夕方のお買い物
家紋 武範様御主催「夕焼け企画」参加作品です!
皆様宜しくお願い致します。
と或る秋の日の夕方。
中学生か高校生か微妙な年頃の少年少女が歩いていた。
少年はエコバッグを持っている。
中学生にしろ高校生にしろ遊びたい盛りであろう。
と思えば訳アリだと窺える。
「普通の家庭」、ならば
中高生が、況してや男が
夕食の買い物等するまい。
時期はコロナ対策が緩んで
マスクは着けたヒトも着けていないヒトも居る辺り。
少年少女はマスクを着けてはいなかったが。
少女が徐にマスクを取り出し。
「でゅわっっ!」
と装着する。
更に両腕を
力瘤でも作るかの様に曲げ。
「ずゅうぅんぅんぅんぅんぅん!」
と伸び上がる。
勿論身長体重が変化する訳ではないが。
少年は少女に平坦な声を掛ける。
「智恵さん。
道端で突然奇行に走ったら恥ずかしいよ?」
いや。
平坦というよりは諦めているというか。
草臥れた表情であった。
少女、智恵は少年に顔を向けないまま言う。
「アンヌ! ボクはうるとらなな(セブンです!)なんだ!」
「へー其れは其れは……
って誰がアンヌやねんっっっ⁈」
少年は如何にもテキトーに返していたが
アンヌ呼びには猛烈に反応した。
男が女っぽい様な事を言われると
即変態臭が漂いますからね。
しかし智恵はマイペースに続ける。
「僅かな星じゃあふるさとマン!」
「意味分からないんデスけどおっ⁈」
少年は打って変わって智恵に絶叫する。
絶叫ツッコみである。
しかし智恵こそ平然と続ける。
「もろこしマンの名を借りて!」
「何者だよっ‼ 借りる様な名前なの⁈ ソレ‼」
最早
少年の絶叫ツッコみの方が目立っていた。
寧ろ智恵こそ冷静に返す。
「寛太。 大声出したら恥ずかしいよ」
「あんぎゃああああああっっ‼
っつか兄を呼び捨てすんなってのおおおおおおっっ⁈」
逆上か。
少年、寛太は尚も叫ぶ。
しかし智恵は本当に平然としている。
「オンナノコはね。
名前で呼ぶのが親しい証なの。
ほらケッコンなんかすれば
苗字なんか変わっちゃうし」
言葉だけ見れば抑揚が有りそうだが
智恵は平坦に喋る。
うるとらなな(セブンです!)ごっこ? では
番組的な音が聴こえそうに演出していたが
素では声も顔も無表情な様だ。
「お、お、お、俺には関係ねえっ!」
寛太は何やら狼狽えつつではあるが拒絶する。
男が苗字が変わるのは珍しいからか。
ケッコンの相手等居ないからか。
「だよねえ」
智恵は同意する。
かと思えば。
「元々は日本じゃケッコンしても苗字は変わらなかったのに。
西洋に染まってけしからん!
って言うんだね」
「いや違いますけどおおおっ⁈」
智恵は何やら斜め上な事を言い
又寛太は絶叫ツッコみをする。
因みに
「西洋に染まってけしからん!」とは
寛太の口真似をして言った。
分かる程度には似ている感じであった。
「所で。
今は偶々マスクを持っていたから
うるとらなな(セブンです!)にヘンシンしたけど
夕焼けが似合ううるとらさんと言えば
帰ってきたうるとらさんジャック!
だよね。
ヘンシンあいてむ要らないから
ジャックにヘンシンしても良かったな」
今度は智恵は
平坦な声の様でいて拳をぐっと握っていて力説している。
「マスクは変身アイテムじゃあないよねっ?
