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如月和泉の探偵備忘録  作者: 御影イズミ
第1章 王女と探偵、その日常
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第?話 昔の話。

 夜の睦月邸。


 既にほとんどが寝静まった家のとある部屋では、通話が行われている。

 男性が3人と、女性が1人。この中の1人は、言うまでもなくこの家の家主である竜馬だ。



「悪いな、こんな時間に」

「俺はいいけどよ。ジンと鈴はいいのかよ」

「ああ、うん。僕は寝るところだったんだけど、あんな連絡貰っちゃあねえ。鈴は?」

「私は今も縫い物中よ。今回は手縫いだから、通話しながらでごめんなさいね。あ、神夜、昨日言ってたアレは準備終わってるから、取りに来なさいね」

「あ、ごめんね、ありがとう。明日……はちょっと無理だから、明後日取りに行くよ」



 神夜じんやりん勇助ゆうすけ。その名前が、竜馬の会話相手のようだ。

 10歳からの付き合いで、何をするにも4人で集まっていた。というのも、彼らにもとある事情があるのだ。



「それで、竜馬。例の連絡についてなんだけど……僕の見間違いじゃなければ、オルの血縁者が来た、ってことになるんだよね?」

「ああ。彼女ははっきりと『アルファード』の名を口にした。後にも先にも、その名前を名乗ってた奴は俺らのよく知るアイツしかいねぇ」

「……オルドレイ・マルス・アルファード。懐かしい名前ねぇ」

「そりゃあなあ。何年前だ? 俺らが()()()()()()は」



 勇助の言う、『落ちてきた』とはまさにその通りの表現。


 彼ら4人は40年前に、ガルムレイという世界から落とされた異世界人。右も左も分からない状態で4人共過ごしてきたのだ。

 故に今回、知り合いの血縁者──アルムが睦月邸にやってきたのは、何かしら自分たちが影響しているのではないかと竜馬は考えた。

 そこで神夜達にも情報を共有し、アルムを無事に帰す手段を探すことを閃いた。


 ただし、竜馬達は自身の子供達に自分たちが異世界人であるということは隠している。

 そのためこうやって夜中の通話やメールでのやり取りを利用しての情報収集となるのだ。



「私はいいんだけどね、別にバレたって。遼ちゃんなら快く受け入れてくれそう」

「うーん、猫助はマジビビりしてしばらく口利いてくれなさそう。アイツ意外とビビりなんだよなぁ」

「優夜は……驚きこそはするだろうけど、あっさりと受け入れてくれそうだなぁ。いや、まあ、今の僕が言えることじゃないんだけど」

「和馬もちょいビビりなとこあるから、慎重になんねぇとなぁ。というかお前らの子供達預かってる分、1番慎重になんなきゃならないの、俺じゃん」

「優夜を預かるだけならなんともなかっただろうにねぇ」

「朔ニキの悪ノリに引っかかった結果がコレだよ……まあ、優夜君と猫助君の飯が美味いんで助かってるけど」



 ふう、とため息ひとつ。

 現在睦月邸では優夜、猫助、遼、響のローテーションで料理担当が変わるが、優夜達を引き取る前はただの地獄だったと竜馬は語る。

 ……嫁の雪乃ゆきのがいない日は特に、最悪だったと。



「そういえば雪乃ちゃんは大丈夫? 何かあったら、私がそっちに行くからね」

「ああ、悪いな鈴。慢性的なもんだから、手術さえ無事に終われば大丈夫だそうだ」

「そう……。あんまり無理しないように言ってちょうだいね? 昔からあの子はあなたの為に無茶してることが多いから」

「あぁ。鈴からそう言われたと知ったら、多分落ち着くだろ。お前のこと姉のように見てるしな、雪ちゃん」

「ええ、そうね。有難いことにね」



 クスクスと小さな笑いが鈴から聞こえる。その後、パチン、とホチキスで何かを止める音が聞こえた。どうやら神夜も何かの作業中だったらしい。



「と、ジンも仕事中だったか。そろそろ通話終わるか?」

「あ、僕のは俊一に頼まれた結衣の作品集の仮止め作りだから、通話しながらでも大丈夫だよ。それより勇助が明日早いんじゃない?」

「俺か? 俺ァ明日は休みだぞ。お前らからの呼び出しさえなけりゃ1日寝てるよ。鈴こそ大丈夫か?」

「私は大丈夫よ、明日は蓮がいないし。ああ、明日は朔さんと蓮が和馬ちゃんに依頼するそうだから、アルムって子と引き合せる時は注意してね」

「うお、マジか。明日俺いねぇぞ? 雪ちゃんの様子見に行ったあとに仕事行くし」

「あー……じゃあ私からきつく、きつーく、言っておくわね」

「頼んだ。あ、そうそう、昨日なんだけどさ……」



 こうして、元異世界人である親達の夜が深けていく……。

 いつか、息子たちに自分たちの正体について話す日が来るのだろうと構えながら……。

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