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山ン本怪談百物語

盗撮

作者: 山ン本

こちらは百物語七十一話になります。


山ン本怪談百物語↓


https://ncode.syosetu.com/s8993f/


感想やご意見もお待ちしております!

 何とも言いにくい話なのですが、僕は昔から「盗撮」が大好きなんです。


 盗撮と言っても、風呂場や女子高生のスカートの中を覗いたことはありません。


 僕は人の私生活を見るのが大好きなんです。


 特に家族やカップルが普通に生活しているところをこっそり見るのがたまらないのです。


 今現在、僕はとある小さなアパートに住んでいます。


 夜中にこっそり壁へ小さな穴を開けると、その穴を塞ぐように超小型カメラを慎重に埋め込む。後はパソコンから部屋の様子を確認するだけだ。壁の色や部屋の位置は同じアパートなのでだいたい予想ができる。カモフラージュも完璧でした。


 「おぉ、今帰ってきたのか…」


 夕方の5時を過ぎると、隣に住んでいる家族が部屋に帰ってくる。


 若い夫婦と2人の子ども。夫婦は共働きらしく、昼間は部屋を留守にしていることが多い。子どもたちは小学生らしく、昼間は学校に通っている。


 ごく普通のどこにでもいる家族。


 しかし、この家族には少し変わったところがあった。






 「どうして会話しないんだ、この家族…」






 不思議なことに、この家族には会話が一切ないのだ。


 それでも生活はしっかりしている。夫婦が子どもを虐待している様子はないし、会話がない以外は特に変わったところはない。


 僕が盗撮している場所は、家族がゆっくり過ごす居間である。家族の関係が冷めきっているだけかもしれないが、少し不気味だ。






 家族の盗撮を始めてから数日後。


 僕はあることに気がついた。


 「時間…同じなんだよなぁ…」


 盗撮を始めてから数日間、家族の行動パターンがすべて同じだった。


 夕食を用意する母親、新聞を見ながら煙草を吸っている父親。3冊の絵本を両手で抱えながら居間に入ってくる女の子と算数の教科書を読みながらソファへ向かう男の子。


 このパターンが毎回同じ時間にやってくるのだ。


 女の子は毎回絵本を2冊読むと何処かへ行ってしまう。男の子は算数の教科書を毎回戸棚に入れてから母親の手伝いをする。


 ここまでならよくあることかもしれない。しかし…


 お父さんは毎回同じスポーツ新聞を読んでおり、1面には毎回『○○選手、まさかのホームラン!?』という言葉が書かれている。


 母親が作る夕食は豚の生姜焼きとみそ汁。この献立が毎日続いている。


 もちろんこれだけではない。


 不審に思った僕は、引き続き盗撮を続けることにした。






 盗撮を始めてから数週間後。


 僕は恐怖に震えていた。


 家族は毎日同じ生活を続けている。


 同じ時間に同じことをやり、同じ動きをする。


 いくらなんでもおかしすぎる…


 「あれ…この家族ってこんな顔だったっけ…?」


 僕は気づいてしまった。


 毎日同じ生活を続けている家族。1日の内容は同じなのに、家族の顔が…服が少しずつ変化していることに気づいてしまった。


 家族の顔は日を追うごとに焼けただれ、服は真っ黒に焦げていく。


 「おかしい…なんだよこの家族…?こんな…こんなこと…!」











 盗撮を始めてから数ヶ月後。











 家族の生活はまだ続いていた。全身が焼けただれ、衣服がすべて焼け落ちても…


 「あぁ…あぁ…」


 こんな状況で盗撮を続けていると、初めて家族の動きに変化があった。


 夕食を食べ終えた後、必ず全員でカメラの方を向く。


 そしてカメラに向かってニヤッと笑う。






 それを見た途端、僕はゆっくりと気を失った…











 次に目覚めた時、僕は病院のベットの上にいた。


 いつまでも連絡に出ない家族が心配してアパートに来てくれたらしい。


 部屋に入ると、パソコンの前で倒れている僕を発見した。そして救急車で運ばれたのが数日前…


 僕は数日間ベッドの上で眠ったままの状態だったらしい。


 この事件がきっかけで、僕の盗撮趣味が両親とアパートの大家さんにバレてしまった。こっぴどく叱られた後、僕は盗撮していた家族へ両親と一緒に謝罪しようとしたのだが…






 「えぇ?隣の部屋には誰も住んでいないけど…」






 あの家族が住んでいた部屋は、もう何年も前から空き部屋になっていた。


 部屋を借りる人もたくさんいたらしいけど、全員数ヶ月以内に出て行ってしまうらしい。


 昔あの部屋には4人家族が住んでおり、煙草の不始末による火事で家族全員が亡くなっていたということを大家さんから聞いた。


 僕が見たあの家族は、もうこの世のものではなかったのかもしれない。


 これがきっかけで、僕は盗撮をやめた。


 二度とあんなものを見ないために…

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