夕焼けが似合うとか常識みたく言われても
困るヒトが大半だと思うけどおっ⁈」
寛太は草臥れていた様で丁寧にツッコんでゆく。
「何だとおニワカめっ」
「俺うるとらファンとか言った覚え無いけどおっ⁈」
智恵は演出掛かった台詞こそ力が籠っている。
寛太はやはり丁寧に返す。
智恵が続けるには。
「仕方ないなあ。
あのね。
太陽の光を溜めて一回三分間戦えるうるとらさんは
夕方は弱っちゃうの。
で。
狡猾な敵は夕方を狙ってジャックと戦っていたんだけど……
何時しか夕方の戦いが多いジャックは
「夕焼けに佇むうるとらさん」!
と言われる様になったんだよ。 分かったねルミ子さん」
「今度はルミ子さんって何⁈」
やはり寛太は
女性名みたく呼ばれると過敏に反応する。
すると無表情だった智恵が突然にこやかになる。
やはりキャラクタの演出か。
「だから『帰ってきたうるとらさん』のヒロインじゃないか
ルミ子さん!
ヒロインは途中で交代したもんね!」
「だからルミ子さん呼び止めてっ⁈
擦れ違うヒトに俺がルミ子とかいう名前だと思われちゃうよっ⁈」
寛太は必死だった。
其して既に女性の通行人等は
明らかに兄妹のやり取りを見てくすくすと笑っていた。
寛太は恥ずかしがって
そそくさと道を行こうとする。
智恵は寛太に向かって手を伸ばし。
「待ってくれ! アンヌ!」
「だから止めろおっっ⁈」
今度こそ。
普通だった町の道が爆笑の渦に包まれた。
と或るスーパーマーケットに着いていたが。
寛太の頬は未だ赤かった。
知らんとばかりに無表情な智恵は
或る商品に目を止める。
「シリアル」、詰まり牛乳等を掛けて食べるアレだが。
「やっとグルテンフリーな品が出回ってきたね」
「何?」
寛太は恥ずかしくて注意散漫だったか。
反応が鈍いが。
構わず智恵は続ける。
「グルテンが含まれていないって事。
ほらムギが入っていない」
「抑もグルテンって何?」
寛太は知らなかった様だが。
「其んな事も知らないで料理していたの?」
智恵は無表情なままだが
声は辛辣だった。
「いや知らなくても料理は出来るって事だよなあっ⁈」
寛太は必死に言い逃れをするが
さり気なく料理が出来る様である。
やはり智恵はマイペースに続けるが。
「「グルテン」はムギ蛋白質だけど……。
体に悪い‼
んだよ。 成るべくムギは食べたくないねえ。
悪い事に「グルテン」って
日本人が大好きな
もっちり食感
の素なんだよね……。
ああ……「グルテンフリー」だと割高だよ……」
「おお……! ムギは安価いもんな!」
智恵は無表情な様だが声が気落ちし
寛太は慰めるかの様に言う。
やはり庶民には値段は大きいのであった。
「でさ」
智恵は真剣な表情をする。
「うん?」
寛太が受け応えると。
「うるとらなな(セブンです!)って
トウモロコシに似ていない?」
「ぶほふっ!」
智恵が言い出した何やらに
寛太は吹き出した。
「なっ何を言って……!」
寛太はやっと返すが。
「「アイスラッガー」を放つトコロなんて
実を包む葉っぱをべりっと剝がすみたい」
「ぶほふほっっ……!」
智恵の更なる発言にもっと吹いて。
「止めたげてっ⁈
其うとしか見えなくなっちゃうから止めたげてえっ⁈」
寛太は笑いを堪えて?
何とかうるとらなな(セブンです!)を庇う?
しかし智恵は無情であった。
「其れは出来ない相談だ。 アンヌ!」
「だからアンヌ呼び止めろおっ⁇!!」
寛太は悲しい絶叫を上げる。
智恵は素の表情に戻って。
「だってトウモロコシってイネ科なんだよ。
おコメの親戚なの」
「あ、其う……!
