから僕はお母さんの約束を守ります。お薬を食べます。 』」
「どうかな? お母さん上手く書けてる?」
「……えぇ、とても上手よ」
「えへへ」
「うーん、でもね。これは作文にしてはダメ。もっと他のことを書いてちょうだい」
「何で?」
「だって、こんなことバレたら、お母さん捕まっちゃうわ」