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第八話 廃墟別荘7



ピッピーノの容赦ない一撃で、階段下の壁に大穴が開きます。

これで階段裏の状況がわかるはずです。




埃がおさまりピッピーノがいいます。


「トキン様、床に鉄扉が見えます!」


『ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴォーゴォォォ』


今度は、はっきり聞こえます。

皆でかけ寄ります。

階段下は全面、鉄板で補強された隠し部屋になっています。


床の真ん中には、取っ手付きの丸い鉄扉が、フタをしています。


「トキン様、開けて確認します」


魔物が出てくる可能性があります。

少し離れて見守ります。


「隠し部屋の地下に、魔物を封印してたってことか」


ピッピーノが、取っ手を回してゆっくりフタを開けます。

覗き込んで言います。


「ダンジョンだ!トキン様、これはダンジョンです」


マルティーナさんが一番にかけ寄ります。

覗き込んで言います。


「トキン様、15メドルほど階段が続き、魔物がひしめきあっているようです」


僕とエリーゼも覗き込んで確認します。


階段は人工物のようです。

確かに15メドルほど続いています。

その先に人型の鶏が、ぎゅうぎゅう詰めで身動きがとれずにいます。


「えーと、唸り声の正体は魔物で間違いないけど、魔物だけじゃなくダンジョンまであったってこと」


「トキン様、プライベートダンジョンです。突入しましょう」


マルティーナさんの目が、輝きで眩しいです。


「マルティーナさんを、危険な目にあわすわけには」


「トキン様、あれは単なる雑魚です。一瞬で消し去ります。少々お待ちを」


ピッピーノが躊躇なく階段を降ります。


「『音斬』ミィーーーーーーーーイ」


マルティーナさんも突入します。


「あっ、ティナ待って」


慌てて呼び止めますが、階段を降りてしまいます。


「『音斬』ソォーーーーーーーーオ」


ピッピーノの声が階段裏の隠し部屋に響きます。

廃墟調査隊の脳筋チームは、既に制御不能です。


「エリーゼ、ここは諦めてピッピーノ達に続こう」


「わかりました、トキン様」



階段を降りた先には、洞窟が広がっています。

あれだけいた魔物が見当たりません。

高さ4メドル、横幅は6メドルくらいの岩のトンネルです。

少し下り坂になっていて、ひんやり涼しいです。


ピッピーノの姿はみえません。


「『音斬』ソォーーーーーーーーオ」


声だけ聴こえます。


マルティーナさんが、かけ寄ってきます。

両手に卵を三つ抱えています。


「トキン様、卵も羽毛も取り放題です」


これまで、見たこともない満面の笑みで、戦利品をみせてきます。

頬も桜色に染まってます。


確かに、地面には卵と羽毛が散乱しています。


「ダンジョンでは、一定時間後ドロップアイテムは消失すると聞いてます。トキン様、お急ぎを。大収穫祭です」


そこに僕が知るマルティーナさんはもう居ません。


「わかった。エリーゼ、卵と羽毛をかき集めよう」


三人で、卵と羽毛を回収します。


回収しながら、マルティーナさんが言います。


「トキン様、楽しいですね。ダンジョン」


満面の笑みに、否定的な返事をするわけにはいきません。


「そうだね、僕、初めてダンジョン入ったよ」


「私もです」


そっちもかい!という言葉は飲み込みます。


「お母さまに許してもらえなかったもので。でも今、私とても幸せです」


ああ、聖女様が闇堕ちしそうです。

僕が調査に誘ったばかりに。

ごめんなさい、ごめんなさい。



「トキン様、これが落ちてました」


エリーゼが、少しだけ長めの羽根をみせます。


鑑定して見ます。



鑑定結果


「鳥の羽根」

良品

【雌鶏の羽根ペン】

体力+3

重量-100%

300,000ゴルド