ソレが何?」
寛太は智恵の唐突な物言いに戸惑うが。
「なな(セブンです!)と親戚の初代や
そっくりさんのゾフィーやジャックは
米粒みたいなカオだよね。 銀シャリなだけに」
「ぶほへはふっっ……! !」
智恵の更に続く言葉に
寛太は耐えられなくなった。
智恵は左手を後ろ手に腰に当て
右掌を前に出してからくりっと横向きにポーズ? して。
「おコメ三キョウダイ」
「ぶほふへふほはほっっ! !」
寛太はもう奇妙な吹き出し方をしてから。
「「だんご三キョウダイ」なっ!
んで智恵さん幾つよっ⁈」
ツッコみの一種と言おうか。 な訂正をする。
因みに「だんご三キョウダイ」は
1,999年世に出た歌である。
其う言う寛太はというと
携帯端末で高速ネット検索して調べている様だ。
智恵は全く揺らぐ事なく言い返す。
「だんごの材料はうるち米! フツーのおコメじゃあ!」
「ソコ迄深読みしてくれるヒトなんて居ないからあっ!」
寛太は悲痛に訴えた。
「ムギもイネ科なんだけどね。
体に悪いムギはまるでべりある!」
「イネ科の作物を其処迄うるとらさんに結び付けるヤツ
居ねえええっっ⁈」
ノリノリなのであろうか。
止まらない智恵の講釈? に寛太のツッコみが炸裂する。
因みに「べりある」というのは
闇落ちしたうるとらさんベリアルである。
うるとらの父ケンさんの同期であった。
智恵は不敵に言い返す。
「上手い事言った積もりか」
「何があ⁈」
寛太は本気で分からない様だが。
智恵はさらっと返す。
「イネ科の作物を其処迄うるとらさんに結び付けるヤツ
「イネえええっっ⁈」って」
「気付かなかったよゴメンねえっ⁈」
妹にやられっ放しの兄寛太であった。
しかし智恵は安心させるかの様に言う。
「おコメのもっちり感は「デンプン」で、
トウモロコシは抑ももっちり感が無いから安心して」
「あー左様で御座いマスか……!」
もう寛太はツッコむ気力も無い様であった。
ふと。
智恵は生魚売り場に目を留める。
パック詰めとはいえ幼児がベタベタとサカナを弄り。
母親であろう女性がにこにこと眺めていた。
智恵はすらっと手を挙げる!
意見を主張する「挙手」というよりは
手に何かを受け止めるかの様な。
親指を直角に広げた「挙手」であった。
其して。
「きぃぃぃぃぃん……! しょわんぁんぁんぁんあんあん!」
何やら効果音? を口真似して
「ぐんぐんカット」? の様な姿勢で幼児の所へと駆けて行く。
「ぐんぐんカット」とは
うるとらさんの変身巨大化場面である。
特に今回智恵が演ったのは
「帰ってきたうるとらさん」風「ぐんぐんカット」であった。
幼児の目の前に迫った智恵は。
人差し指を立て説教をかますかの様に振り振りし。
「へあっっ! しぇあっっ! だああぁあっっっ‼」
叫び出す。
言葉を発するでもなく只管に。
器用な事に?
口はきゅっと結び腹話術? の様に声を出していた。
激しい声を浴びせていたものの。
幼児は唯々ぽかんと智恵を見上げ。
しかし母親? が凄い形相で睨んでいた。
「何やっとんねんっっ!」
寛太が智恵の後ろ頭をどつく。
いや。
実際は恐々と少し押しただけであるが
智恵が派手にリアクションしたのだ。
智恵はサムズアップ、詰まり親指を立て。
「ないすツッコみだ兄さん!
