第七話
僕が案内された家に入ると、そこには小太りの年配の男性がいた。おそらく彼がこの村の村長だろう。一人書類の山が築かれたデスクに座って、僕が来るのを待っているようだった。
彼は、
「二人で話がしたい。・・・リーン、扉を閉めてくれ。」
と言って、リーンに扉を閉めさせた。英語だ。
その後、彼は僕の方を見て、
「君がリーンが言ったいたよそ者か。」
と言った。
おそらく彼がこの村の村長だろう。この家は村の小さな役場か、村の行政の事務所といったところか。ウーム・・・。リーンが英語を話せるのは彼に教わったからだろうか。
「まず君の名前と身分を伺おうか。」
と言われた。
「イギリス軍、第五歩兵師団、第三大隊所属。ウィリアム・トミーです。」
「なるほど・・・私はオリント村村長のゴーボンだ。リーンから話は聞いているよ。自分が元居た場所に帰りたいんだってね。」
「はあ、元居た場所というより、僕が所属する部隊に、ですけど。」
「いや、変わらんよ。君のとっては・・・・」
村長はここまで言うと、
「・・・ヘンなことを聞くかもしれないがね。君は神サマには会ったことがあるかね。」
「へっ神様?いいえ、会ったことなんてあるわけないじゃないですか。」
「そうか・・・うん、わかった。君は第三種の人間だ。訳の分からないことが多いかもしれないが、我々は君を歓迎しよう。」
ん??
どういうことだ?
神様といい、第三種といい、この人は何を言っているんだ?
何か、おかしい。色々、おかしい。
「君のような見た目のよそ者はめずらしい。大半は黒髪、黄色だというのに。神様も時々気まぐれを起こすからなぁ。」
何を、言い始めるんだ。
「何を・・・言っているんです?」
「ここは本来君たちが来る世界ではない。君たちの言う地球でもない。ここは・・・そう、君たちが異世界と呼ぶ場所だ。」
・・・村長はおもむろに葉巻を手に取り、火をつけた。手慣れた手つきだった。
僕が何も言えずにまごまごしていると、村長は葉巻をくゆらせながら、
「腰かけたまへ。ゆっくり話そう」
と言って、僕に椅子を勧めた。