「【古代の逸品】も獲得できたか。白い羽根ペンだね。エリーゼにプレゼントするよ」


「ありがとうございます、トキン様」


エリーゼが嬉しそうです。

僕もノルマ達成の、にっこりをおくります。


卵も羽毛も、回収を終えます。


「マルティーナさん、ダンジョンの奥まで行くのは無しだよ」


釘をさしておきます。


「わかりました。残念です」


いや、そんな。僕が凄い意地わるみたいな雰囲気だされても。その表情も可愛いけど、などと思っているとピッピーノが帰ってきます。


「トキン様、二階層は雄鶏のようです。ドロップは鶏肉と羽毛です。帰りに一階層の卵と羽毛は回収済みです」


うちの脳筋は、もう二階層に降りたようです。

確かに左手に鶏肉を持ってます。


「うん、ピッピーノご苦労。一度ダンジョンを出よう」


〜〜〜


厨房の大型冷蔵庫に、鶏肉と卵をしまいます。


食堂に移ってティータイムを楽しみながら、次なる作戦会議です。


「百年放置してたのなら、トツカーナ伯爵もダンジョンのことは、きっと知らないよね」


「はい、トキン様。領主としてダンジョンを放置することは無いかと思います。魔物が溢れるおそれがありますから。認識してないと思います」


エリーゼが答えます。


「魔物は確かに溢れてましたが、あの階段を上るのは不可能のようです。きっと結界が張られているはずです」


ピッピーノが言います。


「腕の良い結界術師が、人工の階段内に結界を張っている可能性が高いです」


マルティーナが補足します。


「なるほど、確かに百年持ってるからね。それじゃ次は、ダンジョンのことを伯爵や子爵に報告するかどうかだね。みんなどう思う」


「絶対に秘密のプライベートダンジョンにするべきです」


マルティーナさんが言います。


「トキン様。オレも聖女マルティーナ様の意見に賛成です」


ピッピーノが言います。


脳筋二人は今後も潜る気満々です。


「マルティーナさんは、ダンジョンで戦えるのかな」


マルティーナさんが、クマのポシェットから長めの棒を取り出します。


「護身のため、三歳から棒術をたしなんでおります。低層の魔物に遅れは取りません」


おお、とにかく凄い自信です。

「棒の扱いは任せろ」といってます。

将来性があります。


ここは常識人枠のエリーゼに聞いてみます。


「エリーゼ、ダンジョンのこと報告しなくて大丈夫かな」


「はい、トキン様。このダンジョンの存在は隠匿すべきです。産出物が卵と鶏肉。これは、ここが食料ダンジョンである可能性を示しています」


「食料ダンジョンか」


確かに一部のダンジョンは、産出物に偏りがあります。


「また周囲はドングリの森です。木の実、野草、そして井戸と揃っており自給できます。万が一の際には籠城も可能です」


エリーゼまで秘密にしろと言います。


「確かにそうだけど、後からバレるとまずくないかな」


「今後、卵と鶏肉の安定供給が可能になりましたら、伯爵家と子爵家にダンジョン産とは言わず、定期的にお裾分けしておくことでリスク回避します」


「あー、バレたとしても、恩恵は同じく享受してましたよね作戦か」


僕は決断します。


「わかった。このダンジョンの存在は秘密にしよう。もちろんソフィ達には教えるけどね。対外的には秘密で行こう」


皆、頷きます。


「僕とエリーゼは、もう少しここに残って廃墟修理するから、ピッピーノはマルティーナさんを送ってくれるかな」


「トキン様、そんなことおっしゃらないで下さい。ワイン祭より、大収穫祭です」


いやマルティーナさんや、大収穫祭は開催してないけど・・・

ここまで本人が殺る気なら、もうしょうがありません。


「わかった。では騎士ピッピーノ、何があってもマルティーナさんを守ってくれ。夕食前に戻ることを条件に、二人にダンジョンアタックを許可する」


ガタンッと椅子を鳴らし、二人は立ち上がります。

力強く頷き駆け出します。

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