分かっていないヤツは
暴行すればどつき漫才だと思っていてイカン!」
「おっおう……!」
寛太は突然の兄さん呼びにか戸惑いつつ応える。
幼児は未だぽかんとしているが。
智恵は今度は別な? 姿勢をする。
両肘を水平に突き出し左肘を前に出す姿勢だ。
其して格闘ゲームのキャラクタか何かの様に体を揺すり。
「ぉーい! ぅおぉーい!」
何やら気の抜ける様な声を上げ出す。
と。
幼児の反応は劇的だった。
「うるとらさんぶれーざーだ!」
大はしゃぎな様だ。
更に智恵は
右手に持った何かを左手で引っ張るかの様な仕種をする。
「ちるそないとそーどにじゅうでんだ!」
其れを幼児が解説? する。
「え? 何? 剣?」
寛太こそが戸惑うが。
「知らないの? さん兄さんおっくれってるぅ~」
「おっくれってる~!」
智恵は幼児と一緒に寛太を揶揄う。
所で睨んでいた母親? はだが。
怒鳴り付けるタイミングを逸した様だ。
「さん兄さんって何だよっ? 京都のヒトかっ?」
寛太は恥ずかしそうにしながらも律儀にツッコみ。
「初代」
智恵はさらりと返す。
更に。
「すぺしゅーむ光線!」
智恵が例のポーズをすると。
つい寛太も釣られてしまう?
「例のポーズ」というのは
右腕を縦、左腕を横にして十字に組む姿勢だ。
が。
「こら。 初代は左手をくりっと反らさなきゃ。
拘りのぽーずなんだよ?」
寛太は智恵にダメ出しをされた。
「ジャックは中のヒトが初代のあくしょんを知らないで演ったから
如何にも此う言われて演ってみまシタ~というカンじで
良いんだけど」
「細かいなっ⁈」
其ういう事らしい。
「だめなにいさんねー?」
「ねー」
幼児と智恵は更に寛太をイジる。
「いや其んな事よりっ!」
寛太は頬を赤らめながらも軌道修正を試みる。
抑もは幼児がいけない事をしているのが発端であった。
智恵は改めて?
両拳を腰に当てて幼児と向き合う。
「其う其う。 聞きなさい。 地キュウ人!」
「ちきゅーじん?」
幼児が小首を傾げる様な事を言うが。
「此処のお店も保育園だか幼稚園だかもお家も
全部合わせて「地キュウ」って言うんだよ?」
「おー」
智恵の説明に幼児は了解した様だ。
其して。
「オマエは駄目だあっっ!」
「ええっ?」
突然智恵は幼児を罵り
幼児は狼狽える。
が。
「オレもヤバいみたい……!」
と智恵は又突然頭を抱える。
「今度は何の真似だよ?」
寛太は呆れ。
「っ……!」
やはり母親? は睨んでいるものの
怒鳴るタイミングが掴めない。
しかし幼児は。
「どうしたの? だいじょうぶ?」
智恵のごっこ遊び? に乗せられている様だ。
智恵はやっぱり何かの真似をしているかの様で。
「だが二人なら未だ戦える!
……協力してくれるか?」
「うん! たたかう!」
もう幼児は真剣だった。
「良ぉし! じゃあヘンシンだ! 覚えてくれよお?」
「うん!」
ごっこ遊び? は良いが。
智恵は何やら紙細工を取り出す。
手作りで紙製だが
やはり智恵は器用な様であった。
「コレはうるとらぜっとらいざーだ!
めだるを三つ! せっとします!」
何やら智恵の語調がおかしいが。
くすくすくす
笑い声がする。
寛太がちらりと見回すと
ヤジ馬が集まっている?
「地キュウの言葉はうるとらムズカしいぜ!」
どっ! !
智恵がさらっと言った事にヤジ馬が沸く。
知っているヒトにはウケるネタらしい。
智恵は本格的な役者かとばかりにしれっと続ける。
急に「気を付け」の姿勢になり。
「宇チューウ拳法! 秘伝の神技っ!
ぜろ師匠! なな(セブンです!)師匠! レオ師匠っ‼」
と順番にめだる(紙細工)をせっとする。
其してめだる(紙細工)をスキャン? するのだが
演技力の賜物か。
紙細工なのにまるで機械かの様に
ガチャっガチャっと動かして見せる。
更に声音を変えて口を開かず。
機械音声か、という風にガイジンおぢさんみたく言う。
「ズィーロゥ! スィーヴン! リーオゥ!」
おぉおぉお~……! !
