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第五話





 僕らは寝ずに朝を待った。また獣が襲ってくる恐れがあるからだ。




 


 しかし、お互い特に話すこともなく、気まずかった。



 リーンは猟師だと思っていたんだが・・・手荷物が少ないことに気が付いた。リーンの荷物と言えば、大きめのショルダーバック。それだけだ。あれでは獣を狩ったところで、持ち帰る量はたかが知れているだろう。



 あるいは、使える部位が少なくてそれくらいの入れ物で十分なのかもしれない。





 

 彼女の腕で獲物を捕れないということもないだろうし。









 あれ?とすると、僕を襲ってきた獣はすでに解体して、あのカバンに入っているのだろうか?でも、生臭さはない・・・。なにか、臭さを消す薬草を使っているのかもしれないが。






 やっぱり、何かがおかしい・・・。

 























――――――――――――――――――――――――――――――――



 夜が明けた。




 僕は塹壕で寝ずに番をすることなんてザラにあったから、こういうことには慣れていたんだが・・・リーンもケロリとしているのに驚いた。






 相変わらずじめじめした暗い森だが、朝になるといくらか気分もよくなった気がした。





 


 支度を終えた僕らは、リーンの村へと向かうことにした。






 「私についてきて」




 リーンはそういうが早いが森の中を迷うそぶりを見せず進んでいった。




 かなり速いペース。すいすいっと軽い足取りで進んでいく。油断していると軍人の僕ですらついていけないくらいだ。



 「リーンさん。よく迷わずに進み続けられますね・・・」




 「この辺りは私の庭みたいなものだから。」



 そういうものなんだろう。















―――――――――――――――――――――――――――――

 




 森は意外とあっさり抜けることができた。広い平原に出た。



 太陽がまだ真上のあたりということは、三時間そこらか。


 僕は思わず伸びをした。



 「ここからリーンさんの村まではどれほどかかりますか。」



 僕は聞いた。


 

 「もうすぐ着く。私の村は、あの森と同じ名前だから。」

  


 







 その言葉通り、ほどなくして村が見えてきた。

 


 かなり小さな規模の村らしい。





 やはりここは田舎だったのだろう。




 





 「少し待ってて。村のみんなにあなたのことを伝えてくるから。」

 


 

 


 そういって、リーンは僕を置いて村の方に行ってしまった。




 最初はどうなることかと思ったけど、これで何とか部隊に戻れるだろう。しかし、どれほど時間がたってしまったんだろう。少なくとも丸一日は立っているはずだ。


 さて、上官にはどう報告しようものか・・・。




 そんなことを考えていた僕は、この村に電信が通っていないことをすっかり見落としてしまっていた。


 

 

 





 

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