ヤジ馬が又も沸く。
知っているヒトには響く様だ。
今度は自身の言葉と智恵は口を開き。
「押忍っ!」
と両拳を腰に引く。
其して又々別の人物という風に
口を開かず違う声音で言う。
「ご唱和下さい! 我の名をっ‼
うるとらさぁあん! ぜえぇえぇっと!」
其れから
左手に持ったうるとらぜっとらいざー(紙細工)を天に衝き上げ
自身の声として叫ぶのだが。
「「「「「うるとらさぁん! ぜえぇえぇえぇっっっ!!!!」」」」」
「おわっ⁈」
予想外に多くのヤジ馬が「ご唱和」し
寛太が驚きの声を漏らす。
寛太は驚いたが
智恵は平然と続ける。
「ちゃーらーららーちゃららー
ちゃーらーらーらーらららー
ちゃーらーらーらーあ♪」
口真似だがファンファーレ? を口ずさみ?
「はぁあっ!
でゅわっっ!
えいやあああっっっ!!!!」
三人のうるとらさんの最も特徴的であろう掛け声を上げ。
「ぅうるとらさんずぇーっっ。 あるふぁえっじっ。
ずちゃちゃずちゃちゃずちゃちゃんっ♪
……しぇあっ……っ!」
ヘンシン巨大化ぽーず。
「ぐんぐんカット」を演ってのける。
智恵が何故か着地でもしたみたいな姿勢になると。
おぉおぉおぉおお~っ……! !
ヤジ馬がしみじみと唸っていた。
ヒーローショーでも観る程の出来らしい。
智恵はうるとらぜっとらいざーを幼児に渡してから
両拳を腰に当てて語り掛ける。
「うるとらさんは正義のミカタだ!
正義のミカタは良いコトをしなければならない! 分かるな?」
「うん!」
幼児は分かったらしい。
「其して正義のミカタは悪い事はしちゃいけない!
分かるな?」
「うんワルいことはいけないんだよ!」
やっぱり此処迄は分かるらしい。
「お店の商品をベタベタ触るのは悪い事なんだ!」
「えっ?」
やはり分かっていなかったらしい。
「あんまりベタベタ触ると食べられなくなってしまうよ?」
「そっそうなんだ……!」
幼児も分かってくれたらしい。
「「お買い物」というのは
おカネと商品を取り換えっこするという事。
其れは分かるかな?」
「うん」
「詰まりはおカネを払っていない内は
他人のモノなんだよ? 分かる?」
「うん……」
「キミだって他人におもちゃを壊されでもしたら怒るよね?」
「もうないちゃうよっ!」
幼児は自身がされる事には怒る様だ。
「じゃあお店は?
キミに商品を食べられなくされたらどう思う?」
「うっ……! ごめんなさい……」
とうとう幼児は謝った。
が。 此処で。
「一寸アンタ! 余計なお世話じゃないっ?」
母親? が智恵に文句を付ける。
しかし智恵は平然と一言。
「躾も出来ないBBAは黙っていて下さい」
「なっっ……⁈」
母親? は一時絶句するものの。
「何だと此のガキっっ……!」
唯は黙らないのがモンスターペアレントであった。
しかも智恵に手を上げる。
まあ女性と言えばビンタ、
であったが。
智恵はしゅるっと腕を回してビンタを捌く。
「んなっっ……⁇!!」
此れには母親? も二の句が継げない。
「……ソイツ「空手」みたいな事やってマスよお……?」
寛太が母親? にこそっと告げる。
「我流だがな! はっはっはっ!」
智恵は余裕そうに胸を張る。
因みに智恵は
其んなに胸の膨らみは目立たない。
其して。
おぉお~……! !
ヤジ馬の称賛の唸り声。
更に。
明らかに母親? を非難する声がちらほら聞こえる。
「うっ……! 行くよっ?」
此ういう女性は
立場が悪くなるとそそくさと立ち去るものだが。
幼児の腕を無理矢理引っ張る。
幼児は無理矢理引っ張られながらも智恵に向かって言う。
「ぶれーざーぶれすがほしい!」
其れは此の頃最新の
うるとらさんのヘンシンあいてむであった。
智恵は大様に応える。
「又会った時に!
キミが正義のココロを忘れていなければ!
用意しておこうっ!」
「うん! ばいば~い!」
幼児は引っ張られながらも元気に手を振る。
「見ちゃあいけませんっ!」
母親? は其んなだったが。
其して
智恵の演技? は未だ終わらない。
立ち去る母子? に向かって。
「ぜすっ! てぃうむっ‼ 光線っ!!!!」
どっっ!! !
ヤジ馬が集まっていた辺りには大爆笑の渦が巻き起こった。
しばらくして
当然だが場は静まり。
普通の? 買い物の風景に戻った。
「あー……。 智恵さんや?」
「何デスかヨーコ先輩!」
「だから止めてっっ⁈」
寛太が智恵に声を掛けると
又何やら女性名で呼ばれ、寛太は拒絶する。
兎も角。
「悪いのは彼のオバはんだけどさ?
もっと普通に注意出来んの?」
というのが寛太の要望であった。
しかし智恵は冷然と。
「普通に注意して聞く輩かねアレが」
「うむむむむむむ……!」
寛太にも彼の母? が素直に聞くとは思えない様だ。
「コドモに聞かせるにも
興味を引くのが大事だったりするし」
「興味を引いていた……のか?」
寛太は訝し気であった。
何れにしろ買い物を済ませねばと
商品を眺め出すと。
「寛太くん。 智恵ちゃん」
と女性の声が。
二人の母であった。
母は。
単体で見るとすらりとした美人、
なのだが。
周囲と比べると異様に背が高かった。
だが幼女の様な無邪気な笑みで。
「一緒にお買い物したくて来ちゃった!」
等と言う。
服装はレディーススーツ。
如何にも仕事帰りであった。
「お母さん」
平坦な声が通常らしい智恵が
甘い声で母に抱き付く。
母はゆったりと智恵を受け止め。
もう片腕を広げて寛太に微笑む。
「俺は行かないからな?」
寛太はジト目であったが。
三人での買い物が始まると。
「あら」
ふと。
母が棚から転げ落ちそうだったジャガイモをさらりと戻す。
ジャガイモを受け止めた、とも感じさせない
其れは流れる様な動作であった。
「お母さんないす聴勁」
「ふふふ。 ありがと」
智恵が自然に称賛して母が応えたが。
「有り得ねえっ!
ンな母娘の会話オカしいからなっ⁈」
寛太は盛大にツッコむ。
しかし智恵は平然と。
「やーい悔しかったら解説でもしてみろ」
「いや悔しくはないけどおっ⁈
誰に聞かせる解説だよっ?」
等と寛太は返すが。
「聴勁」が分からない通りすがりのヒトであろうか。
寛太は解説しなかったが
智恵が理路整然と語り出す。
「「勁」とは。
「中国武術」に於いて
「力の出し方」という様な言葉だが
特に「聴勁」は「聴」き方、
相手の行動の先読みの仕方、である。
「聴く」と言うだけに
目隠しなんかして防御して「視」ている訳じゃあありまセンよ
なんてぱふぉーまんす(笑)なんかをやったりする」
「だから誰に解説してんのっ⁈」
寛太は其処にツッコんだ。
「寛太も「武」に付いてとーく出来る様になろうよ」
智恵は其んな事を巫山戲て? 言っているが。
「イエ無理デス。 遠慮致シマス」
寛太は能面の様な顔で言い……
「ってだから兄を呼び捨てすんなっ!」
其処は忘れずツッコんだ。
「……ウチの女子コエえ……!」
寛太はボヤくが。
母が加わった買い物はほのぼのとしていたのであった。
さあ。
今日の晩御飯は何だろな。
時刻ギリギリでっす!
急いで投稿しマスね!(とか言っている間にやれ!)
ご覧頂き有難う御